1994年12月号:波多 利朗のFunky Goods
Microsoft MACH20



 波多 利朗のFunky Goods連載の第9回目。レトロアクセラレータの世界<その2>である。前回はNickel Expressという珍品を紹介したが、今回のMicrosoft MACH20も相当「変」である。これは、あのMicrosoft社が発売したXTマシンを80286-8MHz相当のスピードにアップするという、当時としては極めて強力なアクセラレータであった。この商品は、秋葉原のA-PAC地下アウトレットで、8千円で購入したものである。プロサイドが経営するA-PACは、当時最も怪しく面白いショップであった。特にバナナの貯蔵庫を改造したという地下アウトレットには常軌を逸したジャンクが並び、目を離せなかったものである。特に、この地下に置かれた「廃人の棚」は、ネットのフォーラム上でも話題になった。

 MACH20であるが、本体はXTバスのカードであり、80286CPUやキャッシュメモリ、80287コプロセッサ装着ソケット等が搭載されている。この本体から出ているケーブルを、XTマザーボードの8088 CPUソケットに差し込めば、インストールは終了する。後は、キャッシュコントロールソフト等のドライバを導入する。結果であるが、オリジナルのXTと比較して、約3.78倍という好成績であった。なかなかすぐれもののアクセラレータと言えるであろう。




 本誌の特集記事は、「謎のパームトップ機日本語化計画」であった。この特集は、PC WAVE誌上でも傑作の部類に入る特集であった。「謎ぱ~機」という言葉が出現したのもこの特集の後である。登場したパームトップ機は下記の通り。

 筆者が「モバイルコンピューティング 手のひらサイズの端末入門」という本を書 くきっかけとなったのも、この特集記事があったからである。それほどインパクトを持った名特集であった。

 業界関連のニュースとしては、AMDがK86マイクロプロセッサ・アーキテクチャを公表した。Appleのシェア縮小が一向に改善されず、買収の噂が絶えなかったのも、この頃である。Maxtor社が、PCMCIA Type-IIのATAカードを開発したと発表した。容量は85MB と121 MBの2タイプであったが、Newtonの日本語版「ガリレオ」の発売が延期となり、事実上国内発売を断念することになった。3Dゲームの傑作、DOOM IIのリリースが発表され、前注文が50 万本にも上っている。

 新製品では、POWER9100搭載のビデオカード、Viper Pro Video PCIが登場している。秋葉原のショップ、AZ'TECでは、パームトップパソコンのベストセラー、ME-386を89,800 円で販売開始した。

(補記)
 本号はPC WAVE誌上最も話題を呼んだとも言われる特集、「謎のパームトップ機日本語化計画」が掲載された記念すべき号であった。この特集の名称から「謎ぱ~」という造語が発生したのだ。もっとも編集部では特集の名称を当初「ポケットPC/PDAの日本語化計画」と予定しており、謎のパームトップという言葉は入っていなかった。このタイトルがそのまま使われてしまっていたら、謎ぱ~という言葉は生まれなかったのかもしれない。いずれにせよ、謎ぱ~という言葉を命名した人は、かなりのセンスを持っていると言えよう。