波多 利朗の Funky Goods連載再開の第9回目である。Psion Series 5上で動作する「Sinclair SPECTRUM Emulator」を取り上げた。英国製パソコンであるSinclair SPECTRUMは、1982年に発売され欧州で一世を風靡したホビー向けマシンである。専用ソフトウェアも数多く開発され、IBM PC/AT互換機を始め様々なマシンでそれらを動作させるためのエミュレータソフトが存在している。
本稿で紹介するPsion Series 5用Sinclair SPECTRUM Emulatorもその一つで、開発元は、IBM PC用の「DOOM」のPsion Series 5版である「ENCORE」を制作したグループである。エミュレータ自体のインストールは極めて簡単だが、Web上で公開されているSinclair用ゲームソフトを動作させるには、ゲームごとに異なるキーアサインの調査など試行錯誤が必要であった。
なお、このエミュレータは、本誌3月号で紹介したPsion Series 5互換機のGeofox Oneでも一応動作したが、執筆時点のバージョン(Ver.0.50)では画面の下部が正常に表示されなかった。
(補記)
本稿の前フリは、以前にも増して盛り沢山な内容で、「秋葉原で見つけた珍奇グッス」と題して、真空管式並三ラジオ組み立てキット、オドナー式手回し計算機、41号試験用送受器の三点を紹介している。本文とは何の関係もないこんな内容の前フリの掲載を許してくれた編集部のおおらかさと言うかいい加減さに改めて感謝するばかりだ。まさに「ライター放し飼いモード」だったのである。
ところで本号の特集は、「DOS/Vかく戦えり─日本のパソコン10年史」であった。当時、Windows95の登場から2年半が経過し、Windows搭載のPC/AT互換機が、長らく日本のパソコン市場を支配してきたNEC製の「国民機 PC-9801」を圧倒していた。他方、こうした急速な変化の中で、DOS/Vの誕生と、その果たした役割についての物語は、早くも人々の記憶から薄れつつあった。本特集は、DOS/V前史から説き起こして、ハードウェアとソフトウェアの両面から、その変遷を振り返る極めてタイムリーな内容となっており、数ある本誌の特集の中でも特筆すべきものであった。