■ALBERT SPEER ARCHITECTURE (2005/08/05)
アドルフ・ヒトラーの主席建築家であり、ナチスドイツの軍需相でもあった、アルベルト・シュペーアの作品集である。今となっては、かなりの稀覯本である。シュペーアは1905年マンハイム生まれ。新古典主義建築家であるパウル・トロースト教授の門下生であり、アドルフ・ヒトラーの信頼を受け、多くのナチス・ドイツ建築を手がけた建築家であった。その代表作には、国民的労働日大会広場設計、首相官邸等があり、また首都ベルリンの大改造計画「ゲルマニア」の総責任者でもあった。軍需相に抜擢されてからは、部品の共通化といった生産体制の効率化による功績が取り上げられがちであるが、これは同相前任者であるトート博士の考案を実現していたに過ぎないとの見方もあるようだ。
本書は布張りハードカバーの美術書で、総ページ数は250ページ。1985年にベルギー・ブリュッセルにある「Archives d'Architecture Moderne(AAM)」より刊行されたものだ。ISBN2-87143-006-3。この本には、シュペーアの1932年から1942年に渡る作品を収録している。有名なツェッペリン・スタジアムや巨大ガスタンクのような形状をGROSSE HALLE、都市計画のみで実現しなかったゲルマニア改造計画など、どれをとっても想像を絶するスケールだ。新古典主義建築による国家モニュメントの様式美は、ナチス・ドイツということを別にすれば、確かに非常に美しく迫力がある。本書に掲載されている建築は、構想段階のものも多いが、精緻な模型写真を見ると、まるで実在しているような錯覚に捕らわれる。60年以上も前に、現在のSF映画を凌駕する建築設計を行っていたシュペーア。恐るべき才能だ!
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