この建物も2005年度中に取り壊されることが決定している。小金井市立上水公園管理棟は、かつての陸軍多摩第一技術研究所として使用されていたものである。「知られざる軍都多摩・武蔵野」(洋泉社MOOK)によれば、多摩地区には陸軍技術研究所が6カ所存在した。この管理棟は、そのうちの第一技術研究所として使用されていたもので、1942年(昭和17年)頃に竣工されたものだそうだ。第一技術研究所では、銃器や火砲の研究が行われていた。現在は公園の設備を保管する倉庫として利用されているこの管理棟だが、戦時中の技術研究所でどのように利用されていたのかは、今となっては定かでは無い。
上水公園は、中央線武蔵小金井駅北口から、小金井街道を20分ほど歩いたところに位置する。近傍には小金井養護学校や小金井第二小学校などがある。
Google Maps上での位置は、下記の通り。
小金井市立上水公園管理棟
取り壊しが決まっている建物ということもあり、早めに取材を行っておくことにした。2005年6月、梅雨の晴れ間で30℃近くまで気温が上がった真夏日に、上水公園を訪問する。管理人さんに撮影の許可をお願いし、快諾を得る。先の洋泉社Mookの影響か、最近は訪れて写真を撮影する人が増えたそうだ。管理人さんが言うには、まだはっきりと決まってはいないようだが、2005年10月には取り壊されるのではとのことだった。小金井市のWEBで建築計画を調査すると、工事件名「上水公園管理棟建替工事」。工期は平成17年9月〜平成18年3月となっている。既存建物は解体され、軽量鉄骨造2階建の350平米の建築物に生まれ変わるそうだ。
管理棟は一昔前の木造校舎の小学校を思わせる懐かしい作りになっている。正面玄関を入ると、右手に小窓の受付があり、管理人室に通じている。入って正面には、立派な木造の階段がある。踊り場で左右に分かれる特徴的な造りだ。建物内部も軍事施設というよりは学校を彷彿とさせる。床も天井も木造で、長年の使用に耐え良い色を出している。なお、ここに掲載した写真は、Kodak DC-4800にワイドコンバージョンレンズを搭載し、16.7mmの超広角で撮影したものだ。室内空間が狭いため、超広角レンズを使用しないと収まりきれない。そのため若干画像に歪みが出ているものもあるが、ご了承頂きたい。
取材当日は、管理棟の前にあるグラウンドで地元の野球チームが練習試合を行っていた。グラウンド整備に使用するさまざまな器具を出し入れするため、管理棟にはひっきりなしに人が出入りし、すっかり地元住民の生活にとけ込んだ施設となっている。これがかつての軍事施設であることを示す表示は、どこにも無い。建物外観は窓ガラスが破損したところもありかなり痛んでいるが、戦争遺跡として整備・保存して欲しいものだ。。。
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