■Texas Instruments TI−5100 TI−5100は、Texas Instruments社が1980年に 製造したデスクトップタイプの10桁電卓である。その外観は、同社のポータ ブルタイプの電卓とも良く似ており、デザイン的に洗練され、同時代の日本製 品とは一線を画したものとなっている。 TI−5100は、同社お得意のワンチップLSIを搭載した電卓で、電源 もACアダプタを使用し本体内部に電源トランス等の部品が無いため、極めて 軽くできている。本体外寸は19.5×19×6.5cmで、典型的なスペー スエイジデザインだ。10桁の青色FIP表示は大きくて見やすく、キーボー ドも深いストロークが確保されており、実用電卓としては極めて品質が良い。 通常の四則演算に加えて、定数計算、%計算、メモリ機能を搭載している。
写真4:TI-5100 本体側面 |
写真5:TI-5100 本体背面 |
写真6:TI-5100 本体裏面 |
本体裏側の銘版は、プラスチック筐体に直接エンボスで記されるタイプで、 製造国はアメリカ、シリアル番号は3754776となっていた。使用する ACアダプタの型番はAC9171で、入力電圧は120V。日本の電圧では 若干不足するものの、問題無く動作している。もっとも、電圧事情が悪い地域 では、このACアダプタでは使えないところもあるそうだ。銘版部分には「M TA1280」という表記があった。 本体裏側には修理履歴を示す銀色の捺印があった。「REPAIR 038 80 LTA」と記載されていたので、1980年に一回修理を受けているよ うである。基板を見ると、メインチップであるLSIのハンダ付けの部分が、 他の部分と異なり焦げていることから、どうやらメインのLSIチップを交換 修理した製品のようである。 AC9171 ACアダプタは1977年製造のTI製。入力電圧は120 VAC、60Hz、7W。出力電圧は12.5VAC、265mAとなってい たので、AC/ACコンバータのようである。DCへの整流は、本体内部の 3端子レギュレータで行っているものと思われる。
内部構造は至ってシンプル。TI社の電卓専用チップであるTMC1073 NLが1個搭載されているのみである。このチップは80年18週の製造でシ ンガポール製。その他使用されている部品は、電解コンデンサ、抵抗、ダイオ ード等である。 FIPモジュールは10桁+記号桁の構成で、NEC製造のもの。型番は FIP11B10。日本製造のものだ。基板番号は1036569−1。 Rev Aとなっていた。 アッセンブリは徹底的なコスト削減が図られており、基板も木ネジ2本でプラ スチック製の筐体に留められているにすぎない。キーボードとロジック基板と は直接ハンダ付けされている。この配線は、基板類をすべて筐体にマウントし た状態で行われたようで、こうすることでチリ合わせをしているようだ。確か にコネクタ類を使うよりはコスト削減につながっている。 ACアダプタの入力端子も、基板上からブラブラと浮いた状態であり、ケース に格納する際、固定するような構造となっている。アメリカ製電卓の量産技術 は、同時代の日本製品と比較して格段に洗練されていたと言えよう。