■HITACHI ELCA 180A 日立が製作した8桁蛍光表示管電卓、ELCA 180A。AC100V電 源のみで駆動する。本体の寸法は18×10×4.5cmと、AC駆動・ニキ シー管使用のデスクトップタイプ電卓としては、かなりの小型化が図られた製 品である。最も、Panasonicが1972年に発売したポータブル電卓 JE−850は、ELCA 180Aと同じように蛍光表示管を搭載した8桁 電卓であったが、AC電源とバッテリー駆動の両方が可能であった。このこと から考えて、省電力化はPanasonicのほうが進んでいたとも言える。
写真4:HITACHI ELCA 180A 本体側面 |
写真5:HITACHI ELCA 180A 本体背面 |
写真6:HITACHI ELCA 180A 本体裏面 |
ここに掲載したELCA 180Aは、一部欠品がある。本体上面、ニキシ ー管表示の上の部分が開いているのだが、これは表示部分を覆うカバーが外れ ているため。本来ならここに開閉するカバーが取り付けられていた。 本体外観はいかにも日立製らしく、こげ茶色のボディーに黒いキーボードと かなり野暮ったい。作りはしっかりしているものの、無骨丸出しの製品といえ る。電卓用ワンチップLSIを搭載した初期の製品らしく、本体上面左側には コンピュータフォントで記された「HI−LSI」のマークが貼付される。 本体裏側には銘版と計算例を示したシールが貼付されている。銘版には、下記 の記述がある。 DESKTOP ELECTRONIC CALCULATOR TYPE KK FORM 180A WATT 3.5 VOLTS 100Hz 50/60 No.179393084 Hitachi,Ltd.Tokyo Japan ND195 電源コードは本体左横に設けられたコネクタに接続する。コネクタは2ピン の専用タイプ。電源スイッチは本体右横にある。小数点の制御は0、2、4の 3通り。定数計算機能「K」も内蔵している。キーボードはクリック感のない タイプであるが、キーストロークが十分確保されているため押しやすい。
本体内部はキーボード基板、ロジック基板、電源トランスの3つから構成さ れている。ロジック基板には、下記デバイスが搭載されており、いずれも日立 製品である。 HD3276P:電卓用ワンチップLSI 28Pin DIP HD3253P:16Pin DIP IC KH6264 :蛍光表示管ドライバIC(2個使用) 2SC458 :トランジスタ 蛍光表示管は長さ25mm、太さ8mmという超小型タイプのものが9本搭 載されている。いずれも7セグ表示を内蔵したタイプで、8桁+符号桁の、合 計9本構成となっている。蛍光表示管の足は、絶縁チューブを被せ、ロジック 基板上に1本1本ハンダ付けされている。本機が極めて小型にまとまっている のは、この超小型蛍光表示管を採用しているからであろう。FIPモジュール を用いれば、この程度の大きさにまとめることは難しくはないが、各桁ごとに 分離した蛍光表示管を9本使ってこの大きさにまとめるのは大変だったにちが いない。
ロジック基板はベークライト製であり、基板下側はカードエッジコネクタ接 点となっている。これは、アッセンブリが終わった基板をカードエッジコネク タに突き挿してテストするためと思われる。ロジック基板の上部、蛍光表示管 の裏側には、電源部品が搭載される。 ロジック基板とキーボード基板とは、20本近いリード線で接続されている。 この部分にはコネクタは用いられていない。 本機の製造年月は不明。しかし、上述したPanasonicのJE−850 が1972年に発売されていることから考えて、1972〜73年頃の製品と 思っても間違いは無いであろう。