リストマーク 九段下ビル【最終撮影】(2011年11月)

解体が始まった九段下ビル

 九段下ビルについては、本コーナー「九段下ビル(2002年12月)」で取り上げた。今から9年も前のことだ。当時から、解体が始まるのは時間の問題だと思っていた。しかし、このビルは長く持ちこたえた。今年3月の大震災にも耐え抜いた。築90年以上という建物とは思えないほどの頑丈さを示していた。しかし、それもついに終わりを迎えるようだ。

 聞くところによれば、これだけ長寿命だったのは、テナントが建て替えに断固反対してきたからだと言う。歴史的な建築物であるからして、きちんと保存しようという動きもあったそうだ。しかし、昨今強烈な地上げに遭い、ついに解体を余儀なくされることになったとのことだ。

 今回取材を行った時、上記の事情は一切知らなかった。たまたま、本当に偶然、九段下に用事があって出かけたところ、九段下ビルの俎橋側の解体作業が開始されているのが見えたのだ。いよいよ解体が始まったかと近づいて見ると、デザイナーが九段下ビル3階で個展を開催しているのに遭遇する。既に閉鎖されていたものとばかり思っていたところだったので、意外だった。ポスターには「九段下ビルに入る最後のチャンスです」と記載されていたため、迷わず見学してくる。

 個展は建物東側端の3階で行われていた。4部屋程度の個室と裏側にベランダがある区画だ。電気は既に止められているのか、階段室は薄暗かった。3階裏にあるベランダに出ることができたが、手すりが無く若干怖かった。しかし、貴重な眺めを堪能することができた。12月には完全に閉鎖し、本格的な取り壊し作業が開始されるとのことなので、今回が本当の最後のチャンスとなる。また一つ、貴重な建築物が都内から消える。

1階の料理店跡

ビル全体にはネットが張られていた

今回個展が開催されていた区画の入り口。建物の東側端に当たる。

九段下ビル東側建物入口付近

1階入口を入ったところ。天井は低くとても狭い。電気が通っていないため、建物に入ると薄暗い。

階段踊り場を望む。自然採光のおかげで、足下は明るい。

踊り場の採光窓。

ビル2階の入口。左右奥と、3方向にドアが配置されている。

ビル3階から屋上へ通じる階段。屋上は立ち入り禁止になっており、廃材が堆積していた。

屋上へ通じる階段から、ビル3階フロアを俯瞰したところ。右側の廊下を入ったところで、個展が開催されていた。ビルの端にあたるので、左側は壁面となっている。

剥がれ落ちた壁面の塗装。

3階から屋上へと通じる階段にかかる梁

天井部分の剥がれ落ちた塗装

個展会場へ通じる廊下。中廊下構成になっており、両側に2部屋ずつ、突き当たりに一部屋といった構成。廊下の幅はかなり狭いが、ドアの上には採光用の窓もあり、閉塞感はそれほどでは無い。

九段下ビル3階正面の部屋。実際に使用されていた部屋に入るのは、これが始めてだった。壁面に大きく設けられた窓が開放的。この角部屋は、古いながらも居心地が良い空間だ。内装を整えて事務所として貸し出せば、かなりの需要があるだろうに・・・

窓のアップ。一応窓枠はサッシに替えてあった。個展の内容はシュールレアリスム風の絵画で、なかなか味わいがある。

部屋の中に無造作に配置されているガス管。

窓枠のアップ。壁面はかなり痛んでいる。

エアコンと言うよりクーラーといった方が良いような室内機が、まだそのまま残っていた。機種はシャープの「TIROL 20」というもので、「New Z WIDW SWING」の文字がある。昭和40年代の製品であろう。

建物裏側のベランダに出たところ。半端じゃない開放感がある。写真を見ても判るように、3階部分は2階部分よりも若干狭く、2階部分の天井が一部ベランダとして使用されていたようだ。屋根が崩れ落ちているところは、あるいは後で増築された部分かもしれない。

3階部分の壁面。長年の風雪に耐えてはきたものの、やはり築90年の痕跡はすごい。


3階ベランダの床面。コンクリートの老朽化が激しい。なお、このベランダには手すりが無かった。既に撤去されたのであろう。

窓枠を外側から見る。この窓は、サッシに交換されていなかった。

中廊下上部にあったブレーカー。碍子タイプのレトロなものだ。

室内壁面も痛みが目立つ。

2階にあった非常用通報ボタンとランプ。

1階入口横にある郵便受け。まだ沢山の郵便物が配達されていた。

建物内部から1階入口を撮影。

今回内部を見学した部分を、建物外側から撮影。最上階(3階)部分の角部屋で、個展が開催されていた。

建物東端の部分。一段平らになっている部分が、ベランダになっている。2階のフロア面積の方が広いのが判る。

建物入口の庇部分に設けられている照明用電球。カバーは無くなり、鉄筋が剥き出しになっている。

「九段下ビル」の看板。周囲を小さなタイルで囲んで装飾を施している所など、なかなか芸が細かい。

最後の一枚。俎橋越しに九段下アパートを望む。左側の白い覆いは、解体を開始している部分。




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