2003年夏号:濃い系 Psion の世界 #3
Psion MC600



 前回の記事の最後で、次回はPsion Organiserシリーズを取り上げると予告したが、急遽テーマを変更することとなった。かねてから探していた希少端末のPsion MC600が入手できてしまったのである。

 PsionのMCシリーズには、MC200、MC400、MC600の三機種があるが、その中でも今回取り上げるMC600は、際立った特徴を持つマシンだ。他の二機種が、Psion純正のEPOC-OS搭載機であるのに対して、MC600は、何とMS-DOS Ver3.22をROMで搭載しているのだ。しかも液晶画面はCGAで、スペック的には、立派な謎パ~機なのである。Psion製のDOSマシンという何やら自己矛盾したかのような「変態的」製品について、一日も早く誌上で紹介したいと謎パ~ライターの血が騒ぎ、緊急特集として取り上げることにした次第だ。

 もっともPDAを発売する以前から、Psion社は様々な端末用のソフトウェアを製造販売しており、その中には、1986年に発売された「PC-FOUR」というPC DOS上で動作するビジネスアプリのパッケージも含まれている。決してDOSと無縁な会社だった訳ではないのである。こうした経緯もあってか、MC600は、大変完成度の高いマシンだった。キーボードの品質などハードウェア的にもしっかりとした造りとなっており、筆者お気に入りのマシンの一つである。ただし、日本語化には少々手を焼いた。謎パ~機の日本語化で一般的に用いられるドライバ等が動作しなかったのである。このあたりの試行錯誤も、今となっては懐かしい思い出だ。

 様々な特徴を持つ珍しいマシンの紹介となったため、今回は、前フリのためのスペースが無くなってしまった。その代わりという訳でもないが、記事の最後では、MC600で動作する各種のCGAゲームについて紹介している。画面サイズが大きいので、懐かしのCGAゲームをプレイするのにも適したマシンなのである。






Psion MC600
これがPsion製MS-DOSマシンのMC600。A4ノートPCほどのサイズでかなり大きい。VGAのように見える液晶画面は、実はCGA。

Psion MC600上面
PDAで見慣れたPsionのエンブレムと、「MOBILE COMPUTER MC600」の文字が見える。持ち運びを考慮した取っ手付き。

本体裏の銘板
1990年製であることがわかる。簡単なスペックも記載されており、「768K BYTE RAM, 256K BYTE FLASHDISK & 1MBYTE RAMDISK」といった記述が見られる。

Psion MC600のキーボード
十分なキーピッチとストロークを持つキーボードは、高速タッチタイピングにも適しており、非常に使いやすい。この製品の最大の特長である。

キーパッドとステータス表示
本体右側には、液晶濃度調整用ボタンなどの制御キーが配置されている。また、マシンとキーボードの状態を表示する小さな液晶ステータススクリーンも搭載されている。

バッテリーカートリッジ#1
本体右側の黒いボタンを押すと、単3乾電池が8本入ったバッテーリーカートリッジが取り外せる。カートリッジの脱着は極めて簡単で、良くできたメカである。

バッテリーカートリッジ#2
単3乾電池4本を一組とし、2段重ねでカードリッジに入れる様は、まるで弾丸を装填するかのようだ。マニア心をくすぐるニクい演出である。

サブバッテリの格納状況
これはマニュアルを見ないと絶対と言って良いほどわからない。本体右側の小さなレバーを持ち上げるとサブバッテリのCR1620が現れる。

SSDスロット
SSDは本体左右に2枚ずつ、計4枚挿入できる。このスロットは、DOSに上の論理ドライブとしてE~Hが割り振られる。

プリンタポートとRS-232Cポート
本体背面の左右のカバーを開けると、I/Oポート格納部が現れる。右側の格納部には、プリンタポートとRS-232Cポートが搭載されれいる。左側はダミーとなっており、後からオプションのポートを追加することが可能である。

ACアダプタ接続コネクタ
本体右側面に設けられたスリットカバーの中には、ACアダプタを接続するコネクタと外部CGAモニタ出力端子が収納されている。

外付けFDDユニット
MEMOREXのモバイル対応外付けFDDユニットが接続できる。このユニットは、内部にNi-Cd充電池を備えている。

パワーオンリセット直後の画面
起動直後に現れるBIOSのクレジット表示。

PSETUP(Psion Setup)の起動画面
標準ソフトとしてMC600にインストールされているPSETUP(Psion Setup)。マシンの各種環境設定を行うことができる。

バッテリモニタ BATMON
コマンドラインでBATMONを起動し、Ctrl+LCDキーを押すと画面上にバッテリモニタ画面をポップアップ表示させることができる。かなり詳細な状況を表示してくれるので便利なツールだ。

ブートオプション画面
マシン起動時にAltキーを押し続けると、この画面に入ることができる。6種類のブートシークエンスを選択することが可能で、日本語化を行う際には大変便利な機能である。

モード70hで構築した日本語化画面
disp.sysのモード70hを使用した画面。80文字x12行表示となっており、フォントは全角16x16ドットを用いている。老眼モードとも言える大きくて見やすい画面だ。

EGBridgeの組み込み
エルゴソフトのEGBridgeとFEP起動キー変更ソフトのREMAPEGBを組み込んだ画面。この状態で日本語FEPを利用することができる。

モード70hでのVzの画面
表示情報量は少ないが、文字は大きくて見やすい。FEPはEGBridgeを組み込んでいる。

モード03hでのVzの画面ス
モード03hでは、80文字x25行を表示できるため、画面の情報量は大きい。文字は、若干細かくなるものの、よほどの老眼でもない限り、通常使う上では支障はない。

ファイル閲覧ソフトMIEL
DOSの世界では有名だったMIELも動作する。残念ながら同じく定番のFDは起動できなかった。

CGAゲーム#1 ロードランナー
あの懐かしのロードランナーも問題なくプレイできる。

CGAゲーム#2 Prince of Persia
このゲームも、DOS華やかなりし頃、それこそ鼻血が出るほどプレイしたものだ...。

CGAゲーム#3 Tetris
名作中の名作、テトリス。これを凌ぐ落ち物のゲームは、未来永劫、出現しないのではあるまいか。

CGAゲーム#4 Ishido
オリエンタルな雰囲気が独特なボードゲームのIshido。これはちょっとマニアックかも。

CGAゲーム#5 Life 3D
謎の三次元セルオートマトンシミュレータのLife 3D。これはさすがにカルト。