■Panac Model JE−802 Panac JE−802は、前出のJE−800の後継機種かつ廉価版モデ ルであると考えられる。発売は1974年。デザインは先代のJE−800を 踏襲しつつ、コスト削減を随所に行っている。そのため、全体的に安っぽい感 じになってしまっている。JE−800に見られた工業デザイン的な美しさは それほど感じられない。また、JE−800では乾電池とAC電源の2電源方 式を採用していたが、このモデルではAC電源のみとなっている。このあたり も、コスト削減を重視した仕様であると言えよう。
8桁表示は変わらないものの、JE−800では桁ごとに独立した8セグ型ニ キシー管を採用していたのに対し、JE−802ではオレンジ色のFIP(蛍 光表示管)を使用している。FIPは完全にモジュール構成となっているので アッセンブリは容易になった。キーは、JE−800では電磁リレーを採用し ていたが、JE−802ではおそらくはゴム接点方式を使用している。そのた め、クリック感はグニョグニョした感じがあり、あまり良くはない。なお、本 体のシリアル番号は466017605Wであった。
本体内部を見ると、回路の集積化とコスト削減の様子が良くわかる。回路は主 に3つの部品から構成されている。メインとなる演算ユニットは、TI社製 28Pin DIPパッケージのLSI、TMS0115ANC。1974年 7週の製造となっていた。これは、JE−800で用いられていた、TMS0 101NCの改良版と思われる。JE−800ではディスクリート部品により 構成されていた表示ドライブ回路は、JE−802では完全にモジュール化さ れている。これは、IC6812、IC6816の2個のモジュールによって 構成されている。トランジスタはわずかに、2SC828×2本と2SA56 4×1本のみ。FIP表示の採用と、ドライバ回路のモジュール化の効果は大 きく、部品点数の大幅削減に寄与している。基板はベークライト製を採用して いる。また、基板をケースに固定する際、ゴムを使う所などにも、コスト削減 が伺われる。 電源はACのみで、電源コードは本体と分離することができない。電源トラン スは、先代と比較すると若干大きくなっている。面白いのは、JE−800が 消費電力3Wであったのに対し、JE−802は5Wと逆に上がっているとこ ろである。どう考えても、ニキシー管表示の方が、FIPより消費電力が大き いと思うのだが。。。理由としては、JE−800では乾電池駆動もできるた め、周辺回路も省電力化を行っていたが、JE−802はAC電源のみの対応 となったので、その辺の制約を考えなくても良くなり、コスト重視で消費電力 は気にかけなかったためとも思われる。 JE−800と比較して、より当たり前の電卓に近づいてしまったJE−80 2であるが、当時の熾烈な価格競争を考えると、デザイン等に凝ることもでき ず、致し方なかったのであろう。