■ マルス端末の操作パネル ■


マルス端末の操作パネル(表面)

マルス端末の操作パネル(側面)

マルス端末の操作パネル(新幹線のページ)

                                    
 この操作パネルは、40歳以上の方ならば見覚えがあると思う。その昔、国鉄
時代に、列車の座席指定席発券システムに使用されていた「MARS(マルス)
」端末の操作パネルである。なぜ筆者の我楽多の中にこのようなディープで鉄っ
ちゃん系のモノがあるのかは不明。しかし、なかなか世に出てこないシロモノで
あることだけは確かだろう。                       

 MARS(マルス)とは Magnetronic Automatic Reservation System の略称
だそうだ。筆者は鉄道マニアでは無いが、興味があったのでこのシステムについ
て調査してみた。国鉄〜JRの列車座席予約システムは、ざっと下記のように発
展してきたようである。                         

 ・1960年以前                           
  電話と台帳による予約の時代                     
  駅から指定席管理センターへ電話をかける。センターには丸テーブルに台帳
  が何冊も載っており、係員がこれに記入して駅に電話で結果を知らせる。駅
  では予約が取れると、座席指定券に番号を手書きして客に渡す。     
 ・1960年 MARS1稼動                     
  コンピューターによる座席予約システムの試作機を完成。東海道線のこだま
  号4列車を対象に運用を開始。                    
 ・1964年 MARS101                     
  プログラム内蔵方式による本格的な発券システム、MARS101を稼動。
  この端末では、予約だけではなく発券も自動的に行うことができた。   
 ・1965年 MARS102                     
  みどりの窓口のサービス開始に合わせ、MARS101の機能をバージョン
  アップした102を稼動。1964年の東海道新幹線の座席予約にも使用。
 ・1968年 MARS103                     
  中央演算処理装置を、それまでの大型専用機から汎用機に変更した。   
 ・1969年 MARS201                     
  汎用タイプライター型の端末装置を導入し、大規模予約にも対応。    
 ・1972年 MARS105                     
  新幹線の博多延長、東北・上越新幹線の開業に合わせてバージョンアップ。
  予約期間が延長され、乗車券の同時発行が可能となったモデル。     
  1975年にはMARS150、MARS202も運用を開始。     
 ・1985年 MARS301                     
  指定券・普通乗車券・定期券から、回数券・Qきっぷ・ワイド周遊券等の特
  殊乗車券や団体・企画商品等までを扱う旅客販売総合システムを提供。  
 ・1993年 MARS305                     
  超大型コンピュータ2台で構成。                   
 ・1997年 MARS305                     
  CPUを超大型汎用パラレルコンピュータへシステムを移行。      
            (参考:鉄道情報システム株式会社 マルスの歴史)
国鉄時代の信越本線横川〜軽井沢間

国鉄バスのページと操作棒

                                    
 ここに掲載した端末は、おそらくMARS105、MARS150あたりのも
のではないかと思われる。操作パネルはみどりの窓口に設置されていたもので、
座席予約を行いたい列車の乗車区間を指定するもの。アルミで出来たパネルが本
のように綴じられており、ページを開いて乗車駅、下車駅を指定するようになっ
ている。各ページがアルミ製で、しかも金属の土台にしっかりと固定されている
ため、持つとズッシリ重い。駅の指定はプラスチックの棒を穴に挿し込んで行う
ようになっている。ページの端には「0」〜「18」までのタブが付いており、
また各ページには路線名を示すシールが添付されている。          

 アルミ製ページを綴じている部分には、マイクロスイッチが埋め込まれており
どのページを開いているかが電気的にわかるようになっている。開いたページと
プラスチックの棒を差し込んだ穴で、マトリクス的に場所を確定している。原始
的ではあるが確実な方法と言えるであろう。駅名を示すシールは、路線別に色分
けされており、なかなかカラフルである。しかし、多数の駅の中から瞬時に選び
出すのには、やはり熟練が必要だったと思われる。             
綴じ目部分に配置されたマイクロスイッチ

MARS本体裏面の基板

                                    
 この操作パネルは入力部のみなので、パソコンで言うと、さながらキーボード
と言える。裏側には簡単なロジック基板が搭載されており、ここで信号を処理装
置本体へフラットケーブルを介して伝達している。基板にはTI社や日立のTT
LーICが搭載されている。どれも138や74といった簡単なロジックで占め
られている。搭載されているデバイスを下記に示す。            

 TI:TL820CN、UA733CN                 
 日立:HD74LS164P、HD74LS138P、HD74LS14P 
    HD74LS74AP、HD74LS86P、HD74LS38P  
    HD75452                         

裏面基板上のIC群

ICのアップ #1

ICのアップ #2

                                    
 操作パネル面には「国鉄バス」の表示も見える。また軽井沢〜横川間もしっか
りと記載されている。新幹線は東北新幹線が盛岡止まりである点以外は、現状の
ものと同一だ。こうしてパネルに示された駅名を辿るのも、なかなか面白い。 
日立製作所製造を示す基板上の捺印



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