1.「謎パ~機」の登場

 PC WAVE誌の読者ならば、「謎パ~」という言葉が、「謎のパームト ップ機」を意味しているということは、先刻ご承知のことと思う。この「謎パ ~」なる言葉、いつ頃から使われ始めてきたかと言えば、やはり1994年 12月号のPC WAVE誌の特集記事、「謎のパームトップ機日本語化計画 」に行き着くであろう。もっとも、廃人連中は、この特集以前にも「謎パ~」 なる言葉を使用していた可能性があるが、一般の人の目に触れるようになった のは、やはりこの特集記事からだ。編集部では当初、この特集のタイトルを「ポケットPC/PDAの日本語化計画」と予定しており、謎のパームトップ機という言葉は入っていなかった。このタイトルがそのまま使われていたら、謎パ~という言葉は生まれなかったかもしれない。

PC WAVE 2004.12

 この「謎のパームトップ機日本語化計画」なる特集であるが、数ある同誌の 特集記事の中でも傑作の部類に属していた。当時日本では、パームトップ機と 言えばHP社の100LXが主流であり、既に多くのパワーユーザーの手によ り、日本語化が完成されていた。一方、HP100LXのひとつ上の大きさの マシンはといえば、IBMのThinkPAD 220が小型サブノートパ ソコンの代表的存在であった。ところで、携帯型パソコンを持ち歩いて使うこ とを考えると、ThinkPAD 220では、やはり大きすぎる。かとい って、HP100LXでは、キーボードが小さくタッチタイピングが困難だ。 こういった状況から、両マシンの中間に位置する大きさのマシンの登場が期待 されていた。

 ところで、香港製や台湾製などのパームトップ機には、その要求を満たすも のがいくつか見受けられた。おりしもHP100LXの日本語化で刺激された パワーユーザーも出現し、こういったパームトップ機の日本語化が話題に登る ようになったというわけである。特集「謎のパームトップ機日本語化計画」は そのような状況の中、タイムリーに企画されたものであった。この特集記事に は、PTV-30、PS-1000、ME-386、Moving Pocket、Psion3a、CARD WIZZ等の謎パ~機が掲載され、今まで 目に触れる機会が少なかったマシンの紹介と日本語化についての解説が行われ た。

 それでは、こういったパームトップ機が、なぜわざわざ「謎の」と言われる のであろうか?その答えは簡単で、このようなマシンには、色々と「謎」の部 分が多いからである。「謎パ~機」の場合、香港や台湾など、いわゆるIBM PC互換機メーカーが多数存在する国で製造されたものが多い。こうした製品 は、日本ではほとんど知られていない、馴染みの薄いメーカーが製造・販売し ていた。このような東南アジア製パームトップ・パソコンは、同一の製品であ るにもかかわらず、ロットによって仕様や動作が微妙に異なったり、同じスペ ックの製品が、色々なメーカーから別々の名前で発売されていたり、同一のマ ザーボードを使用しているのにもかかわらず、PCMCIAカードスロットな どの周辺機器構成の違いで、全く別の製品として販売されたり、同一の筐体を 使用しているにも関わらずマザーボードが異なる製品があったりと、わけがわ からない「謎」の部分が多数見受けられた。

 また、SHARP等の有名メーカ ーが製造したパームトップ・パソコンであっても、英語版しか発売されなかっ たため、日本国内ではほとんど見ることができなかった製品もある。こうした 製品も、一般の人にとっては「謎」であり、そういった意味では、「謎パ~機 」の範疇に入れることができるであろう。 以下に、謎パ~機の分類、各機種共通の日本語化手法の概要及び謎パ~機の 種類、各機種のスペックについて、簡単にまとめてみる。


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