■かくも長き不在 (2008/01/01)

 2006年5月3日の更新以来、本コーナーはほぼ1年8ケ月の間放置状態にあった。この間、筆者は文字通り死んでいた。結論から言えば、病気で倒れていたのである。忘れもしない2006年11月6日、筆者は突然体の不調に見舞われた。年内はどうにか普通に生活できたのであるが、2007年に入ると病状は悪化。2007年2月〜4月にかけては、それこそ寝たきりの状態となる。。。。

 冗談抜きで、人生最大の危機を迎えたのだと、その時実感した。本HPの「ご挨拶」ページで、「まだ死ぬまでには若干時間が云々・・・」と記載したが、その時間は意外に短かいのではないか?と自問した。一番辛かった時期は、一日中薬を飲んで寝たきりの状態で、活動らしきものは全くできない。筆者が敬愛する漫画家「ねこぢる」氏の作品に、「ぢるぢる旅行記(総集編)」なるものがある。その「ネパール編」に、裸のランチで有名な作家であるバロウズが、モロッコの安宿でモルヒネを打ち続けて、1年間ベッドの上で自分の靴先だけを見て過ごしていたというエピソードが掲載されていたが、まさにその状況に近い。

 筆者のベッドからは、壁掛けのデジタル時計が見える。その数字が変化してゆくのを、呆然と見続けるのだ。午後に入る。時計がゾロ目を表示する。「1時11分」、「2時22分」、「3時33分」、「4時44分」、「5時55分」。。。意識できることといったら、コレくらいしか無い。正に、精神抑止状態。往年のパームトップ廃人が、ホントウに廃人になるとはこれまさに、ミイラ取りがミイラになるということであろう。破滅という名のブラックホールの、シュヴァルツシルド半径ぎりぎりの所まで到達しようとしていたのである。

 しかし、筆者の守護神は、まだ見捨てなかったようだ。死んで楽をさせるようなことはさせなかったね。。。。投薬治療が功を奏したか、結局破滅という名のシュヴァルツシルド半径内に立ち入ること無く、徐々にではあるが離脱してきたのである。2007年の5月連休になる頃には、ようやく普通に物が食べられるようになり、薬の副作用も弱くなってきた。秋風が吹く頃には、外出できるようにまで回復した。自分の足で自由に歩き回ることができることの意味を再確認できというワケだ。11月には公共交通機関を使っての移動も苦ではなくなり、2008年の正月は、昨年の辛さがウソのように感じるまでに回復を遂げた。。。

 ただ、以前と全く変わってしまったことがある。これだけ長期間治療すると、考える時間は有り余るほどあるし、本も沢山読める。大袈裟な言い方をすれば、生死についての認識がすっかり変わってしまった。死は意外と近いところにある。それに対応するための事前準備が必要だ。体が一番大切だと言うが、まさにその通り。動くうちにやりたいことをやる。そして、もしもの時のための身支度をしておく。これが今後やるべき目標となった。一体オレは今まで何をやってきたのか?今思い返すと、呆れてモノが言えん。。。

 とりあえず、20ケ月振りに俗世に戻ったついでに、この「ブログ」のようなものも更新を再開しよう。


(補遺)

タイトルの由来を説明するほど野暮なコトは無いということを承知の上で一言。「かくも長き不在」とは、古くからの映画好きにとっては有名な、1964年のフランス映画の題名から採った。ハナシの詳細は「allcinema ONLINE」あたりを見て頂ければ判る。先日、レンタル屋から借りてきて十数年振りに見てみたが、傑作はいつになっても色あせないねぇ。それにしても、この映画は残酷だ。残酷なシーンは全く出てこないが、とにかく残酷だ。浮浪者は実際に行方不明になった夫だったのか?その後どうなったのか?映画は何も語っていない。戦争で記憶を失ってしまった浮浪者が、旧友たちに後ろから名前を叫ばれて、まるで敵兵に投降するかのように、無意識に両手を挙げてしまうシーンは、派手な戦争映画でも伝えられない「重さ」がある。最近はこういったビデオを置いてあるレンタル屋も、めっきり少なくなってしまった。幸い、筆者の近所には、名作、カルトばかりをレンタルしている希有なレンタルショップがあり、重宝している。このハナシは、長くなるのでまたの機会に・・・

筆者の敬愛する天才漫画家「ねこぢる」氏の、個人的には名作中の名作と言えるものが、この「ぢるぢる旅行記 総集編」である。この本のネパール編に、上記に記載したバロウズのオハナシが出てくる。インド編、ネパール編共にドキュメンタリーとしては傑作だ。これだけの才能の持ち主が自殺をしてしまったという事実は、大変残念なことである・・・・合掌!

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