■Casio √121−E
カシオ計算機の√121−Eは、1973年頃に発売されたルート計算機能が
付いた電卓である。製品名称にわざわざ「√」記号を付けるところなど、当時
いかにこの機能が画期的であったかが伺われる。外観はModel 101シ
リーズとほぼ同じプロポーションであるが、上面パネルがグレーになっている
部分が大きく異なっている。個人的には、この配色はあまり好きになれない。
黒のベースにシルバーの上面パネルという従来構成の方が、ストイックな感じ
がして気に入っている。
表示は12桁で青のニキシー管が用いられている。ニキシー管は7セグメント
タイプの後期型で、「0」は下半分に表示される、いわゆる下付きのゼロ表示
となっている。本体の寸法は幅18cm×奥行き20.5cm×高さ6cm。
電源はACのみでバッテリー駆動はできない。
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写真3:Casio √121-E 本体正面 |
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写真4:Casio √121-E 本体側面 |
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写真5:Casio √121-E 本体背面 |
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写真6:Casio √121-E 本体裏面の銘版 |
√121−Eは、Model 101シリーズのケースをそのまま流用して製
造されている。従って、本体外観は101シリーズとあまり変わりが無い。
本体裏面の銘版には、シリアル番号として「B613044」、Q番号として
「Q9724」の表意がある。本体の消費電力は、約5.4Wとなっている。
本電卓の目玉機能であるルート演算キー「√」は、「÷」と同じキーにアサイ
ンされている。実際にルート演算を実行させてみると、数字が0.5秒ほど流
れた後に結果が表示される。当時のロジックでは、ルート計算にかなり付加が
かかっていたことが伺われて面白い。
電源コネクタは特殊仕様で、専用のAC電源ケーブルが無いと使えない。この
ケーブルは、他の101シリーズと共通となっている。
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写真7:Casio √121-E の内部構造 |
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写真8:Casio √121-E ロジック基板のアップ #1 |
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写真9:Casio √121-E ロジック基板のアップ #2 |
電卓の内部構造は、LSI3個、IC11個と部品点数的には若干多い。トラ
ンジスタは7個使用されている。基板はガラスエポキシ製で、後期製品にみら
れるようにベークライトを使用したコスト削減は行っていない。
本体ケースの内側には、48 10 15のマークがあった。おそらく昭和4
8年10月15日(1973年)製造を示していると思われる。なお、基板に
は72年の文字も見受けられ、設計自体は72年に行われたようである。
本体に使用されている部品は、下記の通り。
日立製 : HD32103P
日立製 : HN3259P
日立製 : HD3219P
東芝製 : TM4352P ×4個
日立製 : HD3213P ×3個
日立製 : HD3251P
日立製 : HD3226P
日立製 : HD3227P
東芝製 : T1191(ニキシー管ドライブ用コンバータ?)
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写真10:Casio √121-E のFL管表示 |
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写真11:Casio √121-E キーボードメカ部分のアップ |
ニキシー管は基板に直接ハンダ付けしたタイプのもので、1桁1管構成となっ
ている。表示桁数は12桁なので、12本のガラス管が並んでいる。左側には
オーバーフロー等を表示するランプが実装されている。前述した通り、ニキシ
ー管は後期型を採用しており、一見するとFLパネルのような感じを受ける。
表示は7セグメントタイプで色は青である。
キーボードのメカ部分は、カシオの同時代の製品と同じ磁気リレータイプを用
いており、押した時に「カチッ」という繊細な音がする。この時代のキーボー
ドとしては抜群の耐久性を持っており、いままで保存している70年代前期タ
イプのカシオの電卓には、チャタリングや接触不良は皆無である。