■闘病日記 其の二十五【抗がん剤の功罪】 (2014/02/20)

 以下の記述は、私個人の考え方を記している。

 2014年02月20日。癌治療の定期検診の日、私は主治医に抗がん剤の服用を止めると宣言した。自分自身の意思として止める決心をした。従って、その結果生じる全ての事象は、私の自己責任となる。

 理由を述べよう。とても体が持たないのだ。私の場合、副作用が消化器系に非常に強く出てしまい、メシが食えなくなったのである。私個人を知っている方は良くわかると思うが、私はガリ痩せタイプの人間だ。スタミナが無い。そこへもってきて、抗がん剤の副作用である食欲不振と嘔吐が襲ってくる。体重はみるみる減り、体力、気力は落ち、常に体がだるい状態となってしまったのだ。これでは、治療しているのか、死期を速めているのか、何が何だか判らない。人間、食えなくなったらオシマイなのである。

 主治医に相談したところ、それほどまでに酷い情況であれば、一時抗がん剤治療を中止しましょう、ということになった。私がお世話になっている病院では、治療方針としてステージ4の癌患者には術後に抗がん剤を処方するのが、いわゆる「標準治療」として決まっている。そのため主治医の先生も、それに従い抗がん剤を出していた。但し、先生としては、抗がん剤治療はあくまで補助療法なので、眼を食いしばってまで続けるものでは無いという見解であった。あ、「眼を食いしばって」なんて書くと、ケロロ軍曹を見ているということがモロバレだな・・・「ヘホホ運送」なんちって。

 しかし先生としても、できれば抗がん剤治療を続けた方が良いという基本姿勢には変わり無い。曰く、他にも数種類抗がん剤があるので、落ち着いて考え直したら、それを試してみる方法も有りだと言う。しかし現状では、これだけ酷い副作用が出たこともあり、そのつもりは無い。

 以下は私的な見解である。

抗がん剤は毒物である。
これは事実であろう。元々、癌細胞は、自分体の正常細胞がDNAのコピーエラーで異変をきたし、異常増殖したものだ。癌細胞と正常細胞との違いは、極めて少ない。よって、癌細胞だけを正確に叩くクスリというのは、現代の技術では不可能に近い。最近では「分子標的型」と呼ばれる抗がん剤も出てきているが、それでも少なからず正常細胞を叩いてしまう。体内に毒物を入れるのであるから、体は当然それを排除しようとする。その結果、下痢や吐き気、白血球の減少といった副作用が起き、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなる。医療機関では、抗がん剤を明確に「毒物である」とは言わない。そりゃそうだ。処方される側にとって、印象が悪くなるからね。

抗がん剤を飲んでも癌は治らない。
これも事実であろう。抗がん剤は、あくまで癌細胞の転移拡大を防ぐ働きしか無い。抗がん剤を飲むことで、癌細胞がきれいさっぱり無くなってしまうというのは、幻想に過ぎない。

抗がん剤服用による効果が低い。
これは、客観的な表現では無いかも知れない。とある統計データによると、大腸癌で肝転移があるステージ4の患者では、手術による癌の摘出を受けた後の5年後生存確率は17.9%だそうである。これにオキサリプラチンによる抗がん剤治療を補助療法として行った場合は、約7%ほど確率が上がり、25%となるそうだ。この数値が正しいのかどうか、誰にも判らない。もし正しかったとして、これだけ酷い副作用と高額の費用をかけて、生存確率が7%アップするというのは、個人的にはとても「効果的な治療」とは思えない。最も、この点については、各人考え方が異なるだろう。たとえ7%でも、効果は大きいと思う方もおられると思う。

 問題はQOL、即ちクオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life)であり、日々の生活に多大な影響を及ぼしてまでも、抗がん剤治療を続けるかどうか?という点に尽きる。私の場合は、QOLを重視して抗がん剤の服用中止を決めた。「生きているうちに人生を楽しめ」だ。私的に見て効果が低い治療を、過酷な副作用に耐えながら続ける意味が見いだせないのだ。普段通りに生活し、自己免疫力を増強させた方が、納得の行く人生を送れると思ったのである。

 そのようなワケで、今日主治医に対して、抗がん剤治療の中止を申し出た。モチロン、主治医は、私個人の意見を尊重してくれた。今日実施した腹部エコーの結果では、特に異常は見受けられなかったので、手術半年後に行う造影剤入りのCTスキャン検査までは、体力の回復に努めるということになる。

 なお、私が受けた抗がん剤治療は、「闘病日記 其の二十四【化学療法開始】 (2013/12/07)」にも記した通り、オキサリプラチンの点滴と、抗がん剤のゼローダ服用というタイプである。昔しの抗がん剤と比較すると、副作用はかなり少なくなっていると言われているそうだが、それでも結構激しく出た。主治医によれば、これ以外にも、下記のような抗ガン治療法が有ると言う。参考までに。

・TS-1
・UFT、Uzel

 もう、抗がん剤はコリゴリなので、上記各治療についてはまだ調べてもいない。

 最後に。
 歳をとり多少ボケたガンコ爺になった私も、抗がん剤治療を止めることに対するリスクは正確に理解している。今調査しているのは、「緩和ケア」についてだ。私は日本尊厳死協会に入会しているが、最近ではかなりの数の病院が、尊厳死協会指定病院になっている。そのような病院では、緩和ケア科が充実しており、末期になった癌患者の苦痛を和らげる処方を行っている。私とて人の子だから、痛いのは嫌だ。末期になったら、モルヒネ打ってもらい、楽に逝かせてほしい。これは切実な願いなのである。

【余談】
抗がん剤を処方することにより一番儲かるのは、言うまでも無く製薬会社である。製薬会社は、競って新しい抗がん剤を開発し、治験し、販売する。どこまでホントウなのか判らないが、この「治験」のデータの読み取り方が基本的に間違っているという意見も、巷にはある。データの見せ方が、いかにも効くようになっているというのだ。最近では、治験データの改竄疑惑も話題になった。また、厚生労働省が新しい抗がん剤を認可する期間が、他の薬剤と比較して短いというハナシもある。高額な抗がん剤を続々と市場に投入すれば、製薬会社は当然潤う。そして、厚生労働省の天降りは、往々にして製薬会社に行くようだ。このような見方は、偏見かも知れない。私は事実を正確に把握していないのかもしれない。しかし、様々な情報を調べてみると、この業界はブラックとまでは行かないが、グレーな部分が多いと感じる。

この手の問題はタチが悪い。患者の中には、それこそ治るのであればどんな処方でも受けるという方も多いであろう。ましてや、癌である。藁をもつかむ気持で、高額で副作用の強い抗がん剤治療に専念する人も多数おられる。信ずる者は救われるのかもしれない。しかし、私としては、どうもこう、何か納得できないものがあるのだ。抗がん剤治療を全否定するつもりは無いが、与えられる処方に対して、なんの疑念も持たず盲目的に受け入れるというのも、患者としておかしいような気がしないでもない。

癌が治る水というのは無い。





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