■Casio AS−8A カシオ計算機のAS−8Aは、AS型番を称してはいるものの、外観はモデル 101Aや101Lと良く似た製品である。本マシンの正確な製造年月は不明 であるが、WEBページを調査すると、AS−8の発売が1971年9月とな っていた。AS−8AをAS−8のマイナーチェンジ版と考えれば、1971 年9月以降の製品であると考えられる。 AS−8Aの位置付けとしては、モデル101Aや101Lをコストダウンし たものと思われる。外観等に安っぽくなった印象は無いのだが、キーの材質が 101Aや101L等と比較すると若干軽くなったような感じがある。一方、 ケースにはクロムメッキ部分が増加し、より重厚な感じを出している。
写真3と写真4は、AS−8Aの正面と側面を写したもの。デザイン的には非 常に良くまとまっている。写真5は、本体裏面に添付された銘版のアップ。 掲載した製品のシリアル番号は615260、QC番号はQ104171とな っていた。本体の大きさは、幅14cm×奥行き21cm×高さ6cm。モデ ル101Aや101Lは、正方形に近いプロポーションであったが、AS−8 Aでは表示桁数が2桁少ないこともあり、より細長い形となっている。
写真6は、AS−8Aの内部構造である。一見して使用されている部品点数が 少ないことがおわかりであろう。実際にAS−8Aとモデル101Aの内部構 造を比較してみると、部品削減の効果が良くわかる。両製品共に1971年に 発売されたものであるが、101Aでは、ロジックを構成するICが4個以上 使われていた。一方、AS−8Aでは、メインのLSIは日立製HD3272 のわずか1個のみとなっており、見るからにスカスカな構成だ。 AS−8Aに使用されている主な部品を下記に示す。 日立製 : HD3272(28Pinセラミックパッケージ) HD3113P(16PinプラスチックDIP) FD1009(FL管ドライブ用モジュールIC) 主なった部品は、実にこれだけである。基板はガラスエポキシ製を採用してお り、表面にはKYOEIのシルク印刷があった。
AS−8Aの表示部分について見てみよう。101Aでは古典的なニキシー管 を採用していたのだが、AS−8Aではブルーの蛍光表示管を使用している。 しかし、AS−8Aで使用しているFL管は極めて初期の製品らしく、数桁が まとまって1本のチューブに封入されているタイプでは無く、古典的なニキシ ー管のように1桁1本の構成になったものだ。各表示管の内部を見ると、0〜 9までの数字形をした電極は見当たらず、7セグメントのFL管が内蔵されて いるのがわかる。 AS−8AのFL管表示は、数字の「0」が下半分に表示される等、表示に時 代を感じさせる特徴的な部分もある。また、フォントも一般的な7セグタイプ の表示と微妙に異なるところも見受けら、これらは本電卓の特徴ともなってい る。なお、表示桁数はコスト削減の意味もあり、101Aや101Lの10桁 から8桁へと削減されている。FL管は、記号部分も含めて9本が基板上に整 然と実装されている。FL管のリード線は、ソケット等を使わず直接基板上に 半田付けされており、その実装方法はまるで「イカ」のようだ。 キーボードは、初期のカシオ電卓と同じく磁石によるリレー方式を採用してい る。カシオ社の電卓はその後さらに急激な進化を遂げ、翌1972年5月には 早くもコードレスで駆動する真のポータブル電卓、AS−8Dが発売されてい る。