PC CHIPS M592 (1998)

写真1:PC CHIPS M592 MB 表面


■台湾のマザーボードメーカー、PC CHIPS社のSocket7マザー
 ボード、M592。ベビーATサイズのボードで寸法は22×22cm。 
 1998年前半の製造。ビデオチップとVRAMをオンボードで搭載し、な
 おかつEDOのメインメモリまでも実装した、オールインワンボードのハシ
 リとも言うべき製品である。                     
■チップセットにVX Pro−IIを搭載。同チップはUtronというベ
 ンダーが供給したもので、2チップ構成。チップの型番は下記の通り。  
 ・HT82C371USB−II                   
 ・HT82C437VX−II                    
■intel Pentiumの他に、Cyrix/IBM、AMD、IDT
 の各CPUが使用できた。CPUクロックのサポート範囲は75〜233 
 MHz。外部バススピードは50/55/60/66/75MHz。   
■ISAバスを2本、PCIバスを2本搭載。72Pin SIMMスロット
 を2本、168Pin DIMMスロットを1本搭載していた。また、オン
 ボードで16MBのEDO−RAMも実装しており、メモリの最大搭載容量
 は144MBとなっていた。                     
■オンボードで512KBのレベル2PBSRAMキャッシュメモリを搭載。
 キャッシュメモリチップにはUMC社製のUM61C3264AF−6を2
 個使用している。                          
■オンボードでビデオ機能を内蔵。ビデオチップにはSIS社のグラフィック
 スチップ、SIS6215(1998年17週製造)を搭載していた。この
 ビデオチップは64ビットの2Dグラフィックアクセラレータを内蔵したチ
 ップである。VRAMもオンボードで実装しており、標準で1MB、オプシ
 ョンで2MBまで拡張することができた。掲載したボードは、2MB版。 
■オンボードI/Oは、IDE2系統とFDD、シリアル×2、パラレル×1
 及びサウンド機能。I/O制御チップには、UMC社製UM8670F(1
 998年11週製造)を搭載。サウンドチップは3D Sound Pro
 PCI版を搭載しており、HRTFポジショナルオーディオやSPDIF入
 出力を備えていた。                         
■BIOSはAMIBIOSを搭載。                  
■以下にボードのスペックを示す。                   
項 目
内 容
CPU
intel Pentium P54C/P55C(MMX)、AMD K5/K6
IDT C6、Cyrix/IBM 6x86/6x86L/6x86MX/MII
CPU Clock 75 〜 300 MHz
BUS Clock 50/55/60/66/75 MHz
Cache Memory 512KB PBSRAM L2 Cache 搭載
Chip Set
・Utron VX Pro-II Chipset
 HT82C371USB-II / HT82C437VX-II
Momory
168 Pin DIMM スロット×1
72 Pin SIMM スロット×2
オンボード搭載EDO-DRAM 16MB
以上合計最高 144 MB まで搭載可能
Bus PCI×2本、ISA×2本搭載
Super I/O
COM1、COM2、LPT1、FDD、Primary-IDE、Secondary-IDE
3D Sound、2D-64bit VGA
BIOS AMI BIOS

写真2:Utron VX Pro-II Chipset のアップ

写真3:62-bit 2D VGA チップ SIS 6215 のアップ

写真4:オンボード EDO-DRAM メモリチップのアップ

写真5:オンボード VRAM モジュール

写真6:オンボード VRAM チップのアップ

写真7:サウンドチップと SPDIF 入出力端子

写真7:M592 カタログ

■コメント                              
 PC CHIPS社のマザーボードの中でも、ユニークな構成を採用してい
た製品が、このM592でした。このボードには、VGA機能とサウンド機能
がオンボードで搭載されています。今でこそ、サウンドやグラフィックスがオ
ンボード搭載されていても珍しくは無いのですが、当時としては、画期的な仕
様と言えました。オンボード搭載されたVGAチップは、SISの6215と
いう2Dアクセラレータ機能を有する64bitチップです。大抵の製品は、
VRAMはメインメモリとシェアして使う、シェアードメモリ方式でしたが、
本製品は豪勢にも1MB(オプションで2BM)のVRAMをオンボードで搭
載していたのです。VRAMは1MB分が基板上に搭載されており、オプショ
ンの1MBはソケットにチップをはめ込む形で供給していました。     

 また、メインメモリもオンボードで搭載されていた点もユニークです。容量
はたかだか16MBと少ないものでしたが、メモリスロットにSIMMやDI
MMを1本も挿さなくても起動でき、DOSであれば使うことが可能でした。
このボードが発売された1998年当時は、まだメモリの価格も高価であり、
たとえ16MBといえどもオンボードで実装していることは驚きでした。  

 SIMMスロットとDIMMスロットの両方が使用できたことも、時代を感
じさせます。ちょうどメモリの規格が移行していた時期の製品らしいと言える
と思います。カタログを見てもわかるように、M592は低価格PC用として
販売されていました。拡張カードを用いなくても、PCを実現することができ
るコストパフォーマンスに優れた製品だったのです。同社のオールインワン志
向は、この後の製品でさらに充実したものとなって行きます。       

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