68系CPUでお馴染みのモトローラ社がその昔製造したラジオ、モデル57 Aである。このラジオはトランスレス方式の5球スーパーラジオで、筐体はプラ スチック製。23×11×13cmと、トランジスタラジオ並のコンパクトなケ ースに収まっている。おそらく1960年代の製品と思われるその外観は、レト ロそのもので、未来世紀ブラジルに出てくるようなグッドデザインである。 アメリカ、シカゴの製造。定格は117V/35Wだが、日本の100Vの AC電源でも問題無く動作した。前面パネル中央にモトローラ社のロゴマークが 配置され、左に電源スイッチ兼ボリュームツマミを、そして右側に選局ダイアル を配置したシンメトリカルなデザインとなっている。金色の地に「MOTORO LA」の文字が入ったプレートの一部が吹き出しのようになっていて、そこが選 局周波数を示すという凝った部分も見受けられる。とにかく、当時の日本製品に は絶対に真似できないオリジナリティと存在感がある製品だ。
裏蓋にはプラスチックの棒状アンテナが搭載される。使用真空管は、35W4 50C5、12BE6、12BA6、12AV6といったラインナップ。日本で も馴染みの深い型番が使用されている。裏蓋は3個のネジによって固定されてお り、内部は小型化のため、部品はかなり密集して実装されている。細かい所にも デザインが行き届いており、電源プラグの装飾もなかなか凝ったものになってい る。現代でもレプリカを出せばかなりウケると思われるような製品だ。筆者の真 空管ラジオコレクションの中でも特に気に入っているものの一つである。