謎パ~機の日本語化は、マシンのアーキテクチャと、採用している OS により、その方法が異なる。一般に、IBM PC 互換アーキテクチャを採用し、MS-DOS をベースとしたマシンは、DOS/C 化という方法で日本語を取り扱うことが可能となる。これに対して、独自アーキテクチャ、OS を採用している謎パ~機は、専用の日本語処理ソフトが必要となる。
これまで発売されてきた、IBM PC 互換機ベースの謎パ~機には、下記に示す ような仕様上の共通点がある。
ここでは、上記の仕様を有する謎パ~機で、日本語を表示するための手法を説明する。基本仕様が共通のため、各機種ごとのハードウェア的な「クセ」は、日本語化手法の軽微な調整で吸収することが可能である。対象となる謎パ~機の例を、以下に示す。
Poqet | Poqet PC |
SHARP | PC-3000 |
Hewlett Packard | 100LX、200LX、1000CX |
Instant Tech | PTV-30、PTP-20 |
Lexicomp | LC-8620 |
Tidalwave | ME-386、PS-1000、PS-3000 |
※HP95LX や Atari Portfolio は、IBM PC 互換アーキテクチャを採用しているが、液晶画面の解像度が CGA 仕様では無いため、日本語環境の構築には、専用のソフトウエアが必要である。
一般に、CGA 画面モードを持つ IBM PC 互換マシン上で、日本語を取り扱うことができるようにすることを、DOS/C 化と呼ぶ。1990 年、日本 IBM は、専用ハードウエアを必要とせずに、ソフトウエアのみで日本語表示を可能にする DOS システムである DOS/V を開発した。このシステムは、80286 以上の CPU を搭載し、VGA 以上のディスプレイカードを持ち、640 KB のコンベンショナルメモリと 256 KB 以上のエクステンドメモリを搭載した IBM PC 互換機を対象としていた。DOS/V の登場によって、海外で広く用いられている、英語仕様の IBM PC 互換機でも、日本語を扱うことが可能となった。DOS/V では、VGA 以上の画面が対象であったが、DOS/C は、同様な手法で CGA 画面でも日本語を扱えるようにしたものである。
DOS/C 化は、いくつかのフリーソフトウエアを用いることで、比較的簡単に実現できる。これらのソフトウェアは、8086 以上のCPU、バージョンが 3.x 以上の英語 DOS であれば動作するため、旧世代の CPU を使用した謎パ~機でも利用可能である。ここでは、一例として、謎パ~機の C ドライブ上に日本語環境を構築する場合について説明する。
謎パ~機の日本語化を行なうために、まず必要となるのが、文字フォントである。英語版の OS 上で日本語を表示するため、以下のいずれかのフォントファイルを入手する。
ここでは、株式会社オカヤシステムから発売されている、HP200LX 日本語化キットに同梱されているフォントを使用する場合について述べる。
HP 製パームトップパソコン、HP200LX は、携帯情報端末としては非常にメジ ャーな製品である。この製品は、本来英語版しか用意されていないのだが、株式会社オカヤシステムから、日本語化するためのソフトウエアを収納した、 「HP200LX 日本語化キット」が発売されており、これを使用すると、同製品を簡単に日本語化することが可能である。この日本語化キットには、8、11、16 ドットの日本語フォントファイルが入っており、これらも、「謎パ~機」の日本語フォントファイルとして使うことができる。以下に、同キットに入っているフォントファイル一覧を示す。これらののフォントファイルを、C ドライブ上の FONT ディレクトリに格納する。なお、これらのフォントの総容量は、 500KB 程度である。
LXHN16X.FNT | 16 Dot 半角フォント |
LXZN16X.FNT | 16 Dot 全角フォント |
LXHN11X.FNT | 11 Dot 半角フォント |
LXZN11X.FNT | 11 Dot 全角フォント |
LXHN08X.FNT | 8 Dot 半角フォント |
LXZN08X.FNT | 8 Dot 全角フォント |
日本語化を行なうための各種ドライバソフトを準備する。ドライバソフトとして必要なのは、フォントドライバ、CGA 用ディスプレイドライバ等である。
フォントマネージャは、フォントファイルをメモリ上にロードするためのドライバソフトである。今回はフリーのフォントマネージャである fontman.exe を使用する。fontman.exe は、fontx 対応フォント、恵梨沙フォント及び font.14 に対応した、IBM の $font.sys 準拠のフォントマネージャとして広く用いられている。
ディスプレイドライバは、フォントを画面上に表示するためのドライバソフトである。今回使用する yadc(Yet Another Disp/C)は、DOS/V と同様の手法で CGA グラフィック画面上に日本語フォントを表示する。
yadc では、下記の3つのビデオモードをサポートしている。
ビデオモード03h | CGAテキスト互換モード | (80x25) |
ビデオモード70h | V-TEXTモード | (80x可変) |
ビデオモード73h | 拡張CGAテキストモード | (80x25) |
ビデオモード 03h と 73h は、80 桁 x 25 行表示固定であるが、70h は、80 桁x可変行(1~25)で、使用フォントも変更可能となっている。
ANSI.SYS とは、ANSI(American National Standards Institute)が定めた標準エスケープシーケンスのサブセットをサポートするデバイスドライバのことである。ANSI.SYSを組み込むことにより,ディスプレイの画面消去,表示モードや属性の設定,キーボードの再定義などが行なえるようになる。通常、MS-DOS Ver 5.0 等に付属している ANSI.SYS を使用するが、これが入手できない場合には、フリーの ANSI.SYS 互換ドライバである PANSI.SYS を使用する。
DBCSDUMY.SYS は、、MS-DOS Ver 3.X のように DBCS に対応していない DOSを、DBCS に対応しているように見せかけるためのドライバソフトであり、MS-DOS Ver 4.X 以降でしか動作しない DOS/V 用ディスプレイドライバ及びその 互換ドライバを、MS-DOS Ver 3.X 上で動かす際に使用する。このドライバソフトは、使用するパームトップパソコンの DOSのバージョンが Ver 4.X 以降 であれば、特に必要はない。古いタイプのパームトップ機の中では、内蔵の ROM DOS に MS-DOS Ver 3.X を使用しているものがあり、そのような機種で日本語を表示させるために使用する。
必要なフォントとドライバソフトが揃ったところで、各日本語フォントの組み 込みを行なう。
(1)フォント変更用バッチファイルの作成オカヤシステムの日本語化キットに入っているフォントは、8、11 及び 16 ドットフォントの3種類である。これらのフォントを、V-TEXT 環境下で切り替 えて使用することができるようにフォント変更用のバッチファイル chev.bat を、下記のように作成する。
chev.bat@echo off if "%1"=="jp" goto jpn if "%1"=="JP" goto jpn if "%1"=="jc" goto cjpn if "%1"=="JC" goto cjpn if "%1"=="jl" goto ljpn if "%1"=="JL" goto ljpn if "%1"=="us" goto usa if "%1"=="US" goto usa goto man :man echo USAGE: CHEV JP --- switch to VTX Japanese mode(11dot) echo USAGE: CHEV JL --- switch to VTX Japanese mode(16dot) echo CHEV JC --- switch to CGA Japanese mode( 8dot) echo CHEV US --- switch to English mode(80x25) goto end :jpn yadc -jp -v70 -h11 goto end :cjpn yadc -jp -v73 goto end :ljpn yadc -jp -v70 -h16 goto end :usa yadc -jp -v73 yadc -us -v3 goto end :end(2) ファイルのコピー
フォントファイルとドライバファイル及びフォント変更用バッチファイルをパームトップパソコンにコピーする。オカヤシステム製フォントを使用する場合、ディレクトリ構造は以下の例のようになる。
DOSC ディレクトリに格納した FONTMAN.INI ファイルの編集を行ない、使用するフォントファイルを登録する。具体的には、エディタを使用して、下記のように設定する。今回は、8 ドット、11 ドット及び 16 ドットのオカヤシステム製フォントを登録する。オカヤシステム製フォントは、すべて fontx 形式の ものなので、fontx2 以外のセクションの記述は不要である。
FONTMAN.INI; ; fontx2 フォント定義 ; [fontx2] c:\font\lxhn16x.fnt c:\font\lxzn16x.fnt c:\font\lxhn11x.fnt c:\font\lxzn11x.fnt c:\font\lxhn08x.fnt c:\font\lxzn08x.fnt(4) システムファイルの修正
使用するパームトップパソコンの、起動ドライブのルートディレクトリに格納されているconfig.sys 及び autoexec.bat ファイルを編集する。具体的な内 容は、下記の通り。
config.sysdevice=c:\dosc\fontman.exe -d -fc:\dosc\fontman.ini device=g:\dosc\yadc.exe -b+ -bd -v70 -h11 device=c:\dosc\pansi.sysautoexec.bat
サーチパスの中に、c:\dosc が入っていることを確認する。入っていない場合には、PATH=C:\DOSC;%PATH% を追加する。
以上の設定が終わったらマシンを再起動する。すると、起動後に 11 ドットの日本語フォントを用いて、1画面 18 行の日本語表示が行われる。フォントの大きさを変更させるには、上述の chev.bat を使用すればよい。具体例を下記に示す。
chev jp | 11 dotフォント、80文字X18行表示 |
chev jc | 8 dotフォント、80文字X25行表示 |
chev jl | 16 dot フォント、80 文字X12行表示 |
chev us | 80 文字 X 25 文字の英語CGAモード |
Poqet PC や SHARP PC-3000 のように、内蔵の MS-DOS のバージョンが 3.3の製品については、DBCS に対応していない DOS を、対応しているかのように見せかけるためのドライバソフトである dbcsdumy.sys を組み込む必要がある。具体的には、config.sys 中で、fontman.exe の前に記述する。
config.sysdevice=a:\dosc\dbcsdumy.sys device=c:\dosc\fontman.exe -d -fc:\dosc\fontman.ini device=g:\dosc\yadc.exe -b+ -bd -v70 -h11 device=c:\dosc\pansi.sys