Panac JE-850 (1972年) |
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1972年製造のナショナル製8桁電卓、Panac JE-850。松下通信工業株式会社電卓事業部製造の製品である。 この電卓の特徴は、何といってもスペースエイジ感覚満点のデザインにある。たかが電卓と侮れないくらい、この造形はすごい。筆者は、数ある電卓の中でも、このJE-850は傑作中の傑作だと信じて疑わないくらい、惚れ込んでいる。表示部分とキーボード部分を上下に配置し、中央部分にくびれを持たせた形状は、セクシーですらある。ナショナルも以前は随分とオシャレな電卓を発売していたものだと感心することしきりだ。 キートップは全て楕円形のデザインで非常に深いストロークを持つ。キーは磁力リレー接点を使用している。表示は数字8桁+制御1桁の9桁表示で、桁別に分かれた7セグタイプの蛍光表示管を採用している。表示分のアクリルカバー越しに9本の表示管を見ると、思わずググっときてしまうほど魅力的だ。 電源はACアダプタ、乾電池、充電池の3電源方式を採用している。本体裏面下部には取り外し可能な電池室が搭載されており、標準で充電池ブロックと乾電池ブロックの2種類が付く。乾電池、充電池両ブロック共に、ACアダプタを接続するためのコネクタが設けられている。乾電池は単三型を4本使用する。乾電池の搭載方法は、Casio Miniのように極性の向きが同じになるように搭載する。 機能的には極めて単純で、四則演算のみの仕様となっており、メモリ機能は持たない。シリアル番号は電池室を外した本体裏面に貼付されており、本機はNO 2907531となっていた。本体裏側の銘版には、下記の表記がある。
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写真3.Panac JE-850 本体正面 |
写真4.Panac JE-850 本体側面 |
写真5.Panac JE-850 本体背面 |
写真6.Panac JE-850 本体裏面の銘板アップ |
写真7.Panac JE-850 本体裏面 専用Ni-Cdバッテリパックと単三乾電池アダプタの両方が使用可能 |
写真8.電源ユニット2種 左側が単三乾電池アダプタ、右側が専用Ni-Cdバッテリパック |
本体内部は極めて整理された構成となっている。表示部分とロジック部分は一つの基板で構成されている。メインとなる演算用LSIには、TI社製TMS0115NCが用いられている。LSIは28PinのプラスチックDIPパッケージで、1972年29週の製造。その他には蛍光表示管ドライブ用のトランジスタが18本、LSIの周りを囲むように配置されている。トランジスタは松下製で、2SA749が使用されている。表示管はプラスチック製のマウントに固定されてロジック基板上に搭載される。ロジック基板、表示管搭載基板共にガラスエポキシ製で、部品の実装密度は、当時としてはかなり高い。 ロジック基板とキーボード基板とは、簡単に取り外し可能なコネクタを介して接続されている。キーボード基板はKYOEI製のベークライト基板となっている。キーボードは磁石によるリレーを採用している。本体裏面のカバーにはYLMC44B 00100、表面のカバーにはYLMC45A 02900の捺印が見受けられる。1970年代初頭の電卓はコードがのたうちまわっている製品が多いが、このJE-850は極めて洗練された回路構成でコンパクトにまとまっており、設計の良さが現れていると言えよう。 ACアダプタには専用のJL-021という製品を使用する。このアダプタは入力AC100V、出力DC 5.2V、320mAの製品で、アダプタ本体には動作確認用の赤色LEDが付く。 専用の充電池ユニットはJL-032という型番で、単三タイプのNiCdバッテリーを4本使用する。因みに、充電パック使用時には約3時間、乾電池パックを使用時にはアルカリタイプで約5時間、マンガンタイプで約1.5時間の連続駆動が可能であった。マニュアルには、アルカリ乾電池として「ナショナルマロリーアルカリ単三乾電池」という記載がある。 本製品にはマニュアルが添付する。以下にマニュアルに記載されている定格を示す。
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写真10.Panac JE-850 本体内部 |
写真11.ロジック基板(左)とキーボードユニット(右) |
写真12.ロジック基板のアップ ロジック基板にはコネクタを介して蛍光表示管ブロックが接続される |
写真12b.演算用LSIのアップ メインとなる演算用LSIには、TI社のワンチップ製品「TMS0115NC」が用いられる |
写真13.ロジック/蛍光表示管ブロックのアップ |
写真13b.キーボードのアップ 楕円形のキートップが特徴的なキーボード。磁石式リレー方式で、ストロークは深い。 |
写真14.専用のACアダプタ、JL-021 |
写真15.Panac JE-850 パッケージ一式 |
写真16.Panac JE-850 元箱外観 |
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