■TOSHIBA HOMELAND 1211 TOSHIBA BUSINESS MACHINE製造の12桁オレンジ 色FIP表示タイプの卓上電卓。東芝ビジネスマシンとは、またいかつい名称 であるが、当時は○○ビジネスマシンという名称が流行ったようで、けっこう 見かけることがある。コモドールビジネスマシンというのも、その一つであろ う。機能面では、別途掲載したHOMELAND 1212Sとほぼ同等。使 用しているLSIも同じである。大きさは19.5×20×6.5cm。70 年代スペースエイジ感覚に富んだデザインは、PanacのJE−800や JE−802に通じるものがある。電源はAC100Vのみ、電源コードは着 脱可能タイプで、コネクタは特殊形状である。本機のシリアル番号は、 318335番。ルート演算機能とメモリ機能を有している。小数点の桁数は F、0、3、6に設定可能。 本機の正確な製造年は、本体に記載が無いため不明であるが、おそらくは 1973年(昭和48年)頃のものだと思われる。
写真4:TOSAHIBA HOMELAND 1211 本体側面 |
写真5:TOSAHIBA HOMELAND 1211 本体背面 |
写真6:本体裏面にある銘版のアップ |
本体裏面の銘版を見ると、TEAL(ティール)の文字が記されている。 おそらく、内部の電卓回路は、当時国内外のメーカーへ積極的に電卓をOEM 供給していた、東京電子応用研究所(ティール)製造のものだと考えれる。 TEAL(ティール)社は、昭和43年に電子機械振興協会卓上電子計算機分 科会会長が、タムラ電子の後援で設立した会社であった。電子立国日本の自叙 伝によれば、MOS−ICの導入により部品点数を削減し、またコンデンサメ モリの搭載により、安価な電卓を供給していたということである。国内では、 キャノン、東芝、日立へOEM供給を行っていた。末期の激戦で、国内の電卓 メーカーは相次いで倒産に追い込まれたが、TEAL(ティール)社はこれら 一連の淘汰の最終期、昭和53年1月に倒産した。最後の電卓倒産メーカーだ と言われている所以である。
本体内部の構造は比較的簡単で、三菱製の電卓専用LSIを3個使用してい る。型番はMA8603、MA8604、MA8605の連番で、いずれも 24 Pin セラミックDIPパッケージのカスタム品である。 FIPドライバは6826と記載されたモジュール1個で対応している。こ の製品は、FIPドライバ内蔵の電卓のシングルチップマイコンが出てくる直 前の製品であると思われる。基板はベークライト製で、表面に3031174 4の捺印がある。LSIの他には、2SC740(1個)、2SC371(3 個)のトランジスタと、M58802(16 Pin DIP−IC)が使用 されている。 FIP表示は完全にモジュール化されており、7セグ表示の「日の字」が 12桁+マイナス表示用ネオン放電管+メモリ表示用ネオン放電管で構成され ている。キーボードはメカニカルタイプで、クリック音は無い。コクコクとし た押しやすいタイプだ。