■CITIZEN TYPE 811L シチズン株式会社が製造した8桁のデスクトップタイプ電卓。事務用の製品 らしく、機能的で嫌味の無いデザインとなっている。丸いキートップがレトロ な雰囲気を出している。表示には7セグタイプの青色蛍光表示管8本を使用。 この蛍光表示管は、各桁ごとに分離しており、いわゆるモジュール構成にはな っていない旧式のもの。電源はAC100Vのみ。電源ケーブルは分離式。 本体外寸は24×18×6cm。キーボードはクリック感は無いものの、十 分なストロークを有しており、押しやすい。小数点制御は、ノーマル、小数点 以下切捨て、小数点4桁目を四捨五入の3段階に設定が可能である。なお、マ イナス表示とオーバーフロー表示は、赤色のLEDで行う。
写真4:CITIZEN TYPE 811L 本体側面 |
写真5:CITIZEN TYPE 811L 本体背面 |
写真6:CITIZEN TYPE 811L 本体裏面 |
この電卓は、電源ONで、一番左側の桁に0が表示されるタイプである。筐 体は、グレーと白のツートンカラーで、極めて実用的なデザイン。おそらく、 どこかのメーカーのOEM製品と思われるが詳細は不明である。本体裏面の銘 版には、下記の表記がある。 CITIZEN 〒TIE ELECTRONIC CALCULATOR PAT.PEND. TYPE 811L VOLTS AC100V FREQ.50・60Hz WATTS 5W No.81775 CITIZEN BUSINESS MACHINES INC.
本体内部は、ロジック基板、キーボード基板、蛍光表示管基板、電源部の4 つの部分から構成されている。キーボード基板とロジック基板とは、コネクタ で接続される。蛍光表示管基板はロジック基板上にマウントされる形で実装さ れている。 メインとなる電卓専用LSIチップはOMRON捺印の2個のLSI。共に 日立製の電卓チップとなっている。28PinプラスチックDIPパッケージ で、型番は下記の通り。 HD3538 HD3539 ほぼ同時代に発売されたと思われるOMRONのTYPE800Kには、 3個の電卓専用LSI(32104〜32106)が使用されていたことを考 えると、集積度が上がっている。メインとなる2つのLSIを囲むように配置 された東芝製TM4352(4個使用)は、おそらくはドライバ用ICと思わ れる。16Pin プラスチックDIPパッケージで、4個使用される。
表示は8本のミニチュアタイプの蛍光表示管と、2個のLED。蛍光表示管 は各桁が分離されたもので、チューブの中に7セグで表示されるタイプ。2個 のLEDはオーバーフローとマイナス表示用となっている。 この電卓には製造年を示す表示は無いが、ロジック基板上に 72Z 001848 N との記載があったので、1972年頃の製品と思われる。OMRONの800 Kと比較しても、使用されるLSIや集積度がほぼ等しく、同時代の製品を思 わせる造りとなっている。各基板はベークライト製。ロジック基板は中央に2 個のLSIを縦に並べその周辺にドライバ用IC4個を配置した整然とした構 成を取っており、製造コストを重視した回路設計を伺わせる。しかし、ニキシ ー管表示部ついては、各桁ごとに分離されたチューブタイプのものを搭載して いるため、1本1本手作業で基板上にハンダ付けせざるを得ず、アセンブリに はかなりの手間がかかっている。