■■■ Casio AS−8D(1972年5月) ■■■

写真1:Casio AS-8D 本体外観


写真2:Casio AS-8D FL管表示部分
■Casio AS−8D                      
                                   
カシオ計算機のAS−8Dは、AS−8Aの後継機種として、1972年5月
に発売された。AS−8Dの最大の特徴はコードレスということであり、表示
デバイスにFL管を採用しているにもかかわらず、単二乾電池6本で駆動する
ことができた。もちろん、電池駆動のみでなく通常のACでも使用することが
できるという2電源方式のマシンであった。当時AC電源が無ければ使えない
電卓がほとんどだった中で、どこでも持ち運びできる2電源方式電卓の登場は
インパクトが大きかったものと思われる。                
確かに、単二乾電池6本という電源は、現在の水準から考えると電卓としては
非常に大袈裟なものである。しかし、省電力デバイスが皆無であった当時とし
ては、画期的な製品であった。AS−8Dの表示部分の左側には、バッテリー
残量を示す小さなメーターが搭載されているが、このメーターも実にレトロな
デザインだ。その昔、初期のテープレコーダーに付いていた入力レベルメータ
ーを彷彿とさせるのである。                      
写真3:Casio AS-8D 本体正面


写真4:Casio AS-8D 本体側面


写真5:Casio AS-8D 本体裏面


写真6:Casio AS-8D 電池室内部


写真7:Casio AS-8D 本体裏面の銘版
                                   
AS−8Dの本体外観は、AS−8Aと良く似ている。AS−8Aでは多用さ
れていたクロムメッキ部分が、AS−8Dでは削減されていること、及び電源
スイッチの位置が側面から上面に変更されていることが、デザイン上の主な変
更点となっている。カシオの卓上型計算機の特徴ともなっている、前面の傾斜
した部分のデザインは健在である。本体の大きさは、幅14.5cm×奥行き
22cm×高さ6.5cmと、細長いプロポーションとなっている。    

駆動用の単二乾電池6本は、本体裏面の電池室に格納する。写真5は、AS−
8D本体裏面の電池室カバーを開けたところ。また、写真6は電池室内部のア
ップである。この個体は液漏れ等の跡も無く、電池室は非常にクリーンな状態
であった。単二乾電池は3本×2段の形で格納する。このコンパクトなボディ
の中に、良くもまあ6本もの単二乾電池を格納したものだと、驚いてしまうほ
どだ。写真7は本体裏面の銘版のアップ。カシオのロゴはもちろん旧ロゴであ
る。なお、本機のシリアル番号は606833、Q番号はQ89437となっ
ていた。                               
写真8:Casio AS-8D の内部構造


写真9:Casio AS-8D ロジック基板のアップ #1
                                   
写真8は、AS−8Dの内部構造。写真9はロジック部分の基板のアップであ
る。集積化がかなり進んでおり、メインとなるLSIは中央に置かれた日立製
セラミックパッケージIC、HD3272のみである。メインLSIの周辺に
は、東芝製TM4352PやNEC製μPD13CといったIC、2SA49
5や2SC391が実装されている。基板はガラスエポキシが奢られている。
表示デバイスがFL管モジュールになったことから、表示ドライバICは見当
たらない。ヒューズは合計3本あり、うち2本は基板上にハンダで直付けされ
ている。2電源方式を採用していることから、電源部分の部品点数が他機種と
比較すると多い。                           
写真10:Casio AS-8D のFL管表示


写真11:Casio AS-8D 専用ケース
                                   
写真10はAS−8DのFL管表示のアップ。FL管モジュールにはISED
EN製FIP管が使用されている。表示部分は9桁が1モジュールとなったも
ので、実際の表示桁数は8桁。最上位桁は記号用である。表示文字は青色の蛍
光色で、フォントは小さくてかわいい。                 

なお、AS−8Dには持ち運びを考慮し純正のケースが付いている。アタッシ
ェケースのようなハードケースとは言えないものの、ちょっとした衝撃であれ
ば十分対応できるだけの強度を持ったものだ。              

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