FEDという社名の由来は少々面白い。この名称は、ソヴィエト秘密警察 (いわゆるKGB)の初代長官、Felix Edmundovich Dzerjinskiの頭文字か ら命名されている。1926年のDzerjinskiの死後、ウクライナのハリコフ工 業都市に、革命孤児のための職業訓練学校が設立された。学校の名称は、 Dzerjinskiに敬意を評し、故人の頭文字を取ってFEDと命名される。これ がFED社の始まりというわけだ。 FED社最初のカメラは1932年に発売されたモデル「Original」だ。その 後、1934年にFED-1「Fedka」をリリースし、次いでFED Type 1aからType 1g に至る一連のFED-1シリーズが発売された。FED-1シリーズの発売モデ ルと製造台数の推移は、下記のようになっている。 FED Type 1a 1934年 - 1935年 約 6,000台 FED Type 1b 1935年 - 1937年 約 40,000台 FED Type 1c 1937年 - 1939年 約 70,000台 FED Type 1d 1939年 - 1945年 約 55,000台 FED Type 1e 1946年 約 6,000台 FED Type 1f 1949年 - 1953年 約200,000台 FED Type 1g 1953年 - 1955年 約400,000台 総 計 約777,000台
メーカー | FED社 |
モデル名称 | FED−1(type−c) |
製造期間 | 1937 〜1939 年 |
総生産台数 | 約 70,000 台 |
掲載モデルの製造年 | 1937年 |
掲載モデルのシリアル番号 | 56530 番 |
シャッタースピード | Z、1/20、1/30、1/40、1/60、 1/100、1/200、1/500 |
搭載レンズ | Industar-10(f3.5/59mm) |
搭載レンズのシリアル番号 | 1264 番 |
ここに掲載したFEDのシリアル番号は56530番となっており、FED Type 1c(55,000番〜125,000番)に相当する。製造年はおそらく1937年で、戦 前のモデルである。FED Type 1bとの相違は軍艦部の細かいデザインで、 シャッタースピード調節ダイアル付近のコーナーが、Leica IIIシリーズ と同じ処理となっている。実際、Leica III fと並べて比較してみると、 デザイン面での類似性が良くわかる。一方大きさはと言えば、Leica IIIf の方が若干大きい。この差は両者を並べて比較しなくてはわからないほど わずかなものであるが、底蓋を取り外して重ねてみると、良くわかる。 Leica III fの方が、横幅が3mm程度長く、高さが2mm程度高いのだ。 Leica IIIシリーズは、III bまでのボディは板金加工となっていたが、 それ以降の製品は軽合金ダイキャストを採用したため、以前と比較して長 さが3mm、高さが2mm大きくなっている。FED Type 1cは、Leica III b以前 のモデルをコピーしているため、比較するとこのように大きさが異なって いるのだ。 操作性はZORKIシリーズとほぼ同様だが、全般的にしっかりとできてお りZORKIシリーズのようなカチャカチャとした感覚は少ない。シャッター 音もフィルム巻上げ操作も本家Leicaに近く、造りが丁寧であることが伺 われる。軍艦部に刻印されたロゴとシリアル番号表示も高級感がある。シ ャッタースピードはバルブから1/500まで、8段階に設定可能。なお、開 放表示はBでは無くZとなっている。 搭載されているレンズはLeitz ElmarのコピーであるIndustar-10、50mm /F3.5。レンズのシリアル番号はマウントの裏側に刻印されており、1264 番となっていた。