■SHARP ELSI−804 エルシーブランドのシャープ製電卓。70年代そのものといったグッドデザ インの製品である。本体の大きさは22.5×18×7cm。当時のデスクト ップ電卓としては若干小型といったところか。表示桁数は数字8桁+記号1桁 の計13桁構成。演算は四則演算のみのシンプルな設計である。 本製品の魅力は、なんといってもその形と配色だ。妙に丸っこいデザインは 高度成長期の日本の家電製品らしくて懐かしい。本体上面はアイボリーで底面 がエンジといった配色も、今見てもなかなかポップで素晴らしい。ボタンはこ げ茶色で、マイナスボタンのみ赤となっている。
写真5:SHARP ELSI-804 本体側面 |
写真6:SHARP ELSI-804 本体背面 |
定格は3W。シリアル番号は31009246となっていた。電源はACの みの単一電源で、バッテリー駆動はできない。表示部分に7セグタイプの蛍光 表示管を使用しているため、バッテリー駆動は難しかったものと思われる。 電源をONにすると、自動的にゼロリセットされずエラー表示となる。従っ て最初に行うことは、クリアキーを押すことだ。シャープの電卓のキーボード は、非常に重くコクコクとした感触なのが特徴であるが、この電卓はコスト優 先のためか、それよりは若干軽いタッチのものとなっている。しかし堅牢性は 損なわれておらず、30年近く経過した現在でもチャタリングは皆無だ。
本体内部を見ると、演算機能はほぼワンチップ化された構成となっている。 本製品の正確な製造年月日は不明であるが、使用されている部品から推測する と、おそらく昭和49年(1974年)頃の製品と思われる。 メインとなるチップは、シャープのロゴが入ったSD3276。「3C 0 32」という捺印が見られるが、製造年月は明らかではない。チップは28P inのセラミックDIPパッケージで、上部にメタルキャップのついた古風な もの。蛍光表示管表示ドライバICとして、東芝製TM4356Pを2個使用 している。20PinのプラスチックDIPパッケージである。このほか、東 芝製TD2007P(14Pin DIP)と日立製HD3253P(14P in DIP)がそれぞれ1個ずつ使用されている。 使用デバイスは、総計5個のICの他には集合抵抗が4個と若干のCRのみで 簡素な構成となっている。基盤はベークライト製。キーボードはメイン基板に 覆いかぶさるように配置されており、数字部分と演算記号部分とが分離された 構造となっている。演算記号部分のキーボードには、2個の使用されていない キーがあったが、これは機能拡張時の予備と考えられる。(おそらくはメモリ 機能搭載モデルのための設計と思われる。)
表示は7セグタイプの蛍光表示管で、1桁1本の構成となっている。発光色 はグリーン。9本の蛍光表示管は、メタルのフレームで固定されている。メタ ルフレームには、さらに4個の蛍光表示管を搭載する余裕があるので、この部 分は12桁電卓と共通の部品を使用していると考えられる。蛍光表示管はフタ バ製であった。なお、この電卓ではシャープに特有のあの独特な雰囲気を持つ フォントが採用されていない。古いシャープの電卓を見慣れた目には、少し寂 しい気もするが、汎用部品を使用する方が、おそらくはコストメリットがあっ たためと思われる。