旧ソ連製手回し計算機フェリックスM

■旧ソ連製手回し計算機のお話し (1999/08/20)

●1999年08月20日(金曜日)
 去る08月06日(金曜日)に、新宿はダックビルというロシアカメラ専門店で、ロシア(旧ソ連)製の手回し計算機という珍品を1万円でゲットした。ダックビルは新宿西口大ガード近辺の、超アヤシイ雑居ビル3Fにあるロシアカメラの専門店であり、ちょっとカルトなカメラマニアの方には有名なショップだ。その虚飾を取り払った簡素な店内には、ゾルキー、キエフ、フェド等といった現地直輸入の旧ソ連製カメラとレンズが整然と並び、傍らの床にはロシア製の茶色いカメラケースが山と積まれているお店なのである。先日、ここを訪れた柴隠上人 稀瑠冥閭守(Kerberos)氏は、世にも珍しい旧ソ連製の手回し計算機「フェリックスM」を発見し、連絡を入れてくれた。手回し計算機と聞くと黙ってはいられない。今まで収集したコレクションに加えるべく、さっそく買い出しにと出かけた。

 モノが手回し計算機であるので、大変に重いことが予想された。従ってこの日はBEATを出す。ダックビルは過去数回行ったことがある。今日は金曜日ということもあり、店内は比較的空いていた。お目当ての計算機は、カメラのショーケースの前に一台だけポツンと展示されていた。


旧ソ連製手回し計算機フェリックスM

 この計算機はオドナー式といわれる最も一般的なタイプで、置数部の桁数は9桁、結果表示窓は13桁である。日本のタイガー計算機と比較すると横幅が若干短い。これは置数部の桁数が少ないからである。手回し計算機の中でもコンパクトな部類に属すると言えよう。外観の色は非常に寝ぼけた水色で、「フェリックス」のロゴがキリル文字で入る。日本で良くみかけるタイガー手回し計算機と異なるところは、結果表示桁のクリアレバーが、このマシンでは蝶の羽根みたいな取っての付いたダイアル式になっている点くらいだ。

 店長さんに購入の意志を告げると、勝手にいじくり回していいから、自分の手で調子を見てくれという。そこでガシャガシャ回してみたのであるが、特に問題も無いようなので購入してきた。実は店内の奥の方には、これと同型の計算機が5台もころがっていたのである。店長さんの話しでは、ロシアから全部で6台送られてきたそうなのだが、梱包と呼ばれるものが全く施されておらず、ただ単に一台ずつ新聞紙でくるんだだけだったそうだ。その結果、6台中5台は輸送中互いにぶつかり合って潰れてしまい、残った1台だけが何とか外観を保っていたとのことであった。

 この計算機もつい最近まで現役で使用されていたようである。しかし、さすがに電卓が普及したため、近年になってロシアから大量の手回し計算機が骨董品として流れ出したそうである。これらは主にアメリカに輸出されたとのことだった。いずれにしても、キリル文字が入ったオドナー式手回し計算機というのは初めてである。この次は恵比寿のリサイクルショップで見かけたキリル文字のアンティック・タイプライターでも購入しとうかと考えている。

【2014年の追記】
当時ロシアカメラに凝った方にとって、ダックビルはその手のお店として有名であった。上述したように、このお店は新宿駅大ガード付近の雑居ビルに入っていた。このビルのテナントが、何ともアヤシイ。しかも、ビルの造作が古く、階段室から各階へと通じる扉は、潜水艦に使われているようなものすごくゴッツいものなのだ。
ロシアカメラの品揃えは豊富だった。店主はいつも細めに開けた窓までカメラを持って行き、新宿の高層ビルを見ながら、無限遠でのファインダーの連動距離計調整を行っていた。当然、客連中も判で押したような廃人ばかりで、居心地は良かった。
その後、いつの間にかなくなってしまい、寂しい思いをしたものだ。




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