FED社製カメラとして人気の高いモデル、ZARYA(ザリャ)は、FED2の廉 価版として、主として国内向けに発売されたものだ。プロトタイプは、 1958年にFED2 Type-dをベースとし、レンジファインダー部分を削除した 形でリリースされた。その後、1959年からは本格的な量産体制に入り、 1961年までの3年間に、14万台以上が製造された。この他に、1960年には ZARYA3というモデルのプロトタイプが制作されるが、こちらは100台とい う少量を製造したのみで終わっており、市場にはほとんど出回っていない ものと思われる。 このように、ZARYAは庶民向けの低価格カメラとして国内のみに発売さ れたモデルであり、製造台数が他のロシアカメラと比較して少ない。加え て、そのほとんどが使い潰されてしまっているため、現存する個体が少な く、今となっては結構レアなモデルであると言える。 上述したようにZARYAは製造コストを低く抑えるため、レンジファイン ダーが省かれている。そのため、距離は目測で合わせることになる。連動 距離計が省略された効果は絶大で、ZARYAを持ってみると、ロシアカメラ らしかぬ軽量さに、少なからず驚くことになる。デザイン的にも大変シン プルであり、カメラの原点とも言える製品に仕上がっている。シンプル・ イズ・ベストと言うが、このZARYAを使ってみると、その使い易さに感心 してしまう。実は、このZARYAは筆者のお気に入りのカメラなのだ。 掲載したモデルの製造番号は0043377。機能的にはシンプルなモデルで あるが、シンクロ接点はちゃんと搭載されている。ZARYAには標準でFED- Industar-26M、50mm/F2.8が搭載されていたが、ここに掲載したモデルに は、RUSSARと並ぶ広角レンズの雄、ORION-15、28mm/F6.0を付けてしてみ た。このパンケーキ形状のレンズは若干暗いのが難点ではあるが、その写 りは極めて満足の行くものである。ORIONレンズは1960年〜1964年の期間 に、KMZ社にて製造されたものだ。 また、ファインダーには、同じくKMZ社製のターレットファインダーを 搭載している。このファインダーは、あたかもリボルバー拳銃のように本 体を回転させることによって、28、50、135、85、35 mm のファインダー として使うことができるというスグレモノである。外観も奇抜で、ちょっ と目にはとてもカメラのファインダーとは思えない。なお、このターレッ トファインダーは渋谷のロシアカメラ専門店「King-2」で、17,800円にて 購入したものだが、視野が非常に明るくて使い良い。ちなみにシリアル番 号は 292972 であった。 ザリヤで撮影した写真には、アンダーパーフォレーションという特徴的 な現象が出ることがある。これは、撮影した画像がフィルム下のパーフォ レーション用の穴にかかってしまい、焼き付けると写真の下に黒い四角が 出てしまうというものだ。フィルム装填の際、位置が若干ズレてしまうの が原因で、ロシア製カメラの特徴と言うことができる。
メーカー | FED(フェド)社 |
モデル名称 | ZARIA |
製造期間 | 1959 - 1961 |
総生産台数 | 141,228 台 |
掲載モデルの製造年 | 不明 |
掲載モデルのシリアル番号 | 0043377 番 |
シャッタースピード | B、1/30、1/60、1/125、1/250、1/500 |
搭載レンズ | ORION 28mm/F6 |
搭載レンズのシリアル番号 | 730432 |
搭載レンズのマウント形式 | ライカ・スクリューマウント |