2001年秋号:永遠の名機 Psion Series3



 これまでDOSベースの謎ぱ~機を紹介してきたが、本稿で初めて独自OS搭載マシンを取り上げた。大英帝国製PDAメーカーの雄として名を馳せたPSION COMPUTER PLCのPsion s3である。この端末は、1991年に登場し、その洗練されたフォルムと操作性で、欧米を中心に大きな反響を呼んだ。独自OSのためDOS/Cによる日本語化が不可能だったこともあり、日本での知名度は低かったが、日本語でメモを作成することが可能なフリーウェアの登場で、一部のマニアの注目を集めることとなった。グラファイト製の二枚貝を思わせる優れたデザインに一目惚れして、海外のショップから個人輸入した廃人も少なくなかったようだ。

 その後、1993年には、後継機種のPsion s3aが、1996年には、s3c、1998年には、s3mxが発売された。これらの機種では、液晶画面の解像度と階調が改善され、OSの機能強化や動作クロックの向上なども実現している。1997年には、筐体のデザインを一新し、OSを32bit化したPsion s5が発表され、日本でも大きな注目を集めた。

その後、Psion s5は、OSレベルでの日本語化が施され、PSION 5mx Proとなったが、つむじ曲がりの筆者は、どうもこのs5系のマシンが好きになれなかった。理由は単純で、サイズと重量が増加したのと、Windows CEを意識したかのようなタッチ操作のインターフェースを採用したのが気に入らなかったのである。妙な譬えだが、M型ライカよりもバルナック型ライカを好むマニアの気持ちに近いのかも知れないと思っている。

 今回の前フリは、ニキシー管時計を取り上げている。こうした製品に目がない筆者は、秋葉原のヤマギワリビナ館で売られていたこの高価な時計を衝動買いしてしまったのであった。本稿には「あとがき」も添えられている。自転車のギアチェンジを車のシフトパターンで行うというレトロ変態グッズの紹介だ。こんな携帯端末と何の関係もない話題をよく掲載させてくれたものだとMobile Press編集者の心の広さに今更ながら感謝するばかりだ。






Psion Series3のパッケージ
本体、取説一式、電池が含まれる。PCとの接続には別売りのケーブルとソフトのパッケージを購入する。

Series3の後継機種のS3a
液晶画面の解像度が向上し、より洗練されたGUIが搭載されている。

Psion Series3c
Series3aの後継機種であるSeries3c。液晶にバックライトが搭載された。外装のラバー塗装の感触を除けば良いマシンなのだが...

Psion Series3mx
Series3の最終バージョン。動作クロックなどの性能が大幅に向上した。

FIAT 500L
3mxの発売は、全面的にモデルチェンジされたSeries5の登場後だった。あたかもFIAT 500Lの後継機種の126の登場後に、旧モデルのRタイプが発売されたのと一脈通じるものがある。

Psion Siena
最も小型化されたPsion製PDA。日本では、ほとんど紹介されず、現在では激レアモデルとなっている。

Siena専用の外付けSSDドライブ
本体にSSDスロットを持たないSinaでSSDの読み書きを行うための外付けドライブ。レア度の高い製品だ。

Acorn Pocket Book II
PsionがAcornにOEM提供した教育用端末。Series3aがベースになっているが、キートップやロゴが異なる。内蔵アプリもカスタマイズされている。

Psion Series3の外観
筐体は、後継機種のSeries3aとほとんど同じに見えるが、表面の材質のグラファイトの結晶を思わせる質感はこのモデルならではだ。

SSDスロットのカバー
カバーを広げたところは、まるで昆虫が羽を開いたかのようである。ディテールのデザインにここまで凝った携帯端末は珍しい。

SSDカードのパッケージ内容
専用SSDカードのパッケージ内容。カードの厚みはかなりあるが、非常に小型軽量である。

バッテリー格納状況
単3乾電池2本を挿入する。端末を開くとバッテリー格納部分がスタンドの足のように迫り出す凝ったデザインとなっている。複雑な構造のため、ヒンジ部分は壊れやすいので取り扱いには注意が必要だ。

Series3のキーボード
ボタンタイプでクリック感に乏しいが、このタイプとしては押しやすい。上部には、内蔵アプリケーションの起動ボタンが配置されている。

Series3の液晶画面
GUIシェルの画面。解像度は低いものの液晶の品質は高く視認性は十分だ。

8ドット恵梨沙フォント版JEdit
Series3の狭いLCD画面を有効に利用できる8ドット版のJEdit。通常のメモを取るには十分な情報量である。

14ドット版JEdit
老眼モードとも言える14ドットフォントのJEdit。画面あたりの情報量は低いが、お年寄りには優しい表示となっている。

KARLSSONのニキシー管時計
磨き上げたアルミボディー上にニキシー管が6本林立しているというシンプルかつ合理的なデザイン。点灯していなければ時計とは思えない。真空管式ラジオと間違えられても不思議ではない。

点灯状態のニキシー管
暖かいオレンジ色の数字がボワッと浮かび上がる。輝度はそれほど高くない。今流行りの「癒やし系」時計とでも言えるだろうか。

ニキシー管詳細
数字の形をした電極が積層状に格納されている様子が良くわかる。まさに芸術品的デバイス。

本体背面
ACアダプタのコネクタ、12/24時間表示切り替えスイッチ、時分設定スイッチが実装されている。デザイン重視のためかスイッチ名称等の表示はなされていない。

MARUISHI SUPER-6
自転車のギアチェンジを車のシフトレバーのように行うという空前絶後の珍奇商品。シフト操作部と本体制御部からなる。1980年頃の製品と思われる。

シフト制御部
気分はまるで6速マニュアルミッション。ただしバックギアは無い。シフトストロークは短く、コクコクと小気味良く決まる。

制御部
自転車の荷台付近に取り付け、ワイヤーを変速ギアに接続する。電源は単一乾電池3本。本体上部にデカデカと書かれた「PC」の意味するところは不明。