■OMRON Type 800K 昭和46年(1971年)、電卓専用LSIの出現により、電卓の価格は大 幅に下落する。それまで30社以上のメーカーが200種類以上の電卓を発売 してきたのであるが、このワンチップLSIの登場により突如として電卓の戦 国時代が到来、瞬く間に淘汰が行われ多くの電卓メーカーが倒産していった。 オムロン800は、そうした低価格競争の火付け役となった電卓である。定 価が89,800円のビジコンLE−120Aと同等の機能を有した電卓を、 オムロンは49,800円で発売したのだ。これは世にオムロンショックと呼 ばれている現象であった。そして、昭和46年の暮れには、あの名機カシオミ ニの設計が開始され、電卓の小型化と低価格化はさらに激化することになる。 ここに紹介するオムロン800Kは、800シリーズの1品種であり、定数 計算機能を追加したバージョンアップモデルである。製造年についてははっき りとはしないが、おそらく初代800が発売された翌年の1972年(昭和 47年)であると思われる。
写真4:OMRON 800K 本体側面 |
写真5:OMRON 800K 本体背面 |
写真6:OMRON 800K 本体裏面 |
オムロン800Kは、いかにも70年代の電卓らしく、スペースエイジ感覚 に富んだスマートなデザインを採用している。キーボードも白と赤と青という ポップな配色で、30年以上前の電化製品とは思えない。大きさは21.7× 15.9×5.7cm。AC電源のみの駆動で電源トランスを内蔵しているが 持ってみると思ったより軽くでている。電源コードは専用のコネクタに接続す る。消費電力は5W。シリアル番号は604438となっていた。 緑色のFIP表示は電源を投入すると一番左側に「0」が表示されるタイプ。 この電卓には取り扱い説明書と保証書が残っていた。以下に仕様を示す。 ・形式 :800K ・キー :テンキー方式 ・桁数 :8桁 ・小数点 :完全浮動小数点方式 ・演算内容:四則演算、定数計算、べき計算、逆数計算 各種応用、混合計算 ・演算速度:0.10秒(最大)−−−加減算 0.25秒(最大)−−−乗除算 ・使用素子:LSI ・符号表示:オーバーフロー、負数 ・使用周囲温度:0℃〜40℃ ・電源 :AC100C±10% 50・60Hz(共用) ・消費電力:5Wmax ・重量 :約1.2kg
内部構造は良く整理されており、省コスト設計となっている。内部は、ロジ ック基板とキーボード基板、FIPモジュールそれに電源トランスの3つの部 分から構成されている。ロジック基板とキーボード基板およびFIPモジュー ルとは、専用のコネクタで接続される。 ロジック基板にはメインとなる電卓専用のLSIが3個と、FIPドライバ IC3個、それに電源部の整流回路が搭載される。使用されるデバイスは下記 の通り。 ・HD32104P 24Pin DIP ・HD32105P 24Pin DIP ・HD32106P 24Pin DIP ・TM4352P 16Pin DIP ×3個 ・2SC711 三菱製 ×4個 電卓専用LSIは日立製で、OMRONの特捺が入ったものである。基板の 回路構成は良く練れており、電卓回路としてはほぼ完成されたものになってい ると言えるであろう。電源としては、18V、32V、−9Vを用いていたよ うである。基板上には下記のシルク印刷があった。 800K−24402A DEC−8 72504831N FIPモジュールはISEという会社のDP82Aという製品。ロット番号 は00642となっている。表示は8桁+符号1桁の合計9桁構成で、緑色発 光である。キーボードは磁石によるリレー接点方式を採用している。そのため チャタリング等の誤動作は現在でも全く無い。キーは適度に重くストロークも あり押しやすい。キーボード基板上には下記の捺印があった。 TA−800K−18 L01372