NECパーソナルプロダクツ株式会社が2006年に発売したモバイルマルチメディアプレーヤ、「VoToL(ヴォトル)」の商品構成。 |
■モバイルマルチメディアプレーヤー VoToL (2014/06/27) コトの発端は飲み屋だった。先日、約6年振りに会ったかつての会社の同僚と、渋谷で飲んだ。その際、NECが2006年、密に携帯音楽プレーヤーを発売していたという話題が出た。いや別に「密に」発売したワケでは無いと思うが、あいにくと筆者はそのことを全く知らなかった。これは恥ずべき問題である。 さっそくオクで調査を開始。すぐに「展示品、動作確認済み、元箱一式付き」という出品を発見して3,000円で落札した。どんなモノなのか、ろくろく調べもしなかった。レアモノ好きの筆者としては、あの天下のNECがiPodに対向するような製品を出していた、という事実だけで充分だったのだ。 VoToL(ヴォトル)という名称のこの携帯音楽プレーヤーは、2006年にNECパーソナルプロダクツから発売された。ネットに残る残像を見ると、「NEC、携帯マルチプレーヤー「VoToL」の発売を延期」という記事がヒットする。発売前から予定を延期とは、何とも幸先の悪いスタートを切ったみたいだが、結局「NEC Direct」から3万9800円で発売された。 2006年といえば、iPodも第5世代(および第5世代改訂版)の時代である。当時のiPodのHDD容量は30GB、価格は最も安いモデルで34,200円とVoToLを下回る。この時代のiPodは、H.264準拠の動画再生(750kbps、320×240画素、毎秒30フレーム)に対応したのが特徴だった。即ち、市場では圧倒的なシェアと知名度を確立していたのである。それに敢えて挑んだこのVoToLなる製品は、一体いかなるものだったのか?先ずはそのスペックを記載しておく。
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項 目 | 内 容 |
型 番 | PK-MV300 |
内蔵ハードディスク | 30GB |
ディスプレイ | 2.7型カラー液晶 (320×240ドット、65,536色) |
対応ファイル | 動 画:MPEG2、MPEG4(SP/ASP)、WMV9(DRM10対応) 音 楽:MP3WMA(DRM10対応)、WAV、Ogg Vorbis、ACC 静止画:JPEG、GIF、PNG、BMP その他:テキストファイル(*.txt) |
連続再生時間 | 約4時間(動画:MPEG2、4Mbps) |
電 源 | ACアダプタ、内蔵型充電式リチウムイオンバッテリー |
定 格 | DC 5V、1A Max |
充電時間 | 約3時間 |
入出力端子 | ・SDカードスロット ・DCコネクタ ・ヘッドフォンコネクタ ・マルチコネクタ |
温湿度条件 | 5〜35℃、20〜80% |
外形寸法 | 123mm×61mm×18mm(最厚部22mm) |
重 量 | 約188g |
付属品 | ・ACアダプタ ・PC Linkケーブル ・ヘッドフォン ・VoToLアプリケーション ・取扱い説明書 ・その他印刷物一式 |
VoToLの元箱と本体。 |
梱包を開けてビツクリ! 本体の梱包材に、「ご使用の前に」という紙がデカデカと貼られている。よほどヤバいことみたいだ。内容は、最初に使用する前にリセットスイッチを押せというもの。何だかなぁ。。。 |
VoToL本体とSDカードコネクタ。 本体側面のカバー内にSDカードコネクタがある。なお、SDカードそのものは付属して来ないので、別途購入する。 |
仕様的に見た場合、当時発売されていた第5世代iPodと、ほぼ同等であることが判る。ディスプレイなどは、iPodが2.5インチだったのに対し、VoToLは2.7インチと、一回り大きなものを採用している。PCとのI/Fについては、第5世代iPodがDockコネクタであるのに対し、VoToLは「マルチコネクタ」なる名称のものを搭載している。 こうやってスペックを比べると似たような製品に思えるのであるが、それだけでは商品の差別化が図れない。よってVoToLでは、それこそウィスキーのボトルとイメージしたようなデザインの外観、液体を満たしているようなメニュー表示と、これでもかというくらい、「水か何かが入ったボトル」をイメージさせる演出が施されている。造りそのものは良いのだが、なんだかアクが強いんだよなぁ。。。 しかし、驚くのはこれからだ。ナント!この端末には「音声機械翻訳機能(TranSpeech)」なるものが付いているのだ!携帯型音楽プレーヤー数多しと言えども、機械語翻訳が内蔵されているモデルというのは、おそらくVoToLのみであろう。当時としては、空前にして絶後の機能である。ここで最大の疑問が生まれるのであるが、なぜ携帯音楽プレーヤーに機械翻訳機能を入れようとしたのか?である。海外旅行に便利だよね!・・・って、そんなに海外に行くんかよ?と突っこみを入れたくなるような機能なのだ。 実は、筆者が現物を入手した一番大きな目的は、この音声機械翻訳機能なるものを一度使ってみたかったのだ。そりゃ、今時のiPadやiPhone、Androidには、音声入力機能も付いているし、翻訳アプリも有る。Google翻訳なんか、80言語に対応している。しかし、2006年当時では、それはそれは画期的な機能だったのだろう。NECと言えばC&Cである。機械翻訳は企業理念の根本である。 C&Cとは、1977年に当時のNECの会長が国際会議で提唱した概念です。「C (Computers)とC (Communications) がいずれ融合し、世界の人々がいつでも、どこでも、どこからでも会話できるようになる。さらに、コンピュータ同士がネットワークでつながり、人々に役立つ情報処理を行うようになる」との予測でした。
でもって、さっそく使ってみた。認識の甘さや誤認識は多々あるものの、思っていた以上には翻訳できている。但し、下記の事項を守らなくてはならない。
・あらかじめ、しゃべる内容を決めておく。長い文は、短い簡潔な文にしておく。 結構、制限事項が多くて、疲れますな・・・ その他の機能であるが、音楽再生については特に問題無く行えた。しかし、これは全体的に言えるのだが、メニューの切換等で、待ち時間が長いため、のったり、もっさりした感じになる。サクサク感が全く無いのだ。HDDを使用しているためなのかもしれないが、とてもスマートとは言えない。 仕様上はMPEG4にも対応していると記載されているが、筆者がiPodやAndroidで使用しているmp4もしくはm4vの動画は、なぜか再生できなかった。しかし、ただのmpgであれば(即ちMPEG2であれば)全く問題無く再生できる。 PCとの接続には、専用のケーブルを本体のマルチコネクタに接続して行う。専用ケーブルの片側は、USB A-Typeコネクタそのものなので、なんで素直に本体側もUSBコネクタにしなかったのか、理解に苦しむ所だ。 PC側にはリンクソフトである「VoToL Link」というアプリケーションをインストールする必要がある。使い勝手は、まあ、こんなモンでしょう。Windows7でも一応動作しているが、時々怪しい挙動となる。これについては、サポートOS外での使用なので、何とも言えない。 VoToLには「リセットスイッチ」があるのも、結構受ける。パソコンですか?しかも、本体梱包材にも、このリセットスイッチに関する注意事項を記載した紙が貼付されているという念の入りようだ。なんか怪しいなぁ、と思いつつ使ってみたのだが、皮肉なことに、このリセットスイッチを結構良く使わなくてはならないのだ。 マニュアルには、最初に電源を入れる際に操作しろと記載されているのだが、VoToLはいつのまにか「固まってしまって」いることが多いのだ。そんな時に、このリセットスイッチが大活躍する。なんか挙動がおかしくなったら、即リセット。何てもかんでもリセットで解決。これは仕様なのだろう、きっと。 充電ケーブルの接続コネクタが、どう見てもUSB端子そのものなのだが、USBケーブルでの充電はなぜかできない。外部とのリンクも、わざわざマルチコネクタを設けなくても、USB端子が1個あれば充分であろう。バッテリーの持ちについては、2006年の製品を8年振りに復活させた状態なので、コメントは差し控える。しかし、相当悪そうだ。 とまあ、色々と書いたけど、当時としては30GBの大容量でMPEG2の動画をそのまま見ることができるのが、最大のウリだったのでしょうな。 最後に、今でもネット上に残っている、数少ないユーザーの声を掲載しておく。何分、知名度が絶望的に低いカルトガジェットであるため、ネット上にも情報はほとんど無いというのが現実だ。。。
・こんなメディアプレーヤーを探していました!
・最悪、金をゴミに捨てるようなもの。
・バッテリーの持ちがよくない。
・私は見た目に惹かれて購入しましたが、主な使用目的が音楽再生でしたので非常に使い勝手が悪いです。
・・・以下省略。。。。。
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VoToLの側面。 内蔵バッテリーのところが微妙に膨らんでいる。これがツライチだったら、もう少しデザイン的に洗練されたものになっていただろうに。 |
VoToLの側面。 左から、リセットスイッチ、マルチコネクタ、ACアダプタコネクタ、スピーカーの順に配置されている。USBコネクタがあるのだから、マルチコネクタは不要ジャマイカ?と、普通のヒトなら思いそうな設計である。 |
VoToLの銘板。 この製品は日本製!である。 |
コネクタ部分のアップ。 |
VoToLの外観。 確かにユニークなデザインではある。しかし、アクが強いから飽きるけどねぇ。 |
VoToLの表示例。 システム情報表示の画面。 |
PC Linkケーブル 携帯音楽プレーヤーに、これは無いだろうと思うくらいのゴツいケーブルが付属する。 |
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