2004年春号:AgendAとマイクロライター・
キーボードのお話し



 前号まで5回にわたって「濃い系 Psion の世界」を掲載してきたが、これだけ連続すると書いている本人も食傷気味となる。回数を重ねるごとにマニアックかつカルトでニッチな端末や周辺機器が次々と登場して、読者諸氏も少々辟易されたのではあるまいか。

 という訳で、今回は、趣向を変えてユニークな入力機構を備えたPDAであるAgendAを取り上げることにした。1989年登場のイギリス製PDAである。この製品の最大の特徴は、通常のキーボードに加えて、「Microwriter Keyboard」と呼ばれる入力機構を備えていることだ。右手の指に対応した5つのパッドから成るこの機構は、アルファベットに対応したキーコンビネーションによる片手入力を可能とするもので、そのルーツは、1980年に登場した「The Microwriter」というインプットデバイスに遡る。

 The Microwriterについては、記事本編に詳しいが、執筆当時には筆者はこのデバイスを所有しておらず、イギリスの某サイトの記事を参照した。掲載した写真も、このサイトの管理者の許諾を得て利用させていただいたものだ。その後、eBayに出品されていた個体を入手してブログで紹介したが、この異形のデバイスにぞっこん惚れ込んでしまった筆者は、その後さらにデッドストック状態の2台を購入するという深みにハマってしまった。

 さて、今回の前フリだが、記事本編が入力デバイスに深く関係した内容となっていることから、筆者が所有している各種の変わり種キーボードについて取り上げることにした。中でもダントツの変態キーボードが、DATAHAND SYSTEM社のDatahand Keyboardである。このまるで医療機器のような外見の製品については、かつてPC-WAVE誌連載用の原稿を作成したのだが、同誌が突然の廃刊となり、掲載されなかった。没原稿をもとにした紹介記事を本サイトに載せているので、お暇な方はご覧になっていただきたい。






AgendA
一見普通のPDAのように見えるが、キーボードを取り巻くように配置された5つのキーパッドが特徴的。

AgendAとその付属品
パラレル接続ケーブル(左上)、ACアダプタ(右上)、32KB拡張メモリカード(左下)、本体。

The Microwriter#1
AgendAの祖先とも言える「The Microwriter」。片手だけでテキストを入力するためのインプットデバイスとして開発された。筆者所有のセットには、本体、専用ケース、取説、接続ケーブルが含まれている。

The Microwriter#2
筐体はグラマラスな形状をしており、右手を乗せると指先が5個のパッドの位置に来るようにデザインされている。この製品の詳細については、本サイトのブログで紹介している。

AgendAのMicrowriter Keyboard
Microwriterのキーパッドは、通常のキーを取り囲むように配置されている。

AgendAのファンクションキー
内蔵されている機能は、キーボード左側に設けられたファンクションキーにより一発で呼び出すことも可能である。

AgendAの液晶画面
起動時に表示されるスタートメニューの画面。

AgendA側面のI/Oコネクタ
右側面には、12接点の特殊仕様コネクタが設けられている(通常はスライド式カバーで覆われている)。その横には、ACアダプタ接続端子、チャージ確認LED、電源スイッチが並ぶ。

パラレルI/Fケーブル
AgendAとプリンタとを接続するためのパラレルI/Fケーブル。AgendA側は特殊仕様コネクタとなっている。

本体背面の拡張スロット
写真はスロットカバーを外したところ。手前側がA、奥がBスロットとなっている。拡張スロットの接点は8個。

32KB拡張SRAMカード
AgendA専用のカードで、他機種との互換性は無い。

32KB拡張SRAMカードの内部構造
SRAMのチップと制御回路、およびデータ保持用のボタン電池が格納されている。

アルファベットの入力例
Microwriter Keyboardでは、入力するアルファベットの形状から押すキーがある程度判るようにキーのコンビネーションが割り当てられている。

アルファベットの入力方法
黒塗りの四角が押すキーを示している。

大文字入力モードのカーソル形状
画面は新規ファイル作成中の状態。通常は小文字入力モードであるが、大文字に切り替えるとカーソル上に白い線が現れる。なお、この画面は連続して大文字入力をするモードであるため、太い白線が表示されている。

THE CYKEYの紹介ページ
現代版Microwriter KeyboardであるCYKEYのHP。これがあれば、現代のPDAでChord Keyboardによる文字入力を実現できる。

DATALUXのDesk Keyboard
筆者が常用しているDATALUXのDesk Keyboard。省スペースでキーストロークも深く、高速タイピングが可能。

Desk Keyboard側面
奥に向かって迫り上がっている側面が特徴的。キーボードにちょうど良い傾斜が付いており打ち易い。

KinesisのERGONOMIC Keyboard
エルゴノミック・キーボードの最高峰。造りの良さは抜群で、ディスプレイしたくなるような形状は、まるで美術品のようだ。

ERGONOMIC Keyboardのキー部分
左右の窪みの中に湾曲して配置されるキートップ。見るからに異様な外観だ。

MALTRON Keyboard
Kinesisよりも異様に見えるのが、このMALTRON Keyboard。驚くほど軽く作られているが、Kinesisのような重厚な高級感は感じられない。

MALTRON Keyboardのキー部分
湾曲しまくったキー配置である。キートップには2つの文字が併記されており、一方はQWERTY、もう一方は独自のMALTRON配列のものである。両者は切り替えて使用することが可能となっている。

Datahand Keyboard
変態キーボードの極北、DATAHAND SYSTEMのDatahand Keyboard。形状、操作方法等、総てに渡って空前絶後の製品だ。指先のわずかな動きだけで、文字入力が可能。軽く10万円を超える製品なので、一度購入したら一生お付き合いするくらいの覚悟が必要!

Datahand Keyboardのキー部分
右手用のキーボード。花弁のように見える部分がスイッチとなっており、指先で上下左右と押し下げ方向に動かして文字入力を行う。上部には、各動作に対応した文字が記されている。

Datahand Keyboardの親指キー
親指には、複数のファンクションが割り当てられているため、キー形状が極めて複雑なものとなっている。

INFOGRIPのBAT Keyboard
左手用、右手用の2種類が用意されており、各単独で使用可能。片手で総ての文字が入力できるコード・キーボードである。

右手用BAT Keyboard
傾斜の付いた複雑な形をしている。