■ 知慧定規 ■


知慧定規パッケージ表面

知慧定規パッケージ裏面

                                    
「栗田商会」というところが発売した図案作成定規、その名も「知慧定規」。 
購入時期は不明であるが、取り扱い説明書に旧漢字が用いられていることから、
おそらく昭和20年台の製品と思われる。発売当時の価格であるが、パッケージ
裏面に「標準形¥100」と記載されている。この製品も、筆者押入れから発掘
したもの。紙のパッケージは日に焼けて黄色くなってしまっている。     

知慧定規本体

                                    
知慧定規本体は、一見何の変哲もないセルロイド製三角定規のようである。しか
し、良く見ると底辺部分に穴が空いており、放射状に目盛りが刻印され、タダの
定規でないことが判別できる。まさに、取り扱い説明書が無ければ手も足も出な
いといった代物だ。製造元の栗田商会は、よほどこの定規の開発にアタマを使っ
たものと思われるな。コンピューター無き時代の産物と言えよう。      

知慧定規取り扱い説明書 #1

知慧定規取り扱い説明書 #2

                                    
さて、その取り扱い説明書であるが、A3サイズの用紙両面に代表的な使用方法
が記載されている。表面は基本的な使用方法で、円の描き方から始まり外角法に
よる正多角形の描き方まで、いろいろな方法が記されている。知慧定規の使い方
は、コルクなどの柔らかい板の上に紙を画鋲で止め、その上に定規を針で固定し
て用いる。三角形の長辺にあいた穴に針を立てて固定し、違う穴に尖った鉛筆を
立てることで、色々な図形を描くというワケ。説明書裏面には、応用図形と題し
てこの定規を用いて作成した図案が掲載されている。            

使用方法が複雑なので、当然この取り扱い説明書だけでは複雑な操作を習得でき
ない。そこで、別売りとして「基本図形八種要議」と題する64ページの冊子が
用意されていたようだ。面白いのは、この取り扱い説明書に記載された注意事項
の欄である。以下、抜粋して掲載してみよう。               

【注意事項】                              
この図法は応用無限にていままでに判つているだけの画き方を講義録にすると 
千五百ページにも成る程故この解説を記憶してから、色々と画いて研究しながら
使ふと面白いことが出来る、そして常に知慧定規を使つて居るとしらぬ間に発明
や工夫が出来るチエとチカラがついて来る。                

・・・というわけなのであるが、1500ページという数字がいったいどこから
出てきたのか、結構謎な部分も多い。まあ、そこがまたおかしいところなのであ
るが。しらぬ間にチエとチカラが付くという表現も、なかなか趣きがあるな。最
近の商品には絶対見ることのできない、秀逸な「注意事項」だと言えるだろう。



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