Amigaのメガデモ集「17 BIT」 ジャケット
1993年にAlmatheraより発売された、伝説のAmigaメガデモ集「17 BIT」。この中には、約1,600本以上のメガデモが掲載されているのだが、ファイル名がナント!全て連番で、誰の何という作品なのかが全くワカランという、大変恐ろしい構成になっている!
ヽ(`Д´) ノ


■Amiga Forever!!!(その2) (2005/10/07)

 前回(10/02)、基本的なセットアップが終了したAmiga Foreverであるが、今回はメガデモ再生について取り上げてみよう。Amigaといえばメガデモである。かのクーロン黒澤氏著の怪作「マイコン少年さわやか漂流記」にも、Amigaのメガデモを日がな一日ぶっ通しで見続けて、精神的に破壊一歩手前まで到達したようなことが書かれているくらい、麻薬的な魅力を持つAmigaのメガデモ。以前試してみた初期のエミュレータでは、オハナシにならないくらい使いモンにならなかったのだが、今回のAmiga Foreverくらいの完成度になると、さすがに実機と比較して遜色ないくらい、いや、それ以上忠実に再現することができる。これは快挙である!!!
ヽ(´ー`)ノ

 ところで、メガデモについて。。。最近の若いシトは知らないかもしれないが、その昔、8ビットマイコン全盛の1970年代に、コンピュータソフトのクレジット画面を勝手に書き換えては自慢しあう、クラッキングというのが流行した。これが1980年代に入ると、自分で音楽やら映像やらを作成し、マシンパワーの限界以上を駆使して、いかにスゴく見せるかを競う、いわゆるデモ(デモシーン)に発展する。元々、語源的にはメガデモは、デモの中でも極めて美しい作品を指し示す。これらのデモソフトの制作者は、冬の間寒くて外出することができない北欧の若者によるものが多い。いわゆる「ネクラ」な趣味なのであった。
(´ヘ`;)

 Amigaのメガデモは、その中でも特に有名であり、Amigaといえばメガデモ、メガデモといえばAmigaと言われているくらいである。Amigaの中でも、Amiga 500をプラットフォームとするメガデモは、特に多数製作された。たかだか8MHzのMC68000を使用していたとはいえ、アセンブラでギシガシに組まれ、BIOS直叩きで高速化されたソフトウエアは、非力なマシン上でかなりアクロバティックな映像と音楽を見せてくれる。これらAmigaのメガデモは、今や伝説となってしまったメガデモ集、「17 BIT」としてCD-ROMでも配布されており、そこに掲載されている数たるや、膨大な量に及ぶ。筆者宅にある2枚組の「17 BIT」CD-ROMには、実に合計1,619本に及ぶデガデモが収録されているのだ!
( ̄〜 ̄)

 これくらいの量になると、当然出来不出来の差も大きい。その中で素晴らしい物、見応えのある物を選ぶというのは、膨大な時間と忍耐とを必要とする。デモソフトなので完全フリーなのは良いのだが、こう数が多くては、いちいちチェックするのも大変だ。そんな中で、今回は有名どころをピックアップしてみた。

 なお、これらのメガデモは、一般的に「DMSファイル」の形式で配布されている。「DMSファイル」とは、Amigaにおける独自ファイルフォーマットで、主にFDに対して使用されている。通常、展開するためには専用のソフトウエアが必要となるが、Amiga Foreverではナント!直接DMSファイルをFDドライブに登録することで、即使用できるようになっている。これは便利だ!!!OS 1.3でマシンを起動させ、F12キーでWinUAEのプロパティを呼び出し、FDドライブに見たいメガデモのDMSファイルを登録してリセットをかければ、即メガデモを再生することができるのである。
ヽ(´ー`)ノ

 以下に、筆者の独断で選んだ代表的なメガデモを、いくつかご紹介してみよう。

kgb(1991年) #1
ソ連のKGBがMTVを乗っ取ってしまう、という秀逸な展開のメガデモ。最初に現れるテストパターンにノイズが重畳するシーン。

kgb(1991年) #2
kgbのスタート画面。テストパターンが終了すると、本編スタート。

kgb(1991年) #3
ソ連の国旗に描かれたマークが上下左右に動き回るシュールな内容。

 先ずは筆者のお気に入り「kgb(1991年)」。MTVの放送を、ソ連のKGBが電波ジャックして乗っ取ってしまう、というストーリー展開が傑作だ。ノイズが消えて乗っ取られたMTV本編が再生されるシーンは、実に良くできている。デモ中のベクトル描画されたドラマーの動作と音とが、寸分の狂いも無く同期しているのは、見事としか言いようが無い!

 続いては、デンマークのカルトプログラマー集団、ADICT制作による「MAYDAT RESISTANCE(1992年)」。数あるメガデモの中でも、傑作中の傑作として、取り上げられることが多い作品だ。冒頭のコーランのようなBGMからスタートし、LD版ゾンビ(ロメロ版)のジャケ写真にも使われた防毒マスクや、マンデルブロー集合の画像などが、高速で切り替わる。ラスト、荒くデジタイズされた女性が目を閉じるシーンでぶっつりと切れるシーンが見事!音楽、映像共に満点の出来である。

MAYDAY RESISTANCE(1992年) #1
オープニング・クレジットシーン。このセンスがGood!

MAYDAY RESISTANCE(1992年) #2
ゾンビに出てくる防毒マスクの横顔を、踊る男をイメージしたイラストが動き回る。

MAYDAY RESISTANCE(1992年) #3
「CONTINENTAL TECH DANCE」のロゴがマンデルブロー集合画像の前に現れる。このセンス、タダモノでは無い!

 ドイツはデュッセルドルフのプログラマー「WILDFIRE」が制作した「TEKKNO」は、オープニング/本編/エンディングときっちりまとまっており、いかにもドイツらしい堅い構成のメガデモだ。秒読み後に始まるオープニングタイトルは、映画のクレジットのように延々と制作関係者の紹介を表示する。これぞ、メガデモプログラマーの本領発揮。自己顕示欲が微妙にアピールされている。とにかく、音楽がカッコ良い!本編では「TEKKNO」という文字が、「TEKK-」、「NO」と分割され、繰り返し表示される。

 SpaceBallsの「9-Fingers」は、モノホンのAmigaでも再生するのが難しいと評判だった、気むずかしいデモである(なんだんねん?!ソレ!)。そのためか、Amiga Foreverエミュレータでも、RAMの設定、エミュレートマシンの選択、ブートOSの種類を細かく変えないと、再生できない。表題通り、9本の指をモチーフにしたデモは、ビデオトースターで加工した、踊る人物の動画に、意味不明の漢字が裏返しで矢継ぎ早に表示されるというシュールな内容。マトリクスの裏返しカタカナは、ここから来ているのではないか?と思ってしまう。エンドクレジットには「九指」と赤で大きく描いて決めている!

WILDFIRE TEKKNO #1
映画を思わせるオープニングクレジット。BGMが良い!

WILDFIRE TEKKNO #2
TEKKNOの1シーン。

WILDFIRE TEKKNO #3
TEKKNOの1シーン。

SpaceBalls 9-Fingers #1
オープニングに現れる怖いオッサン。この間にプログラムがデクランチされる。

SpaceBalls 9-Fingers #2
なぜか裏返しで高速表示される「漢字」。マトリクスに出てくる裏返しのカタカナ文字に通じるものがある。

SpaceBalls 9-Fingers #3
ビデオトースターで加工された動画。「九指」の題名通り、指を折りながらカウントしているシーン。

SpaceBalls 9-Fingers #4
抜群のセンスでまとめられたエンドタイトル。カッカッコ良い!

 SIM DRAKE CODEX PRODUCTION制作の大作、「SPEED」は、WEB上でも良く紹介される有名な作品。しかし、その再生はなかなかやっかいだ。FD実に4枚組みの超メガデモなのだが、途中適当なタイミングでFDをとっかえひっかえしてあげないと、最後まで辿り着けないという、ある意味極めてAmiga的なノウハウを必要とする。内容はタイトル通り、高速描画がウリになっている。3Dのワイヤーフレームが回転したり、巨大な分子構造内部をグリグリ回ったりと、高度なテクニックを駆使したものになっている。Amiga Foreverでは、最大4台のFDを仮想的にマウントできるのだが、なぜかこのデモではFD1のみしか認識されず、従ってFD1を一定時間経過する毎に交換しなくてはならん。。。このデモが公開された当時、エンドクレジットまで見ることができた人が極めて少なかった、という、ある意味変なところで有名になってしまったデモである。。。
ヽ(`Д´) ノ

 もうキリが無いので、これが最後。CRONICSの「HARDWIRED」は、Amiga Foreverのパッケージ中にもデモ用として入っている有名なメガデモだ。FD2枚組みで、良くここまでやれたものだと、今見ても感心してしまう。1991年制作のこのメガデモは、シェード、ベクター、スプライ等、高度な画像処理を使った短いデモが10個以上連続して登場する。音楽は「尺八」を思わせる不思議なBGM。なぜかこう、メガデモの中には「東洋」を連想させるものが多い。オープニングのアニメーションは、まるで映画そのもの。ここだけでも一見の価値がある。
ヽ(´ー`)ノ

SIM DRAKE CODEX PRODUCTION SPEED #1
FD4枚組みの大作、SPEEDのオープニング画面

SIM DRAKE CODEX PRODUCTION SPEED #2
SPEEDの1シーン。3Dの象がグルグツ回る・・・シュール!

SIM DRAKE CODEX PRODUCTION SPEED #3
SPEEDの1シーン。ワイヤーフレーム表示された顔が、これまた高速でグルグルと回る。SPEEDという名称の通り、全編これ高速表示がウリのデモ。

CRONICS HARDWIRED(1991年) #1
Amiga Foreverで標準添付されてくるくらい、リキが入ったメガデモ、HARDWIRED。超絶技巧を施した画像処理の数々が表示される様は、今見てもスゴイ。これ、本当にMC68000でやってたんでしょうか?

CRONICS HARDWIRED(1991年) #2
HARDWIREDのオープニングシーン。目の前をなぜかゴキブリがカサカサと移動。意味不明。。。

CRONICS HARDWIRED(1991年) #3
マッチョマンの脇を通り抜ける、螺旋状の文字列。これも意味不明。。。

CRONICS HARDWIRED(1991年) #4
このメガデモ中、最もスゴいシーンがここ。箱の底面から粒子が飛び出して、文字を形成する。実になめらかな動きである。

CRONICS HARDWIRED(1991年) #5
エンドクレジット。アメコミのスーパーヒーローそのものだ!

 ・・・とまあ、こんな感じで、とりあえず有名どころ6本のメガデモを紹介してみた。この他にゴマンとあるので、当分の間は退屈することは無いだろう。しかし、こんなんばっか見てたら、それこそ廃人になっちゃうので、ほどほどにしておいた方が良い。ほとんどのデモでは、画面が高速にちらついて変化するので、視神経にも優しくないしね。。。

 興味ある方は、別途Amiga Forever本体を入手の上、下記のデモファイルを落として再生してみてくらはい。

KGB
ADICT「MAYDAY RESISTANCE」
WILDFIRE「TEKKNO」
SpaceBalls「9-Fingers」
SIM DRAKE CODEX PRODUCTION「SPEED」
CRONICS「HARDWIRED」

 あ〜〜〜、疲れた・・・・

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