現代のクルマでは絶滅してしまった「三角窓」。これって意外と効果があるんだよねぇ。。。


■アナログ (2010/05/02)

 ガシガシのプログラマーがシトロエンの2CVを持ってたり、スパコンで流体解析の仕事をしているヒトがFIAT 500に乗っていたりと、世の中なかなかユニークだ。筆者もメインの仕事はIT系で、コンピュータとも1980年代にZ80で自作して以来の付き合いである。しかし、腕時計は手巻きしか使わないし、置き時計も柱時計もゼンマイ式を愛用している。カメラはバルナック・ライカのコピー品であるロシアカメラ(ゾルキー)が好きだし、今でもメーカーでフル・メンテナンスしたLPレコードプレーヤー、テクニクスの名機「SL-1600 mk2」を持っている。そして愛車はといえば、アナログの固まり、メカの極みのFIAT 500だ。

 思うに、こういうデジタルなお仕事をしていると、論理的にキッチリと割り切れたり制御する物に嫌気が差し、曖昧な物、不定形な物、感覚的な物にあこがれたり拘ってくるのではないだろうか?なんかこう、ちょっと手を入れると、それなりに調子が良くなったり悪くなったりする「アナログ的」な物への回帰現象が起こっているんだよな。趣味嗜好までデジタルでいたくない自分というものが、そこにある。

 で、今回は自動車界でのアナログの極めつけとも言えるFIAT 500の、「アナログ」な魅力を掲載してみる。とはいってもFIAT 500はアナログ満載のメカクルマなので、全部挙げていたらきりがない。で、筆者が特に「アナログだのぅ〜!」と思う部分を掲載した。コンピュータはおろか、トランジスタすら搭載していない、純粋メカニカルなクルマには、かように表現しがたい魅力がある。

三角窓を開けたところ。この状態で走行すると、真夏でも涼しい風が入ってきて気持ち良い。但し走行中に限る!アタリマエだが・・・

FIAT 500は、冷房系は絶望だが暖房系は結構充実している。この写真の真ん中、リア・シートの中央下の部分にある「コック」は、エンジンの排熱を利用した暖気をダクトに入れる制御弁。この状態は「閉」で、排熱はすべてリアのエンジンルームから外へ排出される。

上の写真のコックを「開」にしたところ。こうすれば、エンジンの排熱がダクトを通して室内に供給され、暖房の代わりとなる。もちろん、コックを「半開」等にすることで、強弱を「アナログ的」に調節することが可能だ。

ダクトを介して室内に導きられた暖気は、運転席と助手席の下にある排出口から出てくる。この写真は、運転席側の暖気口を全開にしたところ。右側に調節ダイアルがあり、これを回すことで開閉量を「アナログ的」に調節できる。

運転席側の暖気口を完全に閉じたところ。この状態では、排気熱はフロントウインドウへ導かれ、デフロスターとして働くという素晴らしい仕様になっている!ちなみに、アタリマエのことだが、メインの排熱コックが閉じていれば、暖気は全く入ってこない。

当然だが、暖気口はダイヤルによって中途半端に開閉することができる。前記コックと同様、無限の組合せで暖房調節できるというスグレモノなのである。因みに排熱ダクトは車内中央を通っているので、暖房を入れると、サイドブレーキ、チョークレバー、スターターレバーが「ホンノリと」暖かくなる。真冬のドライブで信号待ちをする際、かじかんだ手をサイドブレーキで暖める、というのは、FIAT 500乗りにとって常識だ。

え〜と、これは正式な名称が判らないので説明が難しいのでつが・・・フロント中央の物入れの下に付いているレバーである。これはエンジンのスロットルにつながっていて、引っぱるとアクセルを踏まなくてもエンジンの回転数を上げることができる。何のために必要なのかと言うと、寒い時期、コールドスタート後にチョークレバーを戻すとエンストしてしまうような状況で使用する。運転席に座っていれば、アクセルペダルで回転が落ち着くまでスロットルを調整するのだが、どうしても席を離れなくてはならない場合、このレバーを引いておくと、自動的にエンジンの回転数を高く設定できる。なんかこう書くと、高速道路でのオートクルーズにも使えそうな感じであるが、「アブナイので絶対にオートクルーズとして使用しないこと!!!」。なお、筆者はFIAT 500購入当時、このレバーの意味が判らず、流しの整備屋で悪友でもあるRandy氏に教えを乞うたものだった。。。

今回の原稿を書いていて、思わず思い浮かべたのがこのAA(アスキー・アート)。そう、「こまけぇこたぁいいんだよ!」。今の時代、細かすぎませんか?揚げ足取ったり重箱の隅つついたりして楽しいでつか?もっとアンニュイでスローに暮らせないものなのでつか?きっとみんなそう思っているんだろうね。でもそれができないのが現代なんだと思う。

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