■複雑な世界、単純な法則 (2005/03/01)

 複雑系について記述された出版物は数あれど、この本ほど良くわかるものはかつて無かったと言えるほどの好著である。草思社刊行の「複雑な世界、単純な法則」は、身近な例を多数取り上げることにより、ネットワーク科学の最前線を解説したものだ。一見お堅い内容のように思えるが、本屋で立ち読みしていて、一発でハマってしまい購入。あっという間に読み終えてしまった。難解な理論をここまで簡単かつ面白く解説した本は、他に無いであろう。

 60億人を越える人類のネットワークが、実は案外単純な法則で成り立っているのでは無いかという、一見荒唐無稽な前提から物語りは始まるのであるが、様々な実例を用いて解説されると、なるほどと思ってしまう。冒頭紹介されている、スタンレー・ミルグラムの手紙を使った実験は有名。いわゆる、世界中の人間が「6次の関係」で結ばれているという説の起源ともなったものだ。

 世の中の様々な関係は、局所的な多数のリンクと長距離を結ぶ少数のリンクから成る「スモールワールド」と呼ばれるパターンが基本となっているとし、複雑な世界を単純な法則で表現することを試みる。「世界の誰もが6人の人間を介在してつながっている」とか「金持ちの元に金が集まってくる」などといった例を挙げ、複雑に見える世の中の根底には単純な法則があるとし、これをベースに、インターネットが従う法則、河川のパターン、エイズの流行といった例を取り上げ、解説している。

 著者はアメリカの科学ジャーナリスト、マーク・ブキャナン。一見難解な問題を実に明快な理論で解説しているのは見事!近年の科学系書籍の中では、文句なしに面白い。肩肘張らずに読めるお勧めの一冊である。
 ヽ(´ー`)ノ


複雑な世界、単純な法則
これで2,200円は絶対に安い。筆者イチオシの好著である!


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