謎のHDD!古い。とにかく古い!1991年の製造だと思われる。コナー社製CP-3204F。容量は204MB。GBでは無い、念のため。。。2008年現在、17年前のシロモノ。一応3.5インチであるが、妙に分厚い。
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■退廃的互換機趣味(其之四) (2008/09/30)
 【謎のHDDの巻(閑話休題)】

 ここいら辺でちょいとインターミッションにしよう。当コラム2008年9月15日号【謎のマザーボード発掘の巻】末尾に記載したが、ALI社製チップセットを用いたVLバス3本の80486DX-2(66MHz)マザーボードに付いていた「謎のハードディスク(HDD)」についてである。何でもかんでも「謎」って付けりゃいいモンでも無いけれど、実際謎なのだからしょうがない。

 このHDDを語るには、まず上記マザーボードを搭載していた互換機の履歴を述べなくてはならない。そもそも件の互換機はもらい物である。元々は、某有名大学病院の外科部長先生を務めるO氏が、廃棄物として路上に放置してある互換機を、もったいないからという理由で持って帰ったことから物語は始まる。2002年頃のハナシだ。しかし、外科部長先生ほどの要職にあれば、このような廃棄互換機を拾って持ち帰るなどというようなことをせずとも、十分過ぎる年収を確保しているハズだと思うのだが、そこはやはり廃人の道というもの、悲しい性とでも言えるであろう。

 さて、廃棄互換機を持ち帰ってはみたものの、多忙を極める外科部長先生には、結局いじくり回している暇なぞ無いし、なによりもこの互換機、筐体は黄色く変色してかなり汚い。そこでO外科部長先生は、筆者の悪友であり流しの整備士でもあるRandy氏に、この互換機を押しつけたのであった。Randy氏もその外観のあまりの汚さにいささか持て余し、かといって捨てる工数をかけるのも時間の無駄ということで、死蔵と相成った。

 ところで当時、筆者は絶滅状態にあるATフォームファクターのマザーボードの保存に努めていた。予備の筐体も倉庫に保存しておいたのであるが、念のためあと1台くらい、ATフォームファクタ用の筐体が欲しい。そのことをRandy氏に言ったところ、「丁度良いのがありまっせ、ダンナ!」という展開になってしまったのである。

 もとよりこの互換機の外観を知る術も無い筆者は、これは好都合とばかりにRandy氏宅に赴いて、それを頂くことにした。いや実物を見て驚いたの何の!これは引く。確かに汚い。筆者が脳内で想定していたモノと大分違う、というか全然違う。その場で引き取りを断る旨を申し出たが、「引き取るという約束は約束!」とのことで、結局押しつけられてしまったのである。

 さて困った。弱った。どうやらこのマシン、昔のショップブランド物らしく、筐体前面パネルには、筆者もDOS/V黎明期に良く通ったショップの名前が書かれている。とりあえず廃棄予定ということにして、倉庫にぶち込んでおいたのだった・・・あれから早6年の歳月が流れ、久しぶりに倉庫の大整理を行っていたところ、ゾンビのごとく出てきたのが、この互換機なのである。

 今度こそ確実に廃棄すべく、マシン本体を分解し分別ゴミとして出すことにした。いかに古物商でジャンク屋魂溢れる筆者とて、さすがにこれだけハードなジャンク品は願い下げだ。しか〜し!分解のため筐体を開けて驚いた!2008年の現在では、絶滅したVLバス3本搭載のマザーに、何か知らんが分厚いハードディスクが搭載されていたのだ!筆者はこの時、このHDDの復活を思いついた。筐体は汚いから廃棄し、中身をそっくり摘出したのである。

 ヽ(´ー`)ノ

元々廃棄互換機内部には、この2台のHDDが入っていた。どうやら、この互換機のユーザは、最初は右側の分厚いコナーのHDDを使用していたが、総容量204MBでは如何ともしがたく、後日Western Digital社製の270MBのHDDを増設したものと思われる。その際、当初マスタ設定で使用していたコナー社製HDDをスレーブに変更し、Western Digital社製270MBをマスタ設定にして、OSの起動高速化を図ったものと思われる。
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比較のために、一般的な3.5インチHDDと並べて置いてみた。このように、2台分弱の厚さがある。幅は足りないものの、高さは5インチベイにピッタリなのだ。
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謎のHDDの銘板。コナー社製のCP-3204F。メーカー名も型番も割れているので、「謎」でも何でもないんだが、このHDDの中には、実は廃棄したユーザのデータが残っていたりするんだよ、キミ!!!
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CP-3204Fの制御基板。もう、スゴイの一言。ジャンパ線は有るわ手付け修正の部品は有るわで、ほとんどワヤクチャ状態である。驚くべきはその部品の多さであろう。あまりLSI化されていないため、ご覧のような部品てんこ盛り状態の基板になっている。デバイスの製造捺印より、1991年初頭の製品と思われる。
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 HDDそのものの素性は銘板を見れば明らかなので直ぐ割れた。問題はマシンに接続して認識できるか否かである。そのためには、HDD自体の設定、即ちプライマリーなのかセカンダリーなのか、を調査する必要がある。HDDのドライブパラメータは、BIOSのオートディテクと機能で取得可能であるが、制御基板のジャンパ設定についてはそう簡単に行かない。そこで登場するのが、筆者秘蔵の秘密兵器、「Micro House社のThe Encyclopedia Of Hard Drives」全3巻本である!

 この本はその昔、1994年頃にJDRというアメリカの通販会社より入手したものだ。DOS/V黎明期は、まだBIOSにHDDパラメータの自動取得という機能が搭載されていなかったので、ジャンクHDDを購入してくると、セクタ数、ヘッド数、シリンダ数といった各種パラメータの値が判らず苦労したものだ。その上、マスタ/スレーブの切り替えジャンパの位置や設定も判らない。このような問題をイッキに解決していたのが、この巨大なデータベースなのである。

 件のHDDもちゃんと掲載されていた。マスタ/スレーブの切り替えジャンパ位置も一目瞭然である。どうやらこのHDD、スレーブとして用いられてきたみたいだ。きっとデータの保存用だったのだろうと見当を付けていたが、大当たり。実際、マスタドライブにはWestern Digital社製の270MBにWindows 95を入れて使っており、スレーブ設定のこのHDDにはドキュメントが残されていたのだ。

 結論から言おう。何も面白いものは残っていなかった。廃棄前は、都内の某超有名大学の学生さんが使用していたようで、計算ソフト「マスマティカ」がインストールされているところを見ると、どうやら理科系の方のようである。コナー社製のHDDには、宿題と思しきレポートの原稿が入っていた。拝見してみると、流体力学についての方程式が書かれている。こりゃ、いかん。筆者はこの方面には滅法疎い。何がなんだか全然判らない。呪文のようなレポートなのである。

 この物語の教訓は2つ。其の一は、昔のHDDは滅多やたらと壊れるものでは無いので、古いからといって無闇に捨ててしまうのはモッタイナイ!ということ。其の二は、個人情報やデータは簡単に漏れる、ということである。廃棄する際には、必ずHDD消去ツールを使いましょう!因みに筆者は、このHDDをフォーマットさせて頂きますた。前の使用者に悪いからねぇ。。。

これが、レトロHDD復活のための新兵器?「Micro House社のThe Encyclopedia Of Hard Drives」全3巻本であ〜る!「わしが男塾塾長、江田島平八である!」の一喝で、全てを解決に導いてしまうような、絶大な威力を持つスーパー・データーベースなのだ。持ったヒトなら判るが、すんげえ重い!
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「Micro House社のThe Encyclopedia Of Hard Drives」全3巻の構成。
(1)SETUP-GUIDE
(2)DRIVE SETTINGS
(3)CONTROLLER CARDS
の3部構成になっている。
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HDDのパラメータ、マスタ/スレーブのジャンパ設定等は、この第二巻「DRIVE SETTINGS」を使用する。
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コナー社製CP3204Fもしっかりと掲載されている。これでジャンパの設定が判った。
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「The Encyclopedia Of Hard Drives」の第二巻「DRIVE SETTINGSのページを参照に割り出した、マスタ/スレーブ切り替えジャンパの位置。赤丸で囲んだジャンパが、それに相当する。この状態では、ジャンパピンが2つともオープンなので、スレーブ設定になっていることが判る。しかし、画面上部に見える手付けのコンデンサの生々しいことといったら・・・
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(余談)
筆者は以前から、以下のような小説の構想を持っている。
主人公は、秋葉原でジャンクを漁るのが趣味の廃人。とあるジャンク屋で購入してきたハードディスクを使おうと思い通電してみると、通常であれば完全に消去されている内容が、ショップ側の何らかのミスで消し忘れていた。興味本位で内容を見ていると、いくつかの物語の原稿がテキストファイルで残っていることが判明する。この各物語を1つの章として構成し、なおかつ以前の使用者が残していたメールのフォルダの内容から、かつてのオーナーの人間関係を探っているうちに、いつしか自身がそのハードディスクの所有者であったような錯覚に陥って行く、、、という性格崩壊モノだ。もっと文才があれば、死ぬまでに世に問いたい作品である。。。

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