■コブラ型電蓄ピックアップ (2005/03/10)

 昔の電蓄(電気蓄音機)には、トンデモない形をしたピックアップを搭載したものが多く存在した。ここに紹介するものは、その中でも最も珍妙なもの、コブラ型電蓄ピックアップだ。

 電気蓄音機のピックアップとしては、サファイア針を使用するクリスタルタイプのものが知られているが、コブラ型ピックアップは鉄針を使用する。いわば純メカニカル蓄音機に使用されていたサウンドボックスの電気版であり、ピックアップ先端にコイルやら鉄心やらが格納されているため、頭でっかちのデザインが多い。ピックアップの外観が鎌首を持ち上げた蛇のように見え、また先端に突き出た鉄針が蛇の舌のようなので、コブラ型の愛称で呼ばれている。

 コブラ型ピックアップにも様々なデザインのものがあったが、今回入手したものは、まんまコブラの形をしたもので、おそらく戦前の製品であろう。しかし、いくらコブラに似てると言っても、ここまで徹底しなくてもと思ってしまうようなものだ。明らかに過剰装飾。もうこれは電蓄のピックアップなどでは無く、工芸美術品の世界に入っちゃっている。
(・∀・)

 本体は鋳鉄製でずっしりと重い。おまけに針は鉄だから、こりゃもう、レコードを削り取って再生しているとしか言いようが無い。コブラ型のアーム先端部分は12cm程度の幅を持ち、その上面には実に見事な装飾が施されている。記載されているブランド名はConcertone(コンサートン)。WEBで調査すると、同名のブランドは、タイガー電機株式会社が使用していたようで、おそらくは同社の製品だろう。昭和10年前後のものと思われる。ピックアップの付け根部分には打刻で「6708」というシリアル番号が入っていた。

 しかし、たかが電蓄のピックアップに、ここまで凝った装飾を施すというのも、今考えるとなかなか面白い。当時としては、こういった所で製品の特徴というかオシャレを演出していたのだろう。そう言えば、戦後のST管5球スーパーラジオの同調ダイアル部分も、過剰(異常)とも言える装飾が施されていたな。。。機能的な差が付けにくいラジオだからこそ、デザイン面で個性を出したのだろう。いずれにせよ、量産コスト最優先の現代では、到底マネできない、というか考えられないことだ。昔は精神的に余裕があったんだねぇ・・・・
ヽ(´ー`)ノ


Concertoneコブラ型ピックアップ
コブラの形を模して作られた珍品。でかくて重い!

コブラ型ピックアップ上面の装飾
ブランド名はConcertone(コンサートン)。おそらくタイガー電機株式会社製造の製品であろう。

ピックアップ先端部分
コイルやら鉄心やらが格納されているピックアップ先端部分。針は鉄製のものを用い、ピックアップ本体に挿入した後、正面のネジを回して固定する。

ピックアップから突き出た鉄針
こりゃ、刺されたら痛そうだよ。。。。シャレじゃ済まないな。。。


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