■闘病日記 其の十七 【手術翌日】 (2013/11/22) 手術翌日の朝10時に、担当医の回診があった。この時になって、ようやくハナの穴から挿入されている胃管を抜いてくれた。担当医はインターンを数名引きつれて来ており、胃管の抜き方を実演で教えていた。まあ、こんなワタシでも、少しは人様のお役に立てたというワケである。胃管を抜く際は、多少の、というかかなりの不快感がある。しかし、一旦取り外してしまうと、ものすごく楽になった。 因みに、取り出してみて判るけど、胃管って長くてびっくりするよ! ついでに、心電図用のピックアップやバイタル測定機のセンサー類、酸素マスクも次々と取り外される。手術後一晩経過して、特に問題は無かったので、集中治療室から一般の病棟へと、ストレッチャーで移動した。 私が入院した病院では、手術後の回復を促進させるために、術後なるべく早目に歩いて運動をするよう、患者に指導している。ひと昔前までは、手術後ベッドで安静というのが常識だったが、最近の臨床結果では、体を動かすことにより、体液が滞留しなくなるので、感染症の発生を防ぎ回復が早くなるということだ。 そのようなワケで、午後には早くもナースの補助付きで、ベッドから体を起こす練習が開始された。手術を行う前に、全身麻酔手術を行った患者の方から、術後どうなるのかを聞いたことがある。たった数時間の手術の後でも、足が萎えてしまい、自力で立ちあがるのが困難になると言うのだ。で、実際にどうなったかと言うと、その通りになる。ベッドで体を縦にするのさえ、やっとの状態なのだ。 まさか、これほど衰弱するとは、思ってもいなかった。 但し、病院側としては、想定の範囲内なのである。体を起こす訓練は午後いっぱい続けられ、ようやく両足で立ち、病棟の端まで往復することができた。まさに、鬼のようなリハビリである。 痛みはと言えば、寝ても起きても痛い。そりゃ当然だわな。まだ手術後24時間しか経過していない。患部の痛みもさることながら、腰痛がひどくて参った。これは、私特有の症状だったようだ。全身麻酔を行うと、その人の体の弱い部分に痛みが出ることがままある。私の場合、腰痛持ちだったので、それが出現したみたいなのだ。まあ、色々と難儀ではあるが、ここは耐えるしか無い。結局、この腰痛は手術後2日間続いた。 暫くの間、ベッドで寝たきりの状態が続くので、病院からは「下肢運動の勧め」というパンフレットが配られていた。深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PTE)を予防するための処方なのだが、要するにエコノミークラス症候群の防止である。幸い、今までの人生において、常にエコノミークラスしか搭乗したことが無い筆者にとっては、耐性ができているのか、下肢運動を行わなくても特段変な症状は出なかった。仕事柄、長時間同じ姿勢を取っていたのもあり、体が慣れているのかもしれないね。。。 そうこうするうちに、手術後2日目の夜が来た。この夜は、結構エキサイティングになった。先ず、痛くて眠れない。まあ、これは想定内だ。予想外だったのは、他の患者の常軌を逸した行動やバイタル測定機から出る警報音であった。 私の病棟は外科であるハズなのだが、ベッドの都合が付かなかったのか、なぜか認知症と見受けられるの老人が一名、フロアに入っていたのである。これがまた、タイヘンな方なのだ。夜を撤してスリッパをズーコ、ズーコ摺りながらフロア中を徘徊する。なおかつ、汚物室に置いてある尿瓶をポコポコ叩くわ、トイレで騒ぐは、壁を叩くわ、給湯室の調理器具を使って「演奏」を始めるわで、大騒ぎだ。その都度ナースに連れ戻されるのだが、一向に言うことを聞かない。これを一晩中繰り返しているのだ。どこにあんな体力があるのだろうか??? これだけでも充分眠れないのに加え、他の患者も負けてはいない。夜中の3時に、いきなりナースを捕まえて、大声で自分の趣味を滔々と語りだすヒトもいれば、愚痴を延々と語るヒトもいる。さらに、患者に付けられている輸液ポンプの終了音やエラー音が、あちこちで大音量で中鳴りひびく。この警報音は、人命に関わるものなので、音量を調整することはできない作りになっており、なおさらタチが悪い。闘病日記 其の三 【大部屋】 (2013/11/09)の回で、検査入院した時の大部屋はマトモだったと書いたが、ここはまるでジャングルだったのだ・・・ そのようなワケで、手術後の2日間で、眠った時間は1時間程度という、惨たんたる結果となった。 余談だが、濱田マリがメインボーカルを努めていたバンド「モダンチョキチョキズ」の変態アルバムである「ボンゲンガンバンガラビンゲンの伝説」の中に、「ジャングル」という約32秒の、実にシュールで下らない歌詞の短い曲がある。今夜の情況を端的に現していると思った。。。 (つづく)
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手術後の深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PTE)を予防するために配られた、「下肢運動の勧め」なるパンフレット →拡大 |
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