■東北秘湯旅行記第一日目 (1999/08/01)

●1999年08月01日(日曜日)
 今日から3日間、500には一切構わずO氏と秘湯巡りの旅に出ることになった。O氏はその昔、数ある秘湯の中でも極めて素晴らしい「小谷温泉山田旅館」を教えてくれた友人だ。今回のターゲットは、「滑川温泉福島屋」と「温湯(ぬるゆ)温泉佐藤旅館」である。どちらも大正、昭和の建造物だそうで、かなり期待できそうだ。

 前回の法師温泉の時には筆者のボロサニーを出したが、今回はO氏のいすずジェミニ・イルムーシャを出すことになった。午前8時に近所のタイヤ館でピックアップしてもらい、出発する。

 最初の目的地は、山形県にある滑川温泉福島屋である。谷原交差点から東京外環自動車道大泉ジャンクションに入り、川口ジャンクションから東北自動車道に入るルートを取る。日曜日の午前中ということもあり、道は比較的空いていた。東北道の走行はいたって退屈であったが、途中大谷S.A.でヴィンテージカーのミーティングを目撃する。そう言えば、なんかフェラーリが多く走っているなあと思っていたところであった。S.A.では、駐車場にランボのLP400やディアブロ、フェラーリ308Bなどが並んでおり、なかなか壮観だ。さらに東北道上からそれを見物するためか、見物渋滞まで発生するというオマケ付きであった。

 どこを通っていくかということで相談していたところ、突然喜多方ラーメンが食いたくなったため、郡山ジャンクションから磐越自動車道に入り、喜多方に向かう。会津若松インターチェンジを降り、米沢街道を喜多方に向かった。因みに川口→会津若松間の高速料金は、普通車で6,000円だった。

 盆地ということもあり、喜多方の街は36℃まで気温が上昇し、猛暑となった。とりあえず駅前駐車場に車を停めて、ラーメン屋探しに向かう。前回訪問した時に入った「坂内食堂」がなかなか良かったため、今回もそこを目指すことにした。ところが、駅前から坂内食堂へ向かう道のりが結構ある。炎天ということもあり、人通りも少なくひっそりと静まりかえっていた。途中、廃屋を発見するなど、ちょっとした市内見学も行った。

 坂内食堂についてみると、この猛暑の中であるにもかかわらず、すごい行列である。夏休みということもあるのだろうが、15名くらいの人が炎天の中、黙々と順番を待っている。こりゃいかんということで、別の店を探すことになった。しかし、どのラーメン屋もかなりの混み方だ。どうも、地元の「老麺会」に加盟している店は、客の入りが良いようである。喜多方で売り上げをアップさせるには、老麺会に入るしかなさそうだ。最終的に駅からかなり外れたところにある「朝昼夜」というお店に入る。ここは老麺会に入っているのであるが、比較的空いていた。

 久しぶりに喜多方のラーメンを食べた後、作り酒屋の醸造元を見学しつつ駅前駐車場に戻る。暑いラーメンを食べたせいか、外の暑さは耐えられないほどではなくなった。喜多方市内をゆっくりと見物するのもオツなものなのだが、この猛暑ではしょうがない。早々に退散である。





喜多方市内画像


 喜多方から滑川温泉へは、米沢経由で国道13号線を使用することになった。喜多方市から米沢市へは、国道121号旧道を使うことにしたが、道路情報を見ると「大峠通行止め」との表示が出ていたため、仕方なく新道を通ることにした。旧道マニアの我々にとって、整備された新道を通るということは屈辱にも値することである、と書くと若干誇張があるな。

 大峠街道新道を北上し、八谷街道を通り米沢市を通過する。米沢市からは国道13号線万世大路に入り、板谷大橋の手前を県道232号に折れた。この道は「板谷米沢停車線(米沢海道旧道)」と呼ばれている道で、車がギリギリすれ違うことが可能な舗装道路である。

 途中、JR奥羽本線板谷駅を見学する。ここは山形新幹線が通る路線である。板谷駅は、数軒の民家の中にひっそりと佇む典型的な地方の無人駅であった。

 JR板谷駅であるが、通常の駅と異なり、ちょっと変てこな構内である。ホームは県道の下にあるのだが、冬期の雪でも利用できるようにホーム全体がすっぽりと屋根で覆われている。さらに、引込線が伸びており、今はもう使われなくなってしまった廃ホームに続いている。このホームと、同じく今となっては使用されていない駅舎は、県道232号沿いにあるため、ちょっと目にはここが本来の駅舎であるように見えてしまう。ちなみにこの引込線と廃ホームの構造は、次に訪れた峠駅でも同様であったので、おそらくここら辺の駅には、同じような構造の駅が多いのであろう。

 山の中の無人駅ということもあり、ヒグラシや野鳥の声が良く聞こえる。とてものどかな駅であった。板谷駅の前にある雑貨店で、本日の宿で飲む日本酒を購入する。銘柄は忘れたが、生酒で1,400円。お店のおばちゃん曰く「とてもうまい」とのことであったが、実際はハズレに近かった。板谷駅から、次の目的地である峠駅に向かう。




JR板谷駅画像


 JR峠駅へは、県道232号からさらに無名の道路に入り、途中で駅前に分岐する坂道を降りる。道路はかろうじて舗装されているものの、待避所でしか行き違いのできない、山間部の狂隘路だ。この道は、途中萱峠という小さな峠を越える。整備状況はあまり良くなく、50m以上ある断崖絶壁沿いにもガードレールが無かったりと、夜は走りたくない道だ。

 峠駅は板谷駅をさらにローカルにしたようなところであった。駅前には商店が一軒と宿泊施設と思われる家が一軒あるだけで、あとは何も無い。駅舎の構造は前述したように板谷駅と酷似しており、ホーム全体はすっぽりと屋根に覆われている。引込線もあったが、レールは取り外されていた。峠駅は、現在の路線と並行して、現在はもう廃線になってしまった路線が残っていた。ホームも昔使用されていた残骸があったが、今となっては雑草が生い茂っている。

 峠駅も板谷駅同様、現在使われているホームと昔し使われていたホームの両方が残っているため、現在のホームへ行くには若干歩かなくてはならない。ホームに着くと、ちょうど上りの普通電車が入線するところであった。入線時刻になると、地元のお弁当屋や、これから宿泊する福島屋の送迎車がやってきた。お弁当屋は、非常に短い停車時間中に、必死になって弁当を売っていたが、不幸にして今回は一個も売れなかったようだった。

※峠駅については、本サイト「廃墟系」「奥羽本線峠駅旧駅舎跡 (1999年08月)」にも掲載してあります。



JR峠駅画像


 ヒグラシとセミの鳴き声の中、構内でしばらく休憩する。峠駅は鉄道マニアの間では結構有名なのか、今回もカメラを持った人が撮影に来ていた。廃線と廃ホームを撮影した後、本日の宿泊地である滑川温泉福島屋に向かう。福島屋へは峠駅から車で5分程度の距離にあった。

 福島屋は川沿いにある温泉旅館で、宿舎の前には滝が流れている。山間部にある旅館らしく、旅館の敷地内は高低差がかなり有る。旅館の前を流れている川は前川の上流にあたり、流れはかなり速い。旅館敷地内には、この前川にかかる吊り橋もある。この旅館であるが、今回建物が古いという理由で宿泊することにしたのだが、行ってみると、それほど古い建物は見当らない。出発前にWEB上で見た写真には、この吊り橋の正面にかなり古い建物が写っていたのであるが、今回はキレイさっぱりなくなっていた。旅館の仲居さんに聞いてみたところ、つい最近取り壊してしまったとのこと。実にもったいない。

 さっそく温泉に浸かることにする。浴室は内湯と露天があり、内湯はそれほど広くは無い。泉質は白濁硫黄泉で非常に熱い。快適なのであるが、すこし熱すぎる。のぼせないよう、そこそこの時間で上がる。夕食は部屋で取る。夜は星を見た。標高850mの山の中であるため、空気も澄んでおり星がきれいだ。しかし、谷あいの宿であるため、見える部分が限られるというデメリットもある。人工衛星の軌跡や流れ星などもみることができた。天の川はぼんやりとだけしか確認できず。標高が高いこともあり、夜はちょっと冷え込む。以下に旅館と温泉の情報を記載しておく。

・旅館名:国立公園吾妻山登山口 滑川温泉 福島屋
・住所 :山形県米沢市峠 TEL:0238-34-2250
・客室数:25室60名収容
・風呂 :内湯(女・男女混浴)露天風呂
・効能 :リウマチ、神経痛、胃腸病、創傷など
・由来 :寛保2年(約500年前)大沢の郷氏斎藤盛房がこの付近の川を渡る際、岩石を滑り倒れ、その時手に暖かい石を感じ温泉の湧出を発見した。そこから滑川と称されるようになり、宝暦13年(約220年前)、上杉藩主の許可を得た当館笹木正直が開湯した。





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