「人体冷凍」の表カバー。2010年11月18日第1刷。講談社。2,300円。

■読書二点 (2013/10/05)

 週末は天気が悪く気温も低かったので、読書三昧だった。いつもなら、現代物理学や量子力学、宇宙論といった、俗世を超越した分野の本を好んで読むのだが、今回はちょっと毛色が違う本を選んでみる。

 1冊目は、以前よりウォッチしていたドキュメンタリー、「人体冷凍」。まあ、タイトルからして扇情的であります。しかし、内容は至って真面目。ストーリー展開に脚本家が係わっていることもあるので、充分楽しめる。帯にはご丁寧なことに、「本書にはショッキングな写真が掲載されています。ご注意ください。」という警告文が書かれている。確かに結構エグい写真が多数掲載されており、Amazonでの書評では「R指定本だ」という意見もある。そんなわけで、それなりに覚悟して開いたのだが、思ったほどグロくは無かった。最も、筆者の感覚が麻痺している可能性も有る。いずれにせよ、掲載されている写真については、デリケートな方には、あまりオススメはできないかも。

 内容は、読んでみてのオタノシミであるが、全部事実であるとすれば、ここで取り上げられているアルコー延命財団っていうのは、結構トンデモない似非科学組織でありますな。。。ところで、人体冷凍処理の方法もスゴかったが、筆者的には、この組織に勤務する職員の個性が面白かった。いわゆる天才とナントカとは紙一重、っちゅーヤツが続々と登場する。むしろ、そっちの方が恐い。

 筆者も昔し、企業の研究所に勤務していた時があったが、これがまた動物園みたいな所で、とにかく奇人変人の巣窟だった。良く言えば個性豊か、悪く言えば人格崩壊。百花繚乱、魑魅魍魎の面々だったのだ。本書には、これを何十倍にもスケールアップしたような人間が登場する。「あ〜、こういうヒトって居るよねぇ〜」といった感が有り有りなのだ。

 文章はスピード感があるので、一日で一気に読んでしまう。要注意の写真は、書籍中央にまとめられているので、苦手だったら見なければ良い。著者が敢えて写真を掲載した理由は、きっと文章だけでは、「これ、全部作り話じゃない?」と思われるのを避けるためだったのだろう。なお、筆者的に一番ウケた所は、冷凍保存処理する際にキャットフードのツナ缶を再利用する所だった・・・一体何のハナシをしているのかは、読めば判る。



「人体冷凍」の裏カバー。

「アップル帝国の正体」の表カバー。

 「人体冷凍」は一気に読み終わってしまったので、次はもう少し現実的な本を選択する。これは少し前に、新聞の書評欄で紹介されていたものだ。

 筆者は林檎信者では無い。しかし、iOSのデジタルガジェットは、良く使う。Android OSには、UI等で統一感に欠ける感じがあるが、iOSは整理されており、今の所は使いやすい。しかし、これはこれでオソロシイことで、そのうち、知らない間に、周囲の誰もがiOSを使っているような情況になるのではないかと危惧している。実際、電車の中でスマホいじっている人を見ると、かなりの割合でiPhoneだ。あっちを見てもこっちを見ても、み〜んなiPhone。。。大袈裟だと思うかも知れないが、ビッグ・ブラザーの世界を垣間見ている気分になってくる。

 本書は、そのApple製品が、いかにして日本の「ものづくり」を支配し、植民地化してきたのかを綴ったドキュメンタリーだ。特に、筆者のようなデバイス業界に足を染めていたヒトには、そのえげつないやり方が良く伝わってくる。

 文房具として割り切った場合、Appleの製品は良くできている。コモディティ化し尽くしたデジタルガジェットと言えるだろう。でも、そうやってApple製品のユーザーがどんどん増殖してゆくことで、日本企業の体力は確実に衰えて行った。かつて、この国の大黒柱だったエレクトロニクス産業を、ここまで追い込んだのも、Apple製品なのだ。こりゃ、率直には喜べないよなぁ。。

 でもまあ、因果応報、歴史は繰り返すって言うし、そのうちAppleも同じ道を辿るのだろうね。次に支配するのがどこのメーカーなのか、それはそれで楽しみではある。(やっぱ中華なのかなぁ?)





<< Menu Page



Copyright (C) Studio Pooh & Catty
1996-2013