「ウール(WOOL)」の上下巻の表紙。表紙も凝っているよ。作品の雰囲気を端的に現している。
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■WOOL(ウール) (2013/10/25)

 SFは若い頃、それこそ貪るように読んだせいか、最近はすっかりと遠ざかってしまっていた。そんな中、書評で好評だったのが、この作品。ジャンルは、デッドテク、ディストピア、終末SFものだ。上下2巻の大作でありるが、読み出したらホントウに止まらなかった。解説にある「章の一つひとつがポテトチップスのようだ」との論評は、なかなか良い表現である。

 ウールは、三部作のうちの一つだそうで、今後「シフト」、「ダスト」の刊行も続くそうだ。当然のことながら映画化も検討されているとのこと。でも、現状映画化権を獲得している監督がリドリー・スコットってのが、ちょっと気になる。最近は老醜が垣間見えるからなぁ・・・

 上巻53ページ頃にして、早くもネタ割れかと思わせておいた後の突き落とすような展開は見事。そりゃ、上下2巻本で、上巻53ページ目でネタを明かすワケは無いわな。続いて、ちょっと冗長と思われる部分が有るが、これは構造物の巨大性を読者に知らしめるための演出だ。下巻からは猛スピードでエンドへと至る。文句無しに面白い。ディテールも確かだ。

 今まで読んだこの手のSFで、最も面白かったのは、ウォルター・M・ミラー・ジュニア作の「黙示録3174年」だった。黙示録3174年が、静的な傑作であるとすると、ウールは動的な傑作と言えるだろう。読者に媚びた展開が無い所も、好感が持てる。



ウォルター・M・ミラー・ジュニア作の「黙示録3174年」。個人的に最も優れた終末SFだと思っている。




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