リストマーク 猫鼻温泉跡(1998年10月)

写真0:猫鼻温泉入り口

 猫鼻温泉は長野県と新潟県の県境近く、長野県北安曇郡小谷村大字北小谷にあった、マニア御用達の小さな温泉である。近くには葛葉峠、国界橋があり、1995年の集中豪雨の際には大きな被害が出た地域であった。この猫鼻温泉も、1995年7月の水害で流出、以後再建されぬまま廃墟となっていた。

 温泉は姫川の岸辺に位置し、営業時には男湯150名、女湯50名の非常に大きな露天風呂を持っていたそうである。泉質は炭酸水素泉・中性低脹性高温泉で、慢性消化器病・糖尿病等に効果があったそうだ。なお、旅館の機能は有しておらず、外湯利用のみであったとのことである。

Google Maps上での位置は、下記の通り。
千国街道からの分岐点
千国街道からの分岐点(Street View)
猫鼻温泉跡

 ここに掲載した写真は、1998年10月に温泉マニアのO氏と小谷温泉山田旅館を訪問した際に撮影した。猫鼻温泉はO氏のお気に入りの場所で、スキーの帰りなどに良く利用したそうである。取材時には、その荒れ果てた姿に、しばし呆然としていたのが印象的であった。



写真1:猫鼻温泉施設外観


写真2:露天風呂の跡

 猫鼻温泉の施設外観は、プレハブの脱衣所件休息所があるだけで、非常に質素である。一見、どこかの工事現場の飯場といっても通用するような様相だ。1998年当時、建物の左側地面は、土砂崩れで完全に流出しており、極めて危険な状態にあった。建物右側の狭い通路を進み、奥に位置する露天風呂跡へと進んだ。

 猫鼻温泉には内湯と露天風呂の2つがあったそうである。露天風呂の方はかなりの広さがあり、まるでプールのようであったそうだ。風呂が広すぎたためか、寒い季節には露天風呂の温度が冷めてしまうこともあったそうだ。


写真3:倒壊寸前の施設


写真4:基礎が流れ落ちてしまった露天風呂

 露天風呂跡から建物跡を見ると、基礎が完全に流されてしまっており、谷に向って半分オーバーハングしている。倒壊寸前の極めて危険な状態で、このままでの復興は不可能であろう。水害からすでに3年以上経過していたのにもかかわらず、まだ解体等の作業は始まっていないようであった。露天風呂の基礎も半分がなくなっていた。

写真5:姫川対岸の土砂崩れの跡


写真6:廃車に貼られていた猫鼻温泉のステッカー

 取材時は丁度秋の長雨の合間であったこともあり、姫川の水位は高く濁流が勢い良く流れていた。梅雨の集中豪雨の際は、さぞかしすさまじい水量だったと予想される。姫川の対岸は、当時の水害時にできたと思われる大きな土砂崩れの跡が見受けられた。温泉の前の広場には、盛業当時使用していたと思われる軽トラックが打ち捨てられていた。そのリアウインドウには、猫鼻温泉のステッカーが貼られていた。なぜこの温泉が猫鼻と呼ばれていたのかは不明。しかし、面白い名前ではあった。

 1998年当時、まだ災害復興作業が行われている最中であり、そこかしこの川岸では、コンクリートブロックを配置する工事が行われていた。この温泉跡には、翌年(1999年)にも訪れたのだが、温泉に通じる道路そのものが通行止めとなっており、その後どうなったのかは確認できなかった。国道の整備工事で、川岸に近い旧国道は順次封鎖され、使えなくなってきている。おそらく現在は、猫鼻温泉跡も、完全に解体されてしまったものと思われる。





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