「不思議な数 πの伝記」 表紙
円周率「π」だけで一冊の本が書かれている。しかも、内容が面白い。特に、「π」を使った例題の中には、想像を絶するものがある。色々と発見の多い好著。


π (2006/04/20)

 タイトルに「伝記」とある通り、本書は「π」について書かれてはいるものの、数学専門書というよりは歴史書、啓蒙書に属する。理数系専門の人間でなくても、容易に読める内容であるし、なによりもバラエティに富んで楽しく仕上がっている。「πについて一冊の本を書くなんて」と、著者自身が思ったそうだが、内容はなかなか充実したものだ。

 本書前半の「πの歴史」では、さまざまな人によって考えられた「π」の算出方法が記載されており、面白い。「π」の奇妙なところは、単なる直径と円周との比率に止まらないことだろう。ビュフォンの針の実験では、「π」が確率に関係していることが示されているし、無作為に選んだ正の整数が互いに素となる確率にも「π」が入ってくる。どう考えても不思議である。。。それにしても、インドの数学者ラマヌジャンのπ算出式は、いったいどう考えて出してきたのか、皆目見当が付かないくらい複雑だ。どれくらい複雑な式かは、実際に本書で確認してもらいたいが、とにかく天才の考えることは、よう判らないという見本のようなものだね。。。
ヽ(´ー`)ノ

 本書には、意外に驚く有名な例題が掲載されている。地球を完全な球と仮定し、赤道上にロープをぴんと張り渡す。このロープを1メートルだけ長くした場合、地表とロープとの間に、どの程度の間隔ができるのか?といった問題は、結果を見ると驚いてしまう。感覚的には1mmにも満たないと思われるが、計算すると実に16cmにもなるのだ。数式で示されると、納得できるんだけどねぇ。。。その他、虚数iのi乗が、ナント実数であるという証明にも「π」を用いる等々、面白いトリビアも掲載されている。
アルフレッド・S・ポザマンティエ+イングマル・レーマン共著。日経BP社発行。訳は、この手の理数系書籍では有名な松浦俊輔。2,200円と値段もお手頃だ。肩のチカラを抜いて読める好著である。


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