NaSSA(ミルタザピン)の構造式 |
■NaSSA (2009/09/07) 筆者は4年前より、自らの精神状態を健全に保ち、かつ快適な睡眠が得られるようにするため、定期的にかかりつけの心療内科に通院している身である。4年も通っていると、ほとんどのメジャーな抗精神剤は試してしまったのであるが、副作用が有ったり全然効かなかったりと、それはもう苦渋に満ちたものであった。筆者なりに安定した薬事処方が確立したのは、せいぜいここ半年くらいのことである。 さて、先日日経新聞を読んでいたら、新しい抗鬱剤として、NaSSA(ミルタザピン)なるものが治験(臨床試験)を終え、リリースされることになったという記事が目に止まった。たまたま今日が定期診察日であったため、心療内科医に聞いてみたところ、ナント!今日がその解禁日だと言うではないか!素晴らしい偶然である!!! ヽ(´ー`)ノ このNaSSAは、日本では明治製菓が「リフレックス錠」、日本オルガノンが「レメロン錠」の商品名で販売する。実はこのクスリ、既に1994年にオランダで開発されており、歴史は古い。日本の薬事法では治験が非常に厳しく、漸くリリースに至ったようである。 じゃあ一体、NaSSAとは何だよ?と言われれば、「Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant : ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤)の略称だそうで、舌を噛みそうな名称だ。今までのSNRIやSSRIと比べ、「副作用が少ない(ほとんど無い)」、「直ぐに、効く・効かないが判る」といったメリットがあると言う。鬱はモノアミン仮説によると、セレトニン、ノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質の不足から生じるものとされているが、このNaSSAは、モノアミンのセンサ(α2受容体とα2ヘテロ受容体)をごまかして、セレトニンやノルアドレナリンが不足していると錯覚させることにより、備蓄されているセレトニン・ノルアドレナリンを放出させ、鬱状態を回復させる、というものらしい。さらに、14種類あると言われているセレトニンの再取込受容体のうち、鬱病に関係している5-HT1以外のものを可能な限りふさぎ、セレトニンが5-HT1と結びつきやすくなるような環境を構築させるというスグレモノだそうだ。気になる副作用は、現状主立ったものは「無い」と言われているが、実際には体重の増加が観測されているようである。また、日本での発売はこれが初めてなので、日本人特有の体質より、新たな副作用が出てくる、という心配は拭いきれない。 現時点で、各心療内科では、この新薬をどのように見ているかと言うと、ほとんどの所が、半年程度様子見の状態だそうだ。その後、今までの抗鬱剤が効かなかった人に対して、処方を慎重に行ってゆくとの見解である。今日解禁とのことで、筆者かかりつけの心療内科にも、さっそく製薬会社の方が売り込み兼内容説明に来ているとのことであった。 筆者は4年間も心療内科医の先生と、この手のクスリの話しをしているので、すっかり門前の小僧状態になってしまった。現状処方されている製品も、ほとんど試してみたが、やはり副作用と効果に疑問がある製品も多い。要は人それぞれ効き方が異なる、ということなのだが、それにしても一番タイヘンだったのは、効くか効かないかを判断するのに、最低二週間程度は飲み続けなくてはならないことだった。これは良く考えてみると大変不思議である。そもそもセレトニンやノルアドレナリンの再取込を阻害し、放出を促すクスリを飲んでいるのだから、翌日とまでは行かないまでも、1週間以内には効くかどうか判りそうなものだ。 また、抗鬱剤の効き方であるが、統計的に20〜30%と思ったより低い。そもそも鬱病がなぜ起こるのか、その原因も明らかになっていない。現在処方されているクスリも、たまたま偶然に発見されたようなもので、セレトニンやノルアドレナリンといったモノアミンを増やすことで鬱症状が改善される、という観測事実に基づいており、そういう意味では対症療法でしか無いと言える。既出「天才と分裂病の進化論」のように、主たる原因は遺伝子の突然変異と、必須脂肪酸の不足から起こっているのかもしれない。
にしても、まあユーザの立場から見れば、選択肢が多くなったというのは良いことではある。隠れクスリマニアの筆者としては、今回リリースされた新薬に、今後どのような評価が下されるのかを注視して行きたい。なお、筆者の体に最も合った薬は、現状ではファイザーが販売している「塩酸セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)」である。これはなかなかマイルドで副作用も出ず、一日一回の経口摂取で手間もかからなくて良い。因みに「抗不安剤」としては、アルプラゾラム(商品名ソラナックス)がイチオシだ。まあ、あくまで筆者の場合だけどね・・・ |
塩酸セルトラリンの構造式 |
アルプラゾラムの構造式 |
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