ロシア製カメラ「ザリア」の外観。

■コラム・ロシア製カメラのおはなし&ザリアでの試写 (1999/05/05)

●ロシア製カメラについて 1999年05月03日(月曜日)

 本項とは直接関係ないけど、ロシア製カメラについて。

 最近妙なことにロシア製カメラについて非常に興味を持ち始めた。それも、最近の製品では無く、1960〜1970年代に製造されたクラシックモデルである。ロシア製と聞くと、大抵の人が「まともに写るの?」と質問してくるが、まあ当然とも言えよう。なんつったって「ロシア」だもんな。。。そこで今回は、ロシア製カメラ「ザリヤ」とそれを使って撮影した500の写真について、取り上げる。

 ロシア製のクラシックカメラというと、いかにもマニアックな感じがするのであるが、世のカメラマニアの間では結構盛んみたいで、都内には専門店も多く存在する。渋谷には東急百貨店の近傍に「KING-2」というショップがあるし、荻窪には「カメラのプリズム」というショップがある。ロシアカメラには、ライカスクリューマウントを採用している機種もあり、ライカのレンズが流用できる。しかも本体価格がライカの1/10、いや、1/100以下と非常にコストパフォーマンスが高いことが、密かなブームの原因であるようだ。

 そもそもこういったフルマニュアルのカメラに興味を覚えたのは、500と同様その構造が極めて単純だからである。筆者が所有しているカメラ「ザリヤ」には、フラッシュ、露出計はおろか連動距離計も付いていない。まさにカメラの原点とも言える製品なのである。そういった意味では、500と一脈通じるものがあるように思える。

 さて、この「ザリヤ」であるが、外観は下記の写真に示す通りである。最も、下記写真はターレットファインダーを搭載しており、実際のザリヤにはこんなハデなファインダーは搭載されていない。


ロシア製カメラ「ザリア」の軍艦部。

 このザリヤであるが、旧ソ連のカメラメーカー「FED(フェド)」社が1959−1961年の間に発売した庶民向けの製品である。総生産台数は14万台程度であったと言われている。庶民向け製品ということもあり、このザリヤには余計な機能は一切付いていない。連動距離計すらも搭載されていないのである。レンズのマウント形式は、ライカのスクリューマウントを採用しているため、ライカ用のレンズをそのまま流用できるという利点もあった。シャッタースピードはB、30、60、125、250、500が用意されている。筆者の所有するザリヤのシリアル番号は0043377であった。

 ここに掲載した写真には、同じくロシア製であるORION 28mm F6レンズを付けている。ちなみに、このレンズのシリアル番号は730432で、1973年製のものであることがわかる。ザリヤには標準で KMZ社製 50mmレンズが付くのであるが、筆者は広角好みであるため 28mmを付けている。ザリヤ本体のファインダーは50mm固定であるため、28mmを使用する際にはファインダーも 28mm用のものを付ける必要がある。筆者の場合、同じくロシアKMZ社製のターレットファインダーを取り付けてある。

 このファインダーは、あたかもリボルバー拳銃のように回転させることによって、28、50、135、85、35mmのファインダーとして使うことができるというスグレモノだ。外観も奇抜で、まるでカメラのファインダーとは思えない。このターレットファインダーは、渋谷の「KING-2」で17,000円で購入したのであるが、視野が非常に明るく使い良い。ちなみにシリアル番号は292972であった。


KMZ社製ターレットファインダーのアップ。

 さて、ザリヤを使っての写真撮影であるが、当然のことながら露出測定から入らなくてはならない。筆者は露出計としてSEKONIC社のAUTO LUMI MODEL L-158を使用している。露出計を単体で購入することは、プロ以外まず無いと思われるが、このセコニック社のオートルミはローエンド製品であり、価格も実売で7,800円程度とお手頃である。ただし置いてあるショップが限られているのが難点だ。筆者はヨドバシカメラ新宿西口店で購入した。

 実際に撮影してみると、非常に良く写るのでびっくりする。ロシア製とはいえ、ばかに出来ないものがある。ただし、露出、シャッタースピード、距離等を全てマニュアルで調整しなくてはならないため、慣れるまでは失敗することも多いのであるが。

 ザリヤで撮影した写真には、アンダーパーフォレーションという特徴的な現象が出ることがある。これは、撮影した画像がフィルム下のパーフォレーション用の穴にかかってしまい、焼き付けると写真の下に黒い四角が出てしまうというものだ。フィルム装填の際、位置が若干ズレてしまうのが原因で、ロシア製カメラの特徴と言うことができる。

 撮影上の注意としては、フィルムを巻き上げる時に露光しないよう、レンズキャップを閉めてから巻き上げること、レンズ交換をした後は、念のため一枚空送りすること、フィルム巻き取り時に引っかかりを感じたら、無理して巻き取らないこと等があげられる。

 このザリヤを使用して500の写真を撮影してみた。本来ならば景色の良いところで撮影会を行いたかったのであるが、時間が全く無かったので自宅のカーポートで撮影する。撮影には28mmの他に20mmレンズも使用してみた。

※備考
 以下に掲載した写真は、紙焼きを300dpiでスキャンしたもの。

【2014年の追記】
ついに、禁断のロシアカメラの話しが出てくる。このザリヤをスタートとし、筆者はロシアカメラのズブズブの泥沼に入り込んで行くことになるのだが、この時はまだ、そんなことは予想もしていない。「おそロシア」とはこのことだ。当時は、まだ田中長徳氏の「ロシアカメラがむせぶ夜は」が発売される前のことで、世間一般ではロシアカメラは市民権どころか、その存在すらも知られていない頃だった。(因みに、1999年10月に、いわゆるこのチョートク本が発売されると、ロシアカメラは一気に好き者たちの趣味に昇格する)。ロシアカメラについては、本サイト「禁断のロシアカメラのページ!」にまとめてある。


ザリヤで撮影した500 #1(20mm)
・撮影日  :1999年05月07日(金曜日)
・撮影場所 :自宅カーポート
・使用カメラ:FED ZARYA
・コメント :
ロシア製カメラ「ザリヤ」で撮影した500 #1(20mm)
自宅の狭いカーポートでも、20mmレンズを装着するとこの通り難なく全景を写すことができる。若干魚眼っぽく見えるところが良い。フィルムはラボでおまけにもらったFUJIーFILM 100 SUPERを使用。
拡大(紙焼き+300dpiスキャン)

ザリヤで撮影した500 #1(20mm)
・撮影日  :1999年05月07日(金曜日)
・撮影場所 :自宅カーポート
・使用カメラ:FED ZARYA
・コメント :
拡大(紙焼き+300dpiスキャン)

ザリヤで撮影した500 #2(28mm)
・撮影日  :1999年05月07日(金曜日)
・撮影場所 :自宅カーポート
・使用カメラ:FED ZARYA
・コメント :
ロシア製カメラ「ザリヤ」で撮影した500 #2(28mm)
28mmレンズを使用して、ぐっと近寄った所から撮影した500のかわいいお尻。筆者なぞは、このお尻に惚れて500を購入したようなものである。使用したスキャナが古いため、写りは悪いが、紙焼きでは恐ろしくピンが来ている。これを見るととてもロシア製カメラ(それも30年近く前の製品)とは思えない。
拡大(紙焼き+300dpiスキャン)

ザリヤで撮影した500 #3(28mm)
・撮影日  :1999年05月07日(金曜日)
・撮影場所 :自宅カーポート
・使用カメラ:FED ZARYA
・コメント :
ザリヤで撮影した500の室内(28mm)
ロシア製カメラ「ザリヤ」で撮影した500の室内(28mm)
28mmレンズを使用して撮影した、500の室内。この写真は500の後席から、前席の間越しに撮影したもの。室内は暗いため、光量を確保するためオープントップは開けて撮影した。28mmだと、狭い500の室内でもダッシュパネル全体を写すことができる。
拡大(紙焼き+300dpiスキャン)

ザリヤで撮影した500 #4(20mm)
・撮影日  :1999年05月07日(金曜日)
・撮影場所 :自宅カーポート
・使用カメラ:FED ZARYA
・コメント :
ザリヤで撮影した500の室内(20mm)
ロシア製カメラ「ザリヤ」で撮影した500の室内(20mm)
20mmのレンズで撮影した500室内。28mm と比較すると、その視野の広さは一目瞭然である。撮影場所は20mmと同じ。なんと左右ドアの取っ手まで入ってしまう。天井もオープントップが開いているところまで写っている。小さな車の室内を撮影するにはもってこいのレンズだ。
拡大(紙焼き+300dpiスキャン)

ザリヤで撮影した500 #5(20mm)
・撮影日  :1999年05月07日(金曜日)
・撮影場所 :自宅カーポート
・使用カメラ:FED ZARYA
・コメント :
ロシア製カメラ「ザリヤ」で撮影した500の室内(20mm)
20mmレンズを使用して、助手席ドアの外から500室内を撮影したもの。被写界深度が深いため、手前に写っている助手席ドアの内装にもピントがあっている。20mmで撮影すると、狭い500の室内も、普通の車並の広さに見えてくる。
拡大(紙焼き+300dpiスキャン)



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