筆者宅の倉庫である「王家の谷」より発掘されてきた往年のIDE HDDドライブ。どれも1992年〜1994年製造の、540MB以下の超低容量ハードディスクである。Enhanced IDEでは無い。下は120MBから上は540MBまで、幅広い守備範囲。今となっては入手困難な珍品群である。
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■退廃的互換機趣味(其之五) (2008/10/05)
 【たかがIDE、されどIDEの巻】

 おかげさまでこの企画も、はや五回目を迎えることとなった。この間、「誰がこんな内容読むんだよ?」だとか「読んでも判る奴いるのかよ?」とか、様々な励ましのお言葉を頂いたのは、筆者としては大変うれしい限りである。そう、これはシュヴァルツシルド・カフェなのだ。自己満足というブラックホールの、事象の地平線の内側だということを忘れてもらっては困る。走り出したら止まらない。行き着くところまでとことん逝くつもりで、今後もよろしくお付き合い願いたい。

 さて、今回はIDE HDDのオハナシである。IDEとは「Integrated Drive Electronics」の略称であり、その略称からは内容が全く汲み取れない、というお話しは有名である。IDE HDDとは何かということを、ものすごくかいつまんで言うと、「HDコントローラをHDD側に取り込んでしまうことで、それ以前の規格であったST-506型インターフェースより、転送速度の向上とコストダウンを図った規格」となる。こう言っても、やっぱりワケワカラン人は、こちらをご覧くだたい。

 今回、筆者の倉庫「王家の谷」から、約5台余りのIDE HDDをサルベージしてきた。どれも15年前以上のシロモノである。倉庫のような高温多湿の状況に長期間晒されてきたこれらディスクドライブが復活できるか否か、また再利用することが可能かどうかの検証を行ってみよう。

実験用として使用することにした、2台のHDD。右側がWestern Digital社製の540MBのただのIDE。左側がQuantum社製の1.2GBのEIDE、即ちEnhanced IDEである。なぜこの2台を選定したかの理由は以下に述べる。
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Western Digital社製IDE、Caviar 2540のマスター/スレーブ切り替えジャンパのアップ。この設定では、ジャンパピンは入っているものの、どこも短絡していない状態になっている。これでこのドライブはマスターとして認識される。この頃になると、HDDの表面に、マスタ/スレーブのジャンパ設定方法が図解で印刷されているため、設定時に迷わなくて済む。
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Quantum社製HDD、Fireball 1280ATのマスタ/スレーブ切り替えジャンパ。このHDDはEIDE仕様になっている。容量は1.2GBと、本企画からすると驚くほど「大きい」。現状の位置(SP)に設定されていればスレーブ、真ん中(DS)に設定されていればマスターとなる。
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 実験用に使用したのは、ただのIDE仕様のHDD、Western Digital社Caviar 2540(容量540MB)と、EIDE(Enhanced IDE)仕様のQuantum社製Fireball 1280AT(容量1.2GB)の2台である。なぜ仕様が異なる2台を選定したのかを以下に述べる。本テストマシンは、まだマザーボードにI/Oが搭載されていなかった時代のものなので、VLバスのマルチI/Oカードを使用したことは以前に述べた。ところで、この頃のIDEは、ただのIDEって言うと変だけど、要するに以降のEIDEと異なりATAPI仕様になっていない。そのため、CD-ROMといった光学記憶装置を接続することができない。そのためにSound BlasterのCD-ROM I/Fがあるのだが、あいにくと手元に専用のCD-ROMドライブが無い。従って、Windows95といったCD-ROMベースのOSをインストールする場合には、OSをHDDにコピーして行うしか方法が無かったのである。

 そのため、「借り腹方式」を採用した。CD-ROMの搭載されている現代のマシンにUSB/IDE変換器、通称「直刺しIDE」を接続し、IDEをUSBの記憶デバイスとして認識させ、CD-ROMの内容をごっそりコピーする。それをテストマシンに接続してインストールすれば良いというワケだ。ところがここに落とし穴があった。

 「直刺しIDE」は、EIDE(Enhanced IDE)仕様のHDDしか認識しないのである。よって、Western Digital社Caviar 2540に直接CD-ROMの内容をコピーすることができない。従って、仲介役となるべきEIDE仕様のQuantum社製Fireball 1280ATを用意し、一旦それを介してOSをコピーした後、今回のテストマシンのセカンダリードライブとして接続し、プライマリーに設定したCaviar 2540にインストールを実行すれば良いのである。何を言っているのか判らない人は、読み飛ばしてください。全く実用的な知識では無いでつから。。。

EIDE HDDをUSBの外部記憶装置として認識させる、ある意味最終兵器、「直刺しIDE」!これについては、過去にも新春秋葉ジャンク屋巡り (2006/01/06)で取り上げたことがある。致命的なのは、「ただの」IDEは認識してくれないこと。これにより、多大な手間暇がかかることになってしまったのである。
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「直刺しIDE」のコネクタ部分のアップ。片側が3.5インチ用で、反対側が2.5インチ用と、一つで二種類のHDDを接続することが可能。これをUSBを介してマシンに接続すると、大容量外部記憶装置として認識される。但し、EIDE仕様であることが必須。
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 ここまで準備ができたら、もうオツケイ・・・というのは早とちりである。テストマシンのBIOSは、ものすごく古い時代のものなので、504MB以上の容量を持つIDE HDD全領域の読み書きができない!これは通称「504MBの壁」といわれ、1993年頃までに発売されたPCではこの問題がある。知っているヒトなら知っているが、知らないヒトには判らない。。。因みにその後EDIE仕様になった時に、この壁は崩されたが、今度は「8GBの壁」というものが出現した。まるで、続々と未来から送られてきて、現世の人に大変な迷惑をかけるターミネーターのようだ。その後も「127GiBの壁」というものが邪魔したが、現在ではATAインターフェイスとしては128ペビバイトの管理が可能となっているので、特に心配することは無い。

 で、504MBまでしか認識できないただのIDE用BIOSで、どうやって1.2GBのEIDEを認識させるのか?と言えば、極めて簡単で、「騙す」のである。マザーボードのBIOSのオートディテクト機能を使用すると、くだんのQuantum社製Fireball 1280ATは、1.2GBと正常に認識される。ここで、FDISKをかける際、わざと504MB以下の領域しか確保しなければ良いのだ。そうすれば、HDDの残りの部分は捨てることになるけれども、ちゃんとテストマシン上でも正常に読み書きすることができる。なお、この方法は極めてイレギュラーなので、領域確保の容量によって、エラーが発生する。今回の経験的知識から言うと、250MB程度の領域で止めて置いた方が安定している。以上、無駄な知識ですた・・・

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余談。今回倉庫より発掘された、未使用・未開封のHDD 2台。Quantum社製ELS-42AT(容量42MB)とELS-85AT(容量85MB)。容量40MBというのは、半端じゃなく小さい。しかもこの2台はパッケージが開封されておらず、言うなればエジプトミイラのようなものなのだ!
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ELS-42ATのアップ。パッケージの中には乾燥剤が入っているが、果たしてまだ効能があるのやら?表面の印刷から、1992年12月に製造されたことが判明した。2008年現在、実に16年前のシロモノである。
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発掘された未使用・未開封の2台のHDDには、取り説のコピーも残っていた。同2台は、Quantum社のProDriveシリーズであったようだ。
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 今回の話しとは若干ズレるが、倉庫より新品・未開封・未使用の2台のHDDが発掘されてきた。Quantum社製ProDriveシリーズで、1992年12月に製造されたものである。型番ELS-42ATは容量42MB、ELS-85ATは85MBという、それはもう信じられないくらいの低容量である。未開封ということで、うかつに開けて使うこともできない。このまま永久に保存される運命のようだ。ライカマニアで、やはり未開封品を後生大事に保存しているハイパークラスのマニアがいるそうだが、これはその貧民バージョンとでも言おうか?

 一応、お約束みたいな乾燥剤がパッケージの中に入っているのが確認できるが、今でも効力を持っているのかは甚だ疑問である。それ以前に、スピンドルが固着して、電源を入れてもディスクが回転しない可能性もある。にしても、こんなモン、いつどこで入手したのだろうか?当事者である筆者にもサッパリ判らない。謎だ・・・

ST-504型I/Fカード、WESTERN DIGITAL社製WD1002V-MM1 Winchester Disk Controller。1989年18週の製造である。当時、秋葉原のT-ZONEにて、25,000円というベラボウな価格で販売されていたのだが、その後IDE I/Fに移行したのに伴い、投げ売り状態になった。筆者はこのコントローラカードを、確か300円で購入した覚えがある。
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WESTERN DIGITAL社製WD1002V-MM1 Winchester Disk Controllerの裏面。上部に「プエルトリコ製」を示すシールが貼ってある。なかなか香ばしいカードと言える。。。
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 ST-506型I/Fの話しが出てきたので一言。このタイプのHDDは、元祖IBM PC/AT等初期のPCに使用されていた。IDEが40ピンのケーブルで接続されるのと異なり、ST-506型I/Fは34Pinの制御線と20Pinのデータ線の2つを用いる。特に変態的なところは、データ線が20本あるにも関わらず、実際に使用されているのは書き込み1本、読み取り1本の合計2本のみであったというところだろう・・・詳細はここを参考にして頂きたいが、「FDD以下の原始的な方法」とバッサリ言い切っている。

 筆者も昔はST-506型I/Fを使用していた。さすがにシーゲートが1980年にパーソナルコンピュータ用として開発したST-506 HDD(容量5MB)は所有していないが、ST-412(容量10MB)で遊んだことは有る。5インチ・フルハイトという漬け物石のようなHDDは、今も「王家の谷」に保存されているハズなので、次回あたり発掘に出向こうと考えているところだ。ST-506型I/Fのコントローラ基板が、なぜか手元にある。昔、T-ZONEのジャンク売り場で、300円で購入してきたものだが、プエルトリコ製の基板は眺めても美しい。

 元々、初代ATのHDコントローラカードは、WD1003カードが原点になっている。このWD-1003カードとST-506型HDDとの組み合わせにより、転送速度200KB/s、容量5MBという環境を実現していたものだ。このWD1003カード上には、WD11C00CというPLCCのLSIが搭載されているが、初期の5インチIDE HDDのコントロール基板上には、同チップがそのまま搭載されていた。1985年〜1987年頃のおハナシである・・・

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