2004年夏号:しつこく続く濃い系Psionの世界 #6
Psion MC400とPsionの周辺機器について



 前回のAgendAの記事を挟んで「濃い系Psionの世界」も6回目である。さすがにこれだけ続くと編集部から「しつこく続く」という枕詞を付けられてしまった。

 今回は、Psion MC400を取り上げた。1989年登場のラップトップマシンである。以前の記事で紹介した同じシリーズのMC600は、MS-DOS Ver3.22搭載のマシンであったが、このMC400と、その廉価版のMC200には、Psion純正のマルチタスクOSとGUIが搭載されている。このOSとGUIシステムは、当時としては極めて先進的なもので、後のEPOC-OSとその洗練されたGUIの基礎となった。

 意欲的な製品であったにも関わらず、MC400は商業的には成功しなかったようだ。筆者が考えるに、優れたOSとGUIを搭載しながら、その上で動作するプログラムを開発するための情報が十分に開示されなかったことが最大の原因だろう。とりわけグラフィックスやイベント処理についての詳細が非公開であったため、サードパーティーによるプログラム開発が事実上不可能なのが致命的だったと思われる。Psionマシンの日本語化では毎度お馴染みの柴隠上人稀瑠冥閭守(Kerberos)氏も、専用日本語エディタのプロトタイプまで作成したものの、上述の理由により公開を見合わせざるを得なかった。因みに、Psion Series3などに搭載されたEPOC-OSでは、C言語による開発環境と3冊から成る分厚いマニュアルが提供され、商用、フリーを問わず数多くのプログラムが開発されることとなった。

 今回は、Psionマシン用の周辺機器二つについても紹介している。Series3用外付けFDDユニットのCyclone Driveと、Organiser-II用のEPROMコピーツールである。両方とも今となってはかなりのレアアイテムだが、特に後者は、まるで試作品のような代物で、怪しさ満点の小物だ。前フリは、筆者が密かに凝っている黎明期のレトロテレビゲームを取り上げた。シンプル極まりないゲームばかりだが、妙に癒やされるのである。






Psion MC400
PsionのMobile Computer Series、MC400。1989年の発売ながら、GUIを採用した先進的なモバイルPCであった。しかし筐体は、かなりでかくて重い。

MC400(右)とMC600(左)
この二機種は、兄弟関係とも言えるが、仕様面では全く性格が異なる。MC400はPsion純正マルチタスクOS搭載のGUIマシン、MC600の方は「あの」MS-DOS Ver3.2を搭載した謎パ~もどきマシン。

MC400(手前)とMC600(奥)
本体形状、ロゴプレートの位置等、外観はほとんど同じである。わずかにモデル型番の記載のみが異なっている。

キーボードの比較
MC600 (左)とは異なり、MC400(右)には大きなタッチパッドが搭載されている。また、キー配列も微妙に異なっているのが判る。キーボードは、両方ともストロークが深く、極めて押しやすい。

「Psion」キーとキーパッド
Psion純正マルチタスクOS搭載の証である「Psion」キー。DOSマシンのMC600では「Alt」キーが配置されている位置である。キーボードの奥には、大きなキーパッドが配置されている。

MC400のSSDスロット
本体左右のスロットにそれぞれ2枚ずつ合計4枚ものSSDを搭載可能。そのうち左側の上スロットには、SYSTEM DISKを挿入して使用する。スロット手前にはバックアップ電池ホルダーが見える。

MC400のSYSTEM DISK
これを無くしたり、フォーマットしたりすると、MC400が起動できなくなるという大切なSSD。128KBのFLASH SSDで、「DO NOT FORMAT」と書かれている。SYSTEMは、Version 1.0。1989年製造。

I/Fモジュール
本体背面のボタンを押すことでモジュールごと取り外すことが可能。本機に搭載されていたモジュールは、RS232 SerialとPrinter Parallelポートモジュール。

本体右側スロットの比較
上がMC400、下がMC600。MC400にはスピーカ、マイク等音源関係のコネクタが並ぶ。一方、内蔵音源を持たないMC600は、外部モニタ出力コネクタとなっている。

MC400のバッテリ
MC600と同様、8本の単3乾電池もしくはNi-Cd充電池で動作する。電池の格方法もMC600と同じくマニアックな仕組みとなっている。

MC400の起動画面
起動画面は大変シンプルで、画面上部にはコマンドバーが、下部にはシステムウインドウが表示される。

複数のアプリケーションを実行
CPUが低速であるため、動作は若干緩慢だが、このように複数のアプリケーションをウィンドウオーバーラップで開くことが可能である。1989年当時としては、画期的なGUIだったと思われる。

My Psionのダウンロードページ
簡単なユーザ登録(無料)でPsion関連のアプリケーションソフトがダウンロードできる。Old Psionユーザは是非活用していただきたい。画面は、PsiWin Version 1.1のダウンロードページ。

PsiWin Managerの画面
Windows XP上で動作するPsiWin Managerの画面。ドラッグ&ドロップで簡単にファイルのやり取りが可能。筆者は、安定しているPsiWin 1.1を使用している。

日本語エディタ「MCEdit」β版
このような超マイナーマシン上でも日本語入力が可能。作者は言わずと知れた廃人、柴隠上人 稀瑠冥閭守 (Kerberos)氏。画面は超β版ながら、きちんと日本語が表示されている。世界初だろうな...きっと...。

Cyclone Driveの商品構成
FDD本体、ACアダプタ、専用接続ケーブル、ドライバFD、取説が含まれる。Psionの周辺機器としては、極めて珍しい製品だ。

Sienaに接続したCyclone Drive
SSDスロットさえ持たないSienaに、外付けFDDを接続するの図。小さなSienaと比較すると、Cyclone Driveの大きなこと!

Siena画面上のCyclone Drive
Siena上では、Aドライブとして認識される。デバイスドライバがインストールされると、Sienaの画面上の「IMG」アイコンに「Cyclone」が追加される。

Organiser-II用メモリアダプタ
Psion用の怪しい周辺機器。何のことはない、Organiser-IIのメモリパックスロットに装着し、汎用のEPROMを使えるようにするアダプタである。

メモリアダプタの接続状況
Organiser-IIとは、このようにスロットを介して接続する。しかし無骨というか何と言うか...。すごい製品ではある。

メモリアダプタ上のEPROM
アダプタ部分には製造元の会社名が記載されるのみ。品名すらも書かれていない。まるでプロトタイプだ。

正和VIDEO ATTACK
赤と白の配色がレトロな「VIDEO ATTACK」。昭和52年発売の製品。

TOMY TV FUN MODEL 501
3種類のゲームが楽しめるトミーのゲーム機。昭和52年発売。

TOMY TV FUN MODEL 701
TV FUN MODEL 501の上位バージョン。ジョイスティック搭載モデル。昭和52年発売。

任天堂ブロック崩し Model CTG-BK6
昭和54年発売のブロック崩し専用マシン。オレンジ色のボディが郷愁を誘う。

エポック社 システム10
妙に丸っこくてセクシーな形のエポック社システム10。昭和52年の発売。

エポック社 カセットビジョン
カートリッジ交換式テレビゲームの名機。昭和56年の発売。

エポック社 テレビベーダー
アーケード版を期待して購入し、がっかりした人も多かったエポック社のテレビベーダー。昭和55年発売。