入院経験者のみなさまにはお馴染みの光景。ベッド上部にある各種装置パネル。私が入院した病院は結構設備が古いので、今の病棟ではもう少し洗練されたものになっていると思う。右からナースコール、テレビのアンテナ端子、患者氏名、コンセント(4口)、読書灯、そして一番左がLANコネクタ。明らかにLAN配線は後付けですな。。。

■闘病日記 其の二 【告知】 (2013/11/09)

 癌の告知というのは、もうちょっとドラマチックなものだと、何の根拠も無く盲信していた私であったが、現実には実にアッサリしたものだった。最も、主治医の先生の性格にも依存している。私の主治医の先生は、極めてハッキリとモノを言うタイプであり、なおかつとても前向きで明るい。そりゃ、外科医ですからねぇ・・・細かいことを気にしてちゃ、生きてけないよ。そんな主治医の先生から、癌の告知を受けても、「あっ、な〜んだ、そうだったんだぁ。。。ハッハッハ」程度にしか感じないんだよね。とにかく最初はまるで他人事としてしか思えなかったのだよ。

 最も、現時点では総合検査の前であり、また大腸癌「らしい」という、実に微妙なニュアンスを使っていて、まだ確定したワケではない。大腸癌は、それほど症状が重くなければ、切腹して切削しちゃうことで、かなりの確率で治癒できると聞いていた。そのめ、そんなにショックは受けなかったのだ。これが、後ほどもっと深刻な告知を受けることになるとは、この時には夢にも思わなかった・・・

 この病院では、CTの検査結果が即時にモニタ画面に出力される。おそらくJPEG2000形式だと思われるその画像は、実に鮮明だ。肩から股関節の間を、背中側から腹にかけて、横方向に輪切りにした画像と、同区間を縦方向に輪切りにした画像が、マウスのホイール操作でグリグリと動かすことができる。因みにこの病院、建築設備は古いものの、電子カルテは思いっきり最新のものが入っている。どこのメーカーかは最後まで不明だったが、とにかくあらゆる検査オーダーとその結果の画像が、至る所に置かれた端末で確認できる。その点では、ITエンジニアである私も感心した。

 さて、CTの検査結果の画像を見ると、小腸の終端部から縦方向に伸びている大腸部分(ここを専門用語で「上行結腸」という)内壁に腫瘍が見受けられ、その直径が6cm程になっていた。これが10cmを超えると、タイヤがパンクするように大腸が破裂し、それはそれはタイヘンなことになる。余り考えたくない状況ではある。そりゃそうだ。大腸の中には何が詰まっているのかを思い浮かべれば、その壮絶な状況はご理解頂けると思う。

 医者の指示としては、このまま入院に突入し、2日間程度の絶食処方で胃腸内をスッカラカンにした後で、各種検査を行い、癌の状況確認を行うとのことだ。既に医者の背後には、入院書類一式を持った女性の医療事務の方が、満面の笑みと湛えて控えて立っており、入院の準備は万端といったところだ。逆に言うと、「もう逃れねぇぞ!」というワケである。さすがに病院ビジネス。用意万端、ぬかり無し。捉えた患者は離さない。

 その後の流れは正に検査の嵐で、再度の採血、採尿、心電図測定、呼吸検査等、人間ドックでお馴染みのメニューを、3倍速再生のVTRくらいの速さで受けさせられる。

こんなにコキ使うな!私は病人だ!

 と言いたくなってくる。この時点で、再度点滴を付けられた。老練の看護婦さんが、左腕に要領良く針を固定する。この瞬間から、点滴支持ポールは私の相棒となり、24時間、トイレの中までも行動を共にすることとなった。この点滴であるが、実に煩わしい。よく聞く話しだが、これほどのものだとは思わなんだ。とにかく絡まる。あらゆるものに絡まる。

 あれよあれよという間に、大部屋に案内され、パジャマに着替えてベッドの上の人となった。近所の診療所を出る時、まさか5時間後に、このような状態になっていようとは、当然のことながら全く考えていなかった。かように、入院というのは突然やって来る。投資信託や生命保険のセールスマンがやって来た時みたいに、「またの機会にお願いします」って追い返すことができない。運命には逆らえないということですな・・・

(つづく)


入院に際し、新たに追加された点滴。大塚製薬の「ビーフリード 1000ml 輸液」と言う。ビーフ味である。冗談だ。点滴にビーフ味など付いていない。しかし、毎度のことながら、こういった薬の名前って、ホントに変なのが多いよな。因みにこのビーフリードであるが、「ビタミンB1・糖・電解質・アミノ酸液」となっており、食事が充分に取れない際の栄養素と水分の補給に用いられているそうだ。これから絶食処方に入る私の、唯一の栄養源となるワケである。




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