ケプラー予想 表紙
ジョージ・G・スピーロ著の数学ドキュメンタリー「ケプラー予想」


■ケプラー予想 (2005/11/22)

 前出「フェルマーの最終定理」を購入した際、書店の棚の横にあった本がコレ。ちょっと中身を見てみたら、なかなか面白そうな内容だったので読んでみた。ジョージ・G・スピーロ著、新潮社刊、2005年4月30日初版発行、2,400円也。「ケプラー予想」というのは、あまり知名度が高くないようであるが、フェルマーの最終定理と同様、長年に渡り数学者を悩ませてきた問題として有名である。コトの発端は、1590年代末に、英国貴族のローリーという人物が、砲弾をいかにしたら効率的に船倉に積み込むことができるか?と考えたことに始まる。で、ローリーが側近のハリオットという人に聞いてみたのだが、「ようわからん」ということで、このハリオットが、ケプラーに手紙で尋ねてみた。ケプラーは色々と考えた末に、この問題(三次元球の最密充填問題)が、八百屋でオレンジやリンゴを積む方法と同じだと想定、ここにケプラー予想が立てられた、という経緯になっている。

 ケプラー予想は、フェルマーの最終定理とは異なり、極めて一般的な事柄を対象としている。直感的には誰にでも判るのだが、それを証明しようとすると極めて困難である、という事例として、取り上げられることが多い。事実、この証明も、二次元の場合から始まり、三次元球についての証明が完成したのは、1998年になってからのことであった。

 フェルマーの最終定理の証明が、エレガントな内容であったのに対し、ケプラー予想の証明は、4色問題の時と同様、コンピュータで可能性のある全てのケースを検証するという、ある意味力業に頼ったものであった。そのため、フェルマーの証明は「戦争と平和」のような内容であり、ケプラー予想は「電話帳」を読むようなものだ、と評されている。まあ、言わんとしていることは判るが、それにしても「電話帳」とは、手厳しい・・・
(´ヘ`;)

 同じ数学ドキュメンタリーではあるが、サイモン・シンのベストセラーである「フェルマーの最終定理」と比較すると、本書は若干起伏と迫力に欠ける。前者が、証明そのものが芸術的であったのに対し、後者がコンピュータを使った内容であることも、その一旦であろう。しかし、ケプラー予想の証明が完成するまでに携わった、多くの研究者が紹介されており、その点は興味深い。余談だが、筆者的にはケプラーその人の性格についての記述が、大いにウケた。ホントかどうかはワカランが、本書の著者によると、ケプラーの母親は「希に見る嫌な性格」の持ち主だったそうで、晩年は「魔女狩り」にもあったそうだ。ケプラーその人も、少年時代からかなりの嫌われ者だったそうだ。大天文学者として有名な人にも、意外な一面があるものだ・・・

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