1997年04月号:波多 利朗のFunky Goods
残された最後の(?)謎パ~機 Poqet PCの逆襲! 地の巻



 波多 利朗の Funky Goods連載再開の第2回目。シーラカンス的謎パーPoqet PCの紹介の後編である。今回は、活用編として日本語FEPの導入と通信環境の構築について解説した。執筆当時、Poqet PCで動作する市販FEPは報告されておらず、フリーの「鳳」しか知られていなかった。このFEPは、演算星組という会社が販売していた「風」という日本語FEPにルーツを持つ。この製品はかな漢字変換に「超多段シフト方式」というユニークな方式を採用しており、これは「鳳」にも引き継がれている。「風」から「鳳」に至る紆余曲折は記事本文に詳しいが、複雑な事情のために「鳳」のインストールには若干込み入った手順が必要だった。

 「鳳」の超多段シフト方式は、通常のFEPとはかなり異なっており最初はかなり戸惑うが、慣れるとそれなりに使えるものだった。なにより占有メモリが僅か25KB程度と極めて小さいという特長があり、メモリリソースが限定的なパームトップPCには適していた。

 本稿では、Poqet PCの通信環境の構築についても紹介している。パソコン通信用のソフトとして、KmTermXとULTMのインストール手順を解説したが、いずれも若干の制約はあるものの上述の「鳳」を用いて日本語の入力が可能である。

 最後に、インターネット接続についても解説した。さすがにWebサーフは無理だが、e-mailの送受信であればPoqet PCでも可能なのである。PPPパケットドライバとしてEtherPPPを、インターネットメール閲覧ソフトとしてD-Mailをインストールすれば比較的容易に環境を構築することができる。ただしメインメモリが512KBしかないPoqet PCでは、これらを起動すると空きメモリはたったの115KB程度となってしまい、FEPとして上記の「鳳」を用いてもメモリ不足のためエディタの起動は不可能であった。そこで前編で紹介した簡易エディタのPEDを用いることにより、日本語メールの送受信を可能にする方法について紹介した。

 こうして振り返ってみると厳しいハードウェアリソースの中でも様々なフリーソフトを駆使することにより日本語環境の構築はもとよりインターネットメールのやりとりまで可能であったことに改めて驚かされる。様々な制約の中で艱難辛苦を乗り越えて通信環境を構築するというのが、当時の廃人たちの密やかな愉しみだったのである。




(補記)
 本稿執筆時点では、Poqet PCで利用可能なFEPとして「鳳」しか知られていなかったが、その後、アシスト社が販売する「アシストワード」に添付されている日本語FEPである「EG-Bridge」が利用できることが明らかになった。これについては、本誌1997年6月号の本連載で紹介している。