■Casio AS−B カシオ計算機は、電子ソロバンAS−Aを発売した翌年、改良型であるAS− Bを発売した。この改良型では、後継機種として当然のことではあるが部品点 数の削減と若干の機能強化、コスト削減が図られている。また、AS−Aの特 徴ともなっていた本体上面の木目調パネルを廃し、普通の金属ケースを採用し たため、外観はより一般的となっている。 写真1は、AS−Bの正面。独特の横長プロポーションはそのまま踏襲されて はいるものの、AS−Aと比較して厚さが2cm程度薄くなっている。型番は AS−Aではエンブレムが付いていたが、AS−Bでは印刷になっている等、 細かいコスト削減の跡が見受けられる。もちろん、カシオのロゴは旧ロゴで、 上面パネルには「ELECTRONIC CALUCLATOR MODEL AS−B」の表記がある。AS−Bでは、新たに「TOTAL」と「CLEA R」キーが増設された。横長のケースとキー配置は、その後登場する「答え一 発!カシオミニ」へと引き継がれることになる。 写真2は、AS−Aの背面。右側に位置する電源コネクタは、AS−Aと同様 端子が3本ある特殊仕様コネクタとなっているが、中央端子はFGであるため 左右両端の端子に100Vを印加すれば動作させることができる。
写真3は、AS−Bの裏面を撮影したもの。裏面の構造は、AS−Aとほとん ど変わらない。 写真4は、本体裏面に添付されている銘版のアップ。CASIOの旧ロゴマー クがついており、シリアル番号は106369、品質管理番号はQ3173と なっていた。なお、AS−Bの本体寸法は、幅33cm×奥行13cm×高さ 8cm程度である。
写真5は、AS−Bの12桁ニキシー管表示のアップ。発売後31年が経過し ているが、ニキシー管はすべて正常に点灯する。オレンジ色の独特の放電光が なんともレトロで暖かい。表示部分の下には、3桁ごとの区切りを示すための ガイドが付いており、任意の位置に置くことができる。 写真6は、AS−B本体内部。AS−Aと比較すれば部品点数の減り、かなり 整理された感じを受けるが、まだ電卓としては異様に部品が多く感じられる。 基板構成はAS−Aと同様、サンドイッチ状に2枚重ねて格納されており、こ こに写っている基板はその上部のみである。 写真7は、ニキシー管ドライバ部分のアップ。AS−Aと最も異なるところが この部分であり、専用ICを使用することで、多数のトランジスタで構成され ていたドライバ部分の部品点数を大幅に削減し、コスト低減と信頼性の向上を 図っている。筆者が所有するAS−Aは、おそらくニキシー管ドライバの不良 が原因で、ニキシー管が点灯しない。多くのトランジスタで構成されていたド ライバ回路は、当然ながら故障の可能性が高かったのであろう。 AS−Bでは、ニキシー管のドライバとして東芝製T4097が3個使用され ている。これは想像ではあるが、おそらくこの石1個で4桁のニキシー管を制 御していたものと思われる。また、ニキシー管のマウントにも改良の跡が見受 けられる。AS−Aではニキシー管を剥き出しで並べていたのだが、AS−B では専用のフレームで固定する構造となっている。
写真8は、AS−Bのロジック部分のアップ。この部分はASーAとほとんど 変わっていない。下記のICが搭載されていた。 NEC : μPD116C、μPD101C 日立 : HD3103P、HD3106 東芝 : TM4351P、T1191 写真9はAS−Bのキーボード部分のアップ。キーボードメカは、AS−Aと 同様リレースイッチの磁力操作で行っているため、信頼性と寿命は極めて高そ うだ。しかし同時にコスト的にもかなり高く付いたものと思われる。キーを押 し下げた時に発する「カチッ」っというメカニカルな音も、AS−Aと同じで ある。この音が精緻な感じを出しており、なかなか気に入っている。 写真10は、AS−Bのニキシー管表示。0〜9までの数字を表示させると、 各数字が出っ張ったり引っ込んだりしているのがわかる。1つのチューブの中 に「0」から「9」までの数字の形をした電極を重ねて封入してあるため、表 示する際に数値によって奥行きに変化が生じているのだ。このあたりもなかな か味わい深いものがある。